虹とモンスーン

アジア連帯講座のBLOG

【第四インターナショナル・ヨーロッパの声明】新型コロナウイルスのパンデミックに直面して:われわれの生命は奴らの利益よりも価値がある

20200318at29S_o【黄色いベストもストライカーも去り、警官隊に制圧されたパリの街頭】


ヨーロッパにおいて、とりわけ世界で二番目に巨大な経済ブロックであるヨーロ
ッパ連合(EU)において、過去二〇年間以上にわたって続けられてきた公共政策が、新型コロナウイルスのようなパンデミックに対応できたはずの公的医療体系を破壊してきたことが日々証明されている。


三月には、この地域はパンデミッ
クの中心地となった。いまではパンデミックの中心地はアメリカ合衆国へと移っているが、明日にはアフリカやラテンアメリカ、アジアへと移り、貧弱な医療体系しかない国々で何百万人もの人々をますます危険にさらすだろう。



この二〇年間、緊縮予算の原則や自由主義的資本主義の論理に合致させるために、つまりGDPに占める社会保障費の割合を減らすために、病院、医師や看護師、何万もの集中治療室や蘇生病室が削減されてきた。オーストリア、ベルギー、ドイツ、ルクセンブルグは別として、他の諸国では一〇万人につき四〜一一床の集中治療室しかない。ポルトガルやギリシャではもっと少ない。この二カ国では、スペイン、フランス、イギリスと同じように、過去一〇年間に病院の病床を廃止する計画が継続されてきた。こうした政策は近年つねに医療労働者によって非難されていたが、パンデミックに対応するためのリソースの破局的な不足を招いた。


イタリアとフランスでは、すでに集中治療ユニットの最大能力に達したか、あるいはそれを超えてしまっている。他の諸国も今後数週間以内に、同じ状況に直面するだろう。どこでも、政府は、防護用品(マスク、ジェルなど)や必要不可欠な設備(病床や人工呼吸器)の必要な供給、病院スタッフの緊急補充といったこの不足に対処するための対策を講じるのに時間をかけすぎている。ドイツにおいてさえ、何十万もの病床が過去二〇年間で削減され、患者に対する看護師の割合を見れば、少なくとも一一万人の看護師が不足している。


同時に、ヨーロッパの政府や雇用主がとらわれている最大の強迫観念は、不景気に対する不安であり、最大限の生産を維持することだった。人々を守るための緊急措置が課せられたとき、いくつかの政府は矛盾した命令を続けたし、今も続けている。いくつかの国においては、ウイルスの拡散を遅らせ、減少させるために全国民の隔離を決定せざるを得なかったが、それでもなお、自動車生産や建設業、軍事産業、造船所といった部門においてさえ、労働者の健康を危険にさらして最大限の経済活動を維持しようと求め続けた。さらに、必要不可欠な部門(食料生産、配送、道路、公共交通、医療・在宅介護スタッフ)の労働者は十分な個人的防護設備を持っておらず、EUの安全(健康)法のガイドラインさえ幅広く無視されている。


「不要不急な活動」を禁止する法令を出した国もあるが、つねに最大限の経済生産を維持しようという欲望を捨てたわけではない。フランスとイタリアは特定の労働者の解雇を禁止したが、こうした措置は対象範囲が限られている。スペインでは、すでに過去数週間で一五〇万人の解雇者(そのうち五〇万人はカタロニアにおいて)が出ているにもかかわらず、企業閉鎖によって影響を受けた労働者は、企業再開後に、働けなかった時間分を回復しなければならないだろう。


イタリア
では、雇用主の組織である「コンフィンダストリア」は、ほとんどの経済部門でいつも通りのビジネスを続けるよう強い圧力をかけたが、労働者と戦闘的労働組合が政府に操業続行を許可された部門の数を部分的に減らさせた。しかし、今のところ、もっとも打撃を被っている地域においてさえ、地方警察当局へのたった一つの布告によって、多くの工場が活動続行を認められている。労働者の抵抗も続けられている。フランスで生産が停止したのは、しばしば部品不足や当面の販路不足によるものである。プジョー・シトロエンやルノーはいまでも活動を最大限再開しようとしている。フランスの労働大臣自らが建設業や公共労働部門に対
して、活動を再開するように圧力をかけた。


