ななお 9月16日、東京高裁第二民事部(大橋寛明裁判長)は、七生養護学校「こころとからだの学習」裁判で都教委の処分と都議3人(古賀俊昭、田代博嗣、土屋敬之)の性教育への介入を不当として計210万円の賠償命令を出した一審判決(09年3月12日)を支持する判決を出した。ただし「その余の行為」である都議の視察や教材没収は「調査のため必要性があった」から「違法とはいえない」とし教材の返却を認めなかった。また、産経新聞が「過激性教育」「まるでアダルトショップ」などと事実を歪曲する記事を掲載したことに対する損害賠償、謝罪広告も退けた。

 原告と弁護団は、いくつか退けられた箇所があるが判決を「高く評価する」と述べ、都教委、都議、産経新聞を継続して批判していくことを呼びかけている。この勝利判決は、石原都知事、都教委への大きな打撃を与え、同時にジェンダーフリーへの攻撃と家父長制強化、「日の丸・君が代」強制、天皇制と侵略戦争賛美の「新しい歴史をつくる会」教科書採用圧力、治安弾圧などを煽動してきた土屋(無所属。「教育再生地方議員百人と市民の会」東京支部理事。板橋高校卒業式でっち上げ事件首謀者)古賀(自民党。日本の家庭を守る議員連盟会長、日本会議地方議員副会長)、田代(自民党)、に対する再打撃を与えた。



反動3人都議・都教委・産経新聞を許さない



 事件は、2003年7月、古賀、田代、土屋の三都議、都教育委員会、産経新聞社が一体となって東京都立七生養護学校(現・都立七生特別支援学校)の性教育を「過激な性教育が行われている」などと決め付け不当な介入・支配を強行し、さらに授業差止め、教材没収、校長・教員に対する不当処分を強行するまで拡大していた。教員と保護者は、不当弾圧への抗議として、七生養護学校「こころとからだの学習」裁判として位置づけ社会的に告発していく闘いとして展開してきた。裁判闘争に入り、一審で「勝利」判決をかちとっていた。

 七生校では知的障がいのある子どもたちに向けた「性教育」を保護者も含めた論議、研究、そして子どもたちと真正面から向き合いながら粘り強く授業を積み上げていた。その成果としてさまざまな性教育教材を生みだしてきたのである。また、子どもたちが理解しやすいようにと体の呼び名を歌にして学習を深めていた。

 ところが3人の都議は、教諭たちが「障がいがある子どもは具体的にイメージできる教材でなければ理解できない」との訴えをしていたにもかかわらず、高圧的に「こういう教材を使うのは、おかしいとは思わないのか」「感覚がまひしてる」などと人格否定と罵倒を繰り返したあげく、百点以上の教材を「没収」と称して強奪してしまった。

 一審では都議に対して「政治家である被告都議らがその政治的な主義、信条に基づき、本件養護学校の性教育に介入・干渉するものであり、本件養護学校における教育の自主性を阻害しこれを歪める危険のある行為として、旧教基法10条1項の『不当な支配』に当たる」と認定していた。

 高裁判決でも「都議らの侮辱を都教委の職員らが制止するなどしなかったことは、教育に対する『不当な支配』から教員を保護するよう配慮すべき義務に違反したもので違法であり、東京都は原告に損害賠償義務を負う」と認めた。

 一審では都教委の学習指導要領違反について判断を示さなかったが高裁は、「からだうた」の歌詞を取り上げながら「一言一句が拘束力すなわち法規としての効力を有するとすることは困難」だから「教育を実践する者の広い裁量」によって実践されるべきだと強調した。

 つまり一審判決の「(性教育)教授法に関する歴史も浅く、創意工夫を重ねながら、実践実例が蓄積されて教授法が発展していくという面があり、教育内容の適否を短期間のうちに判定するのは、容易ではない。しかも、いったん、性教育の内容が不適切であるとして教員に対する制裁的扱いがされれば、それらの教員を萎縮させ、創意工夫による教育実践の開発がされなくなり、性教育の発展が阻害されることにもなりかねない。性教育の内容の不適切を理由に教員に制裁的取扱をする場合には、このような点についての配慮が求められる」と展開した性教育姿勢を支持し、再び都教委を批判したのである。

 さらに判決は、都教委に対して「教員の創意工夫の余地を奪うような細目にまでわたる指示命令等を行うことまでは許されない」と批判し、七生養護の実践は学習指導要領違反ではないと断定した。そもそも都教委は都議らによる七生問題化以前は、七生性教育の「授業を評価していた」(一審判決)のであり、共有化するための研究会さえも行っていたほどだ。ところが新自由主義教育破壊を加速しつつあった都教委にとって3人の都議の恫喝に便乗しながら都教委に逆らう教員の処分へと突進していったというのが実態だろう。

 だから判決は、乱暴、ズサンな都教委の処分強行に対して「一種の制裁的行為である」と断罪し、「教育内容を理由として制裁的扱いをするには、事前の研修や助言・指導を行うなど慎重な手続きを行うべきもの」だと結論づけた。高裁判決は、「本件厳重注意を受けた一三名の原告らのうち、本件性教育を行ったことを理由としてなされた10名に対する厳重注意は違法であり、損害賠償義務を負う」と言い渡したのであった。



石原都知事は謝罪せよ



 3人の都議らは、判決に対して「この程度の賠償金で都の性教育が正常化されたなら安いもの」だなどと居直り続け、まったく反省していない。都教委にいたっては、東京都発行の「性教育の手引き書」で「七尾養護学校の実践」を批判し続けたままだ。ただちに取り消し、真実を伝えよ!

 このような反動勢力と連動して事件発生直後から水面下で行動隊として暗躍していたのが世界基督教統一神霊協会だ。機関紙「世界日報」で七生養護学校「こころとからだの学習」裁判への誹謗と中傷をくり返してきた。

 今回の高裁判決に対しても「社説」(9・25)で「『不当な支配』の支持は疑問」というタイトルで七生性教育を「破廉恥な教育」と罵り、「3都議の言動を、旧教育基本法10条の『不当な支配』に相当すると判断するなど、首をかしげざるを得ない内容が少なくなかった」「学習指導要領から大きく逸脱していることに関し、指導要領は一字一句その通りに適用するものではないとの判断を加えた。行き過ぎた性教育を許容しかねず、大いに疑問を覚える」と都議、都教委を防衛するほどだ。この間、統一教会が天皇制と侵略戦争を賛美し、原発推進の育鵬社、「つくる会」教科書を採択するためのキャンペーンを各地域で繰り広げてきたが、今後も反動勢力の先兵として立ち振る舞っていく危険性がある。監視を強化し、統一教会の敵対を許してはならない。

 事件直後、石原都知事は「(七生性教育を)グロテスク。それを障がい者の人たちに教えて何の性教育になるのか。独善だと思う」などと差別主義に満ちた発言を行っている。発言を撤回し、謝罪せよ!被告らは、高裁判決を真摯に受け止め、立ち去れ!

(Y)