IMG_0733 野田政権は国会会期末を目前にして、原発輸出のための原子力協定の国会での承認を強行しようと動きだした。しかもヨルダン、ベトナム、韓国、ロシアとの協定を一挙同時に短時間の審議で承認を求めているのだ。12月2日に衆院外務委員会で審議・採決が行われ、民主、自民両党の賛成で可決された。公明党は、11月29日に四カ国との原子力協定に賛成の意向を表明していたが、「政府の原子力政策が定まらないので協定は時期尚早」との理由で反対にまわった。当初はこの日の衆院本会議で採決が行われ、参院に回されるとしていたが、結局本会議採決は12月6日に先送りされた。

 12月1日、国際環境NGO FoE Japan(エフ・オー・イー・ジャパン)、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、メコン・ウォッチが呼びかけ、福島原発事故緊急会議などの賛同で「緊急声明 問題だらけのベトナム/ヨルダンへの原発輸出~拙速な原子力協定批准に抗議」が出され、午後六時から首相官邸前で抗議行動が行われた。緊急の呼びかけにもかかわらず行動には90人が参加した。
 
 ヨルダンとの原子力協定については、延長された八月の通常国会で、参考人として招致されたJACSESの田辺有輝さんが、冷却水の供給、事故になった場合、建設予定地周辺の100万人の住民の事故時避難が困難であること、テロのリスクも高いことなどを説得的に語ったことにより、採決が見送りになっていた。こうした問題に何の解決もないまま、原発商戦に乗り遅れるなという理由で、福島原発事故を引き起こした日本が原発輸出を行うことは「事故・被害の輸出」に他ならない。

 杉原浩司さん(福島原発事故緊急会議、みどりの未来)の司会で行われた首相官邸前行動では、まず田辺有輝さんが「ヨルダンで作られるという原発では、冷却水の供給が下水処理場からしかなされない。しかもヨルダンはシリア・アフリカ断層の上に立ち地震国だ。福島事故の教訓を明らかにできないまま原発輸出を進めることに抗議する」と訴えた。

 社民党の服部良一衆院議員が国会状況を報告した後、メコン・ウォッチの木口由香さんがベトナムへの原発輸出について「ベトナムの人々に真実が伝えられていない。事故が起きたらカンボジア、ラオス、タイなどにも深刻な被害を及ぼすことになる。こうした原発建設に日本の公的資金が使われることは間違いだ」と語った。

 続いてこの日から再び経産省前での座り込みを始めた女性たちから椎名千恵子さん、佐藤幸子さんが「命を生み、育てる女性として福島の悲しみ、苦しみを海外に押し付けることはできない」と発言した。さらにFoE Japanの吉田明子
さん、ミーダーン(パレスチナ・対話の広場)の田浪亜央江さん、グリーン・アクションのアイリーン・美緒子・スミスさん、玄海原発プルサーマル裁判の会の石丸初美さんらが発言。

 この冬一番の冷え込みの中で、原発輸出に邁進する政府や大資本への怒りの声が渦巻いた。

(K)