315supression新たな秘密保全法制定を許すな

「知る権利」剥奪に抗議しよう

人権侵害・情報統制にNO!
治安弾圧体制を跳ねかえせ



有識者会議がまとめた報告



 「秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議」は、8月8日、外交・安全保障や治安などの重要情報を「特別秘密」とし、漏洩を罰する「秘密保全」法の制定を提言する報告書をまとめた。

 2010年11月の横浜APEC「戒厳態勢」下において釣魚諸島付近での海上保安庁巡視船による中国漁船拿捕事件ビデオが保安官によって動画投稿サイト「ユーチューブ」流出(9月)した。また公安政治警察外事三課の人権侵害に満ちた対テロ捜査デッチアゲ書類のインターネット流出(10月)が発生し、日本統治機構の脆弱性が世界的に露呈してしまった。大慌ての菅政権は、秘密保全法制の検討、国家公務員の守秘義務の罰則強化によって自らの責任を棚上げ延命することを策動した。これら流出事件を便乗利用し法制化作業を加速させるために有識者会議(座長・県公一郎早稲田大政治経済学術院教授)を設置したのであった(11年1月)。

 これまでの政府は、統治能力強化のために「国家機密法」制定を策動してきたが、民主党政権下においても「政府における情報保全に関する検討委員会」(2010年12月)を立ち上げていた。

 そもそも検討委員会は、新防衛計画大綱の中で「わが国の安全保障の基本方針」と「わが国自身の努力」において「情報収集能力・分析能力の向上」「各府省間の緊密な情報共有と政府横断的な情報保全体制を強化する」ことを新たに打ち出し、秘密保護法の制定を明記し、その実現のために設置したのであった。統治機関を担う内閣官房長官、内閣官房、警察庁、公安調査庁、防衛省、外務省、海上保安庁、法務省の官僚によって構成されている。当然、この動きには米軍情報防衛のための「秘密軍事情報保護協定」(GSOMIA)(2007年)の徹底を求める米国の圧力があったことは言うまでもない。報告書では日米軍事一体化の強化のために自衛隊法なども取り込み、「一つの法律に統一させることが妥当」だと強調しているところに現れている。



恣意的な秘密範囲の拡大



 有識者会議は、国の安全、外交、公共の安全・秩序の維持の三分野に限定し、秘匿性が高い情報を「特別秘密」と定義した。「特別秘密」対象について「別表」などで具体的に列挙しているが、結局のところ統治機関の恣意的判断によってその範囲は拡大していくことは必至だ。

 現行の情報漏えいに対する罰則は、国家公務員法では「職務上知り得た秘密」を漏らした公務員を「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」、自衛隊法では「5年以下の懲役」になっているが、報告書では特別秘密を取り扱ったり、知り得たりした人が故意に情報を漏えいした場合、懲役5年、あるいは10年以下の懲役刑などを設けることを提言している。共謀や教唆も処罰対象にすべきだとした。さらに特別秘密を受け取った人は処罰しないようと言いつつ、不正アクセスや管理場所への侵入などによる取得を処罰対象に含めた。つまり、内部告発の絶対阻止のために重罰主義の徹底で対応する方針だ。

 有識者会議は、とんでもない人権侵害も提言している。各行政機関の長が実施権者となって特別秘密を取り扱う職員を事前に「適性評価制度」でチェックせよと提言している。秘密情報を取り扱う適性があるかどうかを判断するために住所や本籍などの人定事項、スパイやテロへの関与、犯罪歴、薬物・アルコール・精神問題での通院歴など事前調査し、判定しておけというのである。また、「配偶者のように対象者の身近にあって対象者の行動に影響を与え得る者についても」同様の事前調査をやれと言う。このように監視・調査対象を次々と拡大していことの証明だ。プライバシーの侵害などについて全く無視だ。

 アンバランスだが、「内閣総理大臣及び国務大臣にあっては、極めて高度な政治的性格を有する職であることから、適性評価の対象外とする」と「意味不明」な根拠で、こんな「配慮」を行うのが有識者会議の人権感覚だ。