何百万人もの労働者が直接に解雇されたり、無給の部分的失業状態に置かれたりした。不安定で一時的な契約は更新されなかった。被雇用者の資格を有していなかった何百万人ものフリーランスも、気がつくと仕事や収入がなくなっていた。しかし誰にとっても、請求書やローン支払いが届けば支払わなければならないのだ。すべての労働者は自らの立場(賃金労働者、フリーランス、失業、短期雇用、季節雇用など)にかかわらず、収入は一〇〇%保障されなければならない。その国で生活する費用にもとづく最低限の収入が全員に保障されなければならない。


利益や配当金はこの資金調達のために使わなければならない。


不安定な条件の中で生活している労働者、ホームレス、そして女性が真っ先に新型コロナウイルスの拡散とそれによる隔離によって影響を受けることになる。倒れそうな住宅や狭く不健康な住居によって、貧困層にとっての隔離は富裕層にとっての隔離とは違うものになる。イタリアやフランスでは、裕福な人々はより危険の少ない地域で自己隔離するために、もっとも危険にさらされている地域を離れてしまった。

ロシア当局は弾圧的な手段へと転換し、隔離違反には高額の罰金を課すとともにビデオ監視や警察による管理を強化してきた。同時に、ロシア当局は収入や仕事を失った何百万人の中小企業労働者に対するいかなる支援も事実上拒否してきた。しかし、故郷に帰国できないまま、その多くが仕事を失った中央アジア出身の三百万人の移民労働者はもっとも弱い立場に置かれている。感染の拡大は、ロシア政府がこれまで実行してきた新自由主義的で容赦ない病院「最適化」プログラムを主な要因として、多数の被害者をもたらす恐れがある。


同様に、この状況の中で、ドメスティック・バイオレンスとフェミサイドがあらゆるところで増加している。


多くの国の刑務所では、囚人や職員が防護設備もないまま過密状態におかれている。


移民(とりわけギリシャとトルコの間で立ち往生している人々や収容所内にすし詰めにされた人々)は、不安定な健康条件のゆえにさらに大きな危険にさらされている。ほとんどの国において、彼らは国の支援やNGOの支援さえなく、食料支援もなく取り残されてきた。そして、防護手段のないセンターの中にすし詰めにされてきた。ポルトガルは国内にいる難民にたいして一時的に居住許可を出すことを決定した。しかし、これはすでに居住申請が出されたことを当局が確認した人々についてだけのものである。

他の誰にも増して、移民は収入、仕事、住居、食料の面でかつてなかった危機に直面している。国籍があろうとなかろうと、移民や難民も含めて、巨大で多様な不利な立場にいる人々のための「社会支援」部門は破綻している。同時に、移民やもともと移民であった人々は、医療・介護、公共交通、食料生産、配送、清掃といった絶対不可欠(エッセンシャル)な部門の労働現場で多くが働いている。と同時にその多くが女性を中心とした職場でもある。


パンデミックは階級差別を悪化させている。そして民衆諸階級やもっとも不安定な人々はこのパンデミックの間、とりわけ死と向き合っているにもかかわらず、もっとも低い賃金しか支払われていないし、これからも支払われないだろう。同時に、いくつかの政府は、イタリアやフランスに先導されて、好戦的な姿勢や国家主義的な構造に頼ることによって自らの怠慢を覆い隠そうとしてきた。軍隊や国歌を目立たせ、「聖なる連合」を呼びかけてきたが、その一方でこのパンデミックが始まってからほど階級差別が強まったことはかつてなかった。同様に、いくつかの政府は、社会的・民主的権利を制限するためにこの状況を利用しようという誘惑に駆られて、非常事態宣言を出した(イタリア、フランス、ポルトガル、スペイン)。


