jpg 9月22日、千葉地裁民事第5部(仲戸川隆起裁判長)は、柳川秀夫さん持分裁判で「空港会社の単独所有を認める」不当判決を出した。全面的価格賠償方式(地権者との合意もなく一方的に金銭補償することをもって土地強奪ができる悪法)を適用し、空港会社が柳川さんに横堀土地持分(約116㎡、15分の3)に720万6507円、木の根の土地持分(1.5㎡、780分の1)に12万9246円を一方的に支払うことによって「所有権の移転」と称する土地強奪を認めた。

 裁判後の集約で清井礼司弁護士は、ただちに控訴手続きに入ることを表明。

 柳川秀夫さんは、「空港会社の約束破りを追認した判決を許さない」と糾弾。

 加瀬勉さんは、「一坪共有地裁判は、階級裁判、支配裁判、政治裁判だ。不当判決を跳ね返し、勝利をかちとろう」と訴えた。

 9月28日、千葉地裁民事第1部(三代川三千代裁判長)は、横堀共有地(鉄塔前のくぼ地)裁判で空港会社の主張を認め、全面的価格賠償方式を適用し「空港会社の単独所有を認める」不当判決を出した。空港会社が被告・共有者47人(持ち分1080分の1)に30727円の賠償額を一方的な支払いで所有権移転を認めた。

 裁判後、清井弁護士は、「ただちに控訴していく。今後の控訴審方針として空港会社の約束破り、土地強奪の不当性を争点にして闘っていく。現地の闘いと裁判闘争を一体で取り組んでいこう」と呼びかけた。

 山崎宏さんは、「空港会社は、これまでの空港建設のやり方を謝罪し、提訴しないとも言っていた。しかしそんなことは棚に上げ、提訴した。実質的な『強制収用』だ。控訴審闘争を闘っていこう」と表明した。



解説



 千葉地裁は、現闘本部共有地裁判(9月16日)、柳川秀夫さん持分裁判、横堀共有地裁判で空港会社の「本件土地についても原告が大部分の持ち分を所有している。土地は空港建設に必要不可欠の土地」という土地強奪の主張を追認し、全面的価格賠償方式を適用し所有権移転を認めた。しかし柳川さんの横堀共有地持分は15分の3の所有であり、空港会社が「大部分の持ち分を所有している」という評価は当てはまらない。

 だから千葉地裁は、「裁判所による共有物の分割(民法二五八条二項)について、法は、裁判所の適切な裁量権の行使により、共有者間の公平を保ちつつ」などと振る舞いながら「共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情が存するときは、共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし、これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法、すなわち全面的価格賠償の方法による分割をすることも許されるべきである」などと居直るしかなかった。

 このように柳川持分裁判の判決主張は、空港会社と一体となって空港建設推進派としての腐敗・堕落に満ちたものである。その一端を「特段の事情が存するか否かを考察」しているかのようなポーズをとらざるをえなかった。

 控訴審闘争を闘うにあたって地裁のとんでもない柳川持分裁判判決の暴論を取り上げておく。

 判決の「土地の利用状況及び分割された場合の経済的価値」では、柳川持分の土地(横堀)が「現在供用中の空港誘導路に囲まれており、空港の供用区域の一部として立ち入りを制限されている」などと述べている。しかし横堀十字路を一方的に封鎖し、誘導路建設を柳川さんとの合意もないまま推し進めた経緯のうえでの「立ち入り制限」でしかない。通行禁止ではなく「制限」と言うように土地所有者として柳川さんは、土地管理のために立ち入ることが可能なのである。

 柳川さんと弁護団は、横堀の共有地について「反対同盟及び空港反対運動のシンボルとして、重要な精神的価値を有する」と強調し、「本件各土地に近接した土地上には、反対同盟の拠点である現地闘争本部や横堀鉄塔、木の根ペンション等の構築物や建物が存在し、現に使用されており、これらの構築物や建物が撤去されない限り、原告が予定している横風滑走路の完成・運用は不可能であるから、現時点において原告が本件土地の被告持分を取得することの意味はほとんどない」と反論した。

 だが地裁は、「被告にとって精神的価値を考慮しても、なお、本件各土地を原告が単独で取得し、被告が賠償金を取得する方法で分割することが相当である」という結論ありきで判決を組み立てた。ことごとく被告の主張を排除して「被告が本件各土地を現物分割により共有持分割合に従って取得したとしても、その経済的用法に従い、農地等として利用することは極めて困難であると予想される」とまで断定するしかなかった。土地利用等について具体的に検証せず、具体的な根拠も提示しないで土地利用について「困難であると予想される」といいかげんに言うことしかできなかったのだ。



控訴審勝利にむけて



 判決の「原告の本件各請求が信義則違反に当たるか」についても、とんでもない歴史のわい曲、すり替えを巧妙に行っている。

 被告と弁護団は、提訴がシンポ・円卓会議の中で運輸省と公団が、農民の意志を無視し国家権力の暴力を使って推し進めた空港建設のやり方をしないという反対同盟との約束違反であり、裁判を通した「強制収用」だと主張してきた。

 ところが地裁は、「全面的価格賠償の方法による共有物分割は、仮にその請求が認められれば、一方共有者が地方共有者の意思に反して当該土地を単独所有することができるという意味において、強制的な契機を有していることは否定できない」などと認めた。この時点で「信義則違反」は成立しているのだ。

 しかし地裁は、「私法的な共有物分割請求によりこれを単独所有とすることが民法上も肯認されるようになった土地についても、共有物分割請求をすることができないとの合意が形成されたとまで認めることは困難というほかない」とシンポ・円卓会議を通した「約束」の事実を投げ捨て、「民法上も肯認されるようになった土地」などと巧妙にデッチアゲ、問題点をすりかえ、完璧に矛盾した主張を行っている。

 結論の強引な飛躍は、「シンポジウムや円卓会議が反省の対象としてきた強制的な土地収用手続きによる土地取得と同視することはできない」と述べ、「原告は、被告との間の本件土地の共有持分の取得に関し、話し合いにより合意により到達することが不可能であると判断して本件各訴訟を提起したものと認められ、本件各請求が信義則に反して許されないということはできない」と断言し、ミエミエの空港会社防衛だ。

 さらに判決は「話し合いにより合意により到達することが不可能」と規定しているように一坪共有地裁判が裁判を通した土地強奪であることを自ら認めている。つまり、信義則違反は成立しているのだ。

 しかも地裁は、公団の浅子直樹用地業務推進室長(当時)が北原派反対同盟に属する共有分割請求訴訟での記者会見(2002年12月24日)で「他の共有地については引き続き任意交渉し、訴訟で取得を求めるのは今回が最後である」と述べている事実を無視した。

 これだけではない。空港会社の東峰神社立木を無断伐採したことを東峰地区住民に謝罪し(2005年5月9日)、円卓会議での約束を再確認し、「平行滑走路の問題については、あくまで皆様との話し合いによって解決してまいりたいと思っています」と改めて約束した事実も無視だ。

 地裁がこれら事実を無視せざるをえなかったことは、逆に地裁判決の脆弱性の現われでもある。控訴審闘争では、あらためて共有持分権者、信義則違反、全面的価格賠償の不当性を争点に反論していく。一坪共有地裁判第二次カンパに協力しよう(一口 二〇〇〇円 振替口座:00290―1―100426)。

(Y)