 報告書は、法制化によって取材の自由を「不当に制限するものではない」と断言し、「刑罰法令に触れる」取材は処罰対象だと強調する。要するに政府の恣意的な秘密範囲を拡大し、取材制限するということだ。明らかに民衆の知る権利の規制強化であり、情報統制へとつながる。民衆の知る権利の規制強化を許してはならない。



公安警察の活動正当化する論調



 菅政権時における「秘密保全」法制定の動きは、野田政権においても引き継がれる。野田首相の日米安保を軸にした領土主義の強調は、南西諸島への軍事力増強、日米共同実戦態勢の構築であり、グローバル派兵国家建設として「有事対応・戦争指導」体制を確立していくことなのだ。同時に、この体制作りは、公安政治警察にとって「秘密保全」法を「武器」に民衆監視をも含めた対テロ治安弾圧態勢作りの絶好の「チャンス」だと位置づけている。

 警察庁は、この8月に「警察白書」を発表 しているが、さすがに公安政治警察外事三課対テロ捜査書類流出事件をさけることができず、「本件データには、警察職員が取り扱った蓋然性が高い情報が含まれていると認められ、このようなデータがインターネット上に掲出されたことにより、不安や迷惑を感じる方々が現にいるという事態に立ち至ったことは極めて遺憾である。警察では、引き続き、個人情報が掲出された者に対する保護その他の警察措置や本件に対する捜査、調査に組織の総力を挙げて取り組み、事実を究明していく」などと被害者に対して「平謝り」して、捜査が完全にデッドロック状態であることを認めざるをえなかった。

 ところがこの事件を逆手にとり、「情報保全の徹底・強化のための方策を推進し、情報保全に万全を期す」(警察白書)と決意表明し、「秘密保全法」制定と連動してその担い手と「自負」する公安政治警察の宣伝作戦が始まっている。公安を取り扱った週刊誌記事、公安外事課を主人公とするスパイ捕り物合戦本などの賛美キャンペーンを先取り的に展開している。

 『週刊文春』(9月15日号)は「公安警察は何を狙っているのか」と題して政財界・マスコミ等を総合的に監視する公安IS(インテグレイテッド・サポート)出身の濱嘉之を広告塔として登場させている。内閣らの「身体検査」をやっていると自慢し、「反原発を主張する人の思想の変遷やバックにどんな団体がついているのか調べる」と述べ、遠まわしで反原発運動に対する恫喝をしている。そのうえで「政権がどうであれ、常に『国家と国益』を考えているんです。公安警察は国家にとって不可欠なものなのです」などと持ち上げた。公安テロ情報流出事件を無視し、公安幹部らのもみ消し工作もふれることができないフザケた内容となっている。

 産経新聞記者の大島真生の『公安は誰をマークしているか』(新潮新書)では、真新しい公安警察の「活躍」のたぐいはなく、古くさい事例をかき集めてまとめたものにすぎない。

 大島は本書の「おわり」で、ようやく公安テロ情報流失事件に触れ「一国民として考えると、もしテロが計画されようとしているのならば、こうした日頃の内偵捜査は大切だと思う」「もちろん公安警察が情報を得ようとするのは、テロやスパイ活動を防ぐためであり、それは一般国民の利益にもつながる部分はある」などと評価する。

 他方で「『人権』という視点からみると、イスラム教徒というだけで疑いの目で見るのは、いかがなものかとも思う」「国民が関心を持って公安警察の『やり過ぎ』『行き過ぎ』をチェックすることだ」と巧妙にバランスをとるポーズをとりながら公安の人権侵害、民衆弾圧の実態を検証する文言はひとかけらもない。結局のところスパイ天国日本を許さないために公安警察を防衛していくためのアピールでしかないのだ。

 「秘密保全法」制定キャンペーンの一環である公安政治警察の「暗躍」を許してはならない。「秘密保全法」制定の動きを厳しく監視し続け、反対していこう。治安弾圧体制の強化を跳ね返していこう。



(Y)