そのようにして、ドイツでは、新型コロナウイルス危機は、労
働運動がかちとったさまざまな成果(たとえば、バイエルンにおける労働時間法やドイツ全域における介護部門の人員比率法)に異議を唱え、それを撤廃するために利用されている。フランスでは、政府布告によって、企業が労働時間や休日
の権利に関する規定から逸脱することが認められた。スペインやポルトガルでは、規定を逸脱して、医療部門や必要不可欠な生産部門におけるストライキ権を禁止し、雇用主にスト破りを認めた。ハンガリー議会は、すべての民主的規制を無視して、オルバン首相に全権を与えた。


このパンデミックの到来は、多くの科学者や他の者たちにとって驚きでもなんでもない。企業的農業の大規模な成長は、食肉産業や森林伐採、大都市におけるスラムの増大や世界的生産連鎖とともに、新たな未知のウイルスを培養し世界的に拡散するという時限爆弾を生み出した。


ヨーロッパ連合は、この危機に直面して哀れな様相を呈している。現在の状況は、長年にわたる緊縮政策の結果である。たとえば、過去一〇年間に少なくとも六三回にわたって、EUはさまざまな国における公的医療支出の削減を要求してきた。医療での協同のとりくみを準備したり、パンデミックと闘うためのリソースをプールしておいたりするどころか、政府は手始めに「感染国」との国境を閉鎖し、イタリアが求めた支援を拒絶し、混乱したやり方で矛盾した措置をとった。数週間にわたって、イタリアはヨーロッパ諸国からよりも多くの支援を、中国やロシアから、そしてキューバからでさえ受け取った。


マスク、検査キット、集中治療室
の不足が、ほとんどの国において深刻なロックダウンを不可避としたが、今日においてさえヨーロッパレベルでの協力は(感染拡大に)追いついていないままである。最近数週間以内に開かれたヨーロッパ・サミットで関心を集めたのは、株式市場の危機や金融危機から自らを救い出すために、予算規定を一時中断し、ヨーロッパ中央銀行(ECB)が量的緩和をおこなうことだけだった。


その一方で、
この要求に直面して、EUはたとえばイタリアに対する低利の借款を供与しないために、ヨーロッパレベルで直接に保障されたコロナ債を発行することを拒否した。皮肉なことに、唯一の提案はESM(欧州安定メカニズム)を利用することだった。しかし、ESMによる支援は、現在の破局的な状況を生み出した緊縮策を条件としたものなのである。医療、産業資源、予想される医療人員という観点からの協力はまったくなかった。各国はみずからの自衛策を追求している。


緊急措置

ヨーロッパにおける第四インターナショナルの諸組織と活動家は、それぞれの組織とともに以下の緊急措置プログラムを支持する。


-スクリーニング検査キットを大規模に使えるように有効な手段を投入すること。

蘇生病室と人工呼吸器を増やすこと。すべての人々に適切な防護マスクを配布し、生物学的検査を受けさせることが、隔離解禁の条件である。こうした手段を民主的に管理されたもとで生産すること、新型コロナウイルスに対する薬品やワクチンの非商業ベースの研究に直接的な支援をおこなうこと。


-人々の日常生活や医療保護にとって必要不可欠ではないすべての経済活動を停止すること。


-不安定雇用労働者、臨時雇いの労働者、家事労働者、フリーランス労働者、季節労働者を含む、活動を停止した労働者の賃金について、休暇を取ったり、あとで働かなかった時間を回復したりする義務なしに、企業・国が一〇〇%の責任を負うこと。雇用主が賃金を支払うことを拒否した被雇用者の賃金を国が支払う義務をもつこと。インフォーマルな部門で働く労働者、失業手当が支給されない失業者、学生、それを必要とするあらゆる人に対して、国は保障された最低限の収入を支給しなければならない。それはまともな生活を送るのに十分でなければならない。


-あらゆる解雇を禁止すること。パンデミックが始まって以降に解雇された被雇用者を復職させること。


-ストライキ権を含む社会的権利を一時的に停止する強権的・例外的措置を拒否すること。


-活動を続けているすべての被雇用者に対して防護手段(マスク、ジェル、ゴーグル、手袋)を供給すること。安全条件が尊重されないのであれば、彼らの保護と職場から離れる権利の即時行使を認めること。


