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 抗議の市民であふれる大連市庁舎前広場(8/14)

中国・東北地方の沿海都市、遼寧省大連市で、危険な化学工場の操業の即時中止を求めた市民の大規模な抗議行動が勝利した。

大連市庁舎前広場に集まった数万人の市民は、さまざまな工夫を凝らした抗議グッズで吸い込むと人体に影響の出るパラキシレン(PX)工場の危険性を訴えた。最終的に大連市のトップにあたる大連市共産党委員会の唐軍書記が、警察車両の上から集まった市民に、工場の即時停止と移転を約束した。


だが、工場移転の具体的な時期については明らかにされておらず、夜間まで広場で抗議行動を続けた市民に対して大量の武装警察が暴力的な排除行動に出た。経済発展著しい中国ではこの間各地で公害や環境破壊をめぐる市民や農民、先住民族らの闘いが展開されている。世界最大の二酸化炭素排出国となった中国。環境と労働者を破壊しながら製造されている商品は、日本をはじめ世界中に輸出されている。国境を貫く階級的連帯を!

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 大連市庁舎前広場へ向かう市民のデモ隊列(8/14)

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事件の経過はこうだ。環境都市として有名な遼寧省大連市の郊外にある大連福佳大化石油化工パラキシレン(PX)工場から、吸い込むと人体に影響の出るPXが、接近していた台風の影響で漏出した疑いが強まったという情報がインターネット上に書き込まれた。


8月8日、接近した台風が、PXタンクのある港の防波堤を破壊し、その影響でPXタンクも倒壊した。事故を知って駆け付けた中央テレビの記者たちは、復旧作業中の作業員に取材を妨害されたうえ、殴られて追い払われた。その後、警察の調べで、この作業員はPX工場のトップから「記者を入れたらただでは済まさないぞ」と脅かされていたこと明らかにした。


これら一連の経過における頑なな取材拒否に疑問を感じたメディアが事件を報道した。その後、インターネットなどでも市民らが、異臭が工場周辺に漂い、工場の労働者たちが避難をしているなどの情報を流し始めた。また工場敷地内で薬品を収めた容器設備が転倒しているのを目撃した市民等も、雨が降っているにもかかわらず異臭がどんどん強くなる、などの情報を提供し、市民に外出しないよう呼び掛けた。またその他の地区の住民からも、異臭が広範囲に漂っていることなどの情報が寄せられた。


その後、インターネットで、8月14日の日曜日のPX工場の操業停止と移転を求める抗議行動が呼びかけられ、それに呼応して大連市庁舎前に集まった市民は1万人以上に上った。

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 大連市庁舎前広場に集まる市民たち(8/14)

このPX工場は、中国最大級のPXプロジェクトであり、前任の大連のトップが政治的に誘致したものでもあることから、市民の間では、一部の指導者の政治的・経済的利益のために安全がないがしろにされるのではないかという不安が高まった。また当初放映する予定であったこの事件に関する取材報道も急遽放送が中止されたり、このPX工場の新規プロジェクトが環境アセスなど必要な手続きをする前から関連当局から許認可を得ていたなどの報道がインターネットメディアで流れたりしたことも、市民の不安を高めたことから、8月14日の大規模な抗議行動に発展した。


今回の抗議行動では、(1)PX工場プロジェクトの即時停止、(2)今回の事件に関する報道の自由、(3)工場撤退期限の明確化、(4)責任者の処罰という4つを勝ち取ることが目標であった。大連市のトップの唐軍・大連市共産党委員会書記は、自ら警察車輌のうえに乗り、プロジェクトの即時中止を集まった数万人の市民に約束した。最初の二つの要求は勝ち取られたが、市民らの「撤去の時期は?」の声には応えなかった。それどころか、「解散しなければ酷い目に遭うぞ」という恫喝まで行い、夜まで広場に残った市民らは十数台のトラックに満載されて動員された武装警察が暴力で排除した。

その日の夜に書き込まれたインターネットの書き込みはこう記している。

「何とか無事に家に帰って来た。一帯どうなっているのか状況はわからないが、四発の催涙弾のようなものが打ち込まれたのをこの目で見た。前方から『警察が殴り始めた、血が流れている』といって人が逃げてきた。何人かが捕まり、たくさんの人がその場で警察に包囲された。ニュースなどでよく見る被災地支援に行くような幌付きのトラックがそこに向かって……。みんな大連以外のところから駆けつけた特殊警察といっていた。」


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 暴力的排除に乗り出す武装警察(8/14夜)

中国では、近年、労働問題、環境問題、農地問題、住宅問題、人権問題、民族問題など、さまざまな課題で大衆的抗議行動が増加傾向にある。2010年は18万件もの集団的事件(騒乱)が発生している。2008年は12万7千件、2006年には9万件だった。それに対応するかのように、中国における治安維持関連の政府予算も増加の一方をたどっている。中国政府公表の予算によると、2011年の治安維持関連支出は6244億元(約7兆7400億円)。全体の6.23%を占め、前年比13.8%。一方、国防費は6011億元(約7兆4600億円)を抜いた。街頭鎮圧部隊とともに、莫大な予算をインターネット監視取締システムに注ぎ、民衆の声を圧殺する「警察国家」の姿が垣間見える。

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 大連市内を警備する武装警察部隊(8/14)

PX工場に関しては、2007年6月に福建省のアモイ市でも大規模な市民の抗議行動によって、台湾資本のPX工場を撤退させた経験がある。今回の大連での闘争はそれを模倣したとも言われている。抵抗は途切れることなく、経験を蓄積しながら継続している。注目を!


(H)