-テナントからのあらゆる立ち退きを停止すること。家賃、個人ローン、水道料金・エネルギー料金の支払いを猶予すること。倒れそうな住居に住む人々や住居のない人々に対して適切な住居を提供すること。空き家を徴発すること。


-障がいを持つ人々、高齢者、ロックダウンによって社会的に孤立したすべての
人々に対して適切な公的介護を提供すること。


-とりわけ隔離が決定された国々において、暴力の犠牲者となっている女性や子どもに対してただちに緊急保護の手段を確立すること。


-証明書を持たない移民や難民全員にただちに居住許可を与えること。あらゆる社会的保護システムへのアクセスを即時保障すること。すべての追放措置を停止すること。すでにコロナウイルスが移民キャンプに入り込んでいるため、きわめて過密となっている移民・難民キャンプ(とりわけレスボス島のモリア・キャンプ)をただちに閉鎖することは絶対に必要である。それとならんで、基本的で健康的な隔離条件を持っている必要なホテルやアパートの徴発も絶対に必要である。

難民の安全な入国手続きのために、ヨーロッパの各国国境を開放しなければなら
ない。

情勢の求めに応じて、一連の緊急決定においては、民衆諸階級の利益が中心に置かれるべきである。


-民間医療部門全体を統合して、医療部門を公的に再組織すること。近年閉鎖された病室、サービス、病院を再開して、そのサービスを運営するために必要なすべての医療労働者をただちに雇用すること。必要なすべての医療組織をオープンすること。医療労働者の賃金を引き上げること。


-製薬業を公的管理へと移行させること。必要な薬品を特許権とは無関係に生産すること。


-主要なソーシャルメディアを公的所有へと移行させること。フェイスブック、ワッツアップ、アマゾン、ズームはロックダウンから多大な利益を得ており、未来の巨大な利益を生み出すデータを収集しているからである。それらは(すでに利益を集めすぎているのだから、補償なしで)支配権を移され、利益を追求しない透明な公的サービスとして運営されるべきである。


-あらゆる国で葬祭業を公的所有に移行すること。民間企業が死から利益を得て、売り上げを最大化しようとして人々の悲しみを操作することは認められるべきではない。


-持続可能な農業と世界的な食料正義(フード・ジャスティス)を目指すこと。


-適切な産業(自動車、航空機、武器など)を社会が医療危機を乗り越えるのに役立つ生産、たとえば換気装置、モニター装置、集中治療室、防護設備などの生産へと転換すること。労働者は自らの労働現場を調査して、医療当局と協力して転換のための手段を講じることができるだろう。


-主要株主への補償なしで民間銀行を接収すること。市民管理のもとで金融システムを社会化すること。個人口座への銀行からの請求をすべて一時停止すること。


当面のニーズを満たすために勤労諸階級にゼロ金利の融資を提供すること。

-ただちに公的債務の支払いを一時停止すること。それによってパンデミック期間中の人々のニーズを満たすために十分な資金を動員するのを可能にしなければならない。債務支払いの一時停止は、不当な債務を確定させそれを帳消しにするために、市民による監査と結びつけなければならない。

残念ながら、このパンデミックとそれに続いて起こる世界的危機は、グローバリゼーションと気候変動によって繰り返し生み出される危機の始まりなのである。資本主義は、人間社会を不安定化させ破壊する世界、気候災厄や医療惨事のリスクを増大させる世界を作り出した。われわれは、利益、パンデミック、気候変動という古い世界に終止符を打ち、地球の破壊を止めなければならない。


これまで以上に、われわれの生命は奴らの利益よりも価値があるのだ。

二〇二〇年四月八日

オーストリア:ソーシャリスト・オルタナティブ(SOAL)

ベルギー:社会主義労働者党(SAP)-反資本主義左翼

イギリス;ソーシャリスト・レジスタンス

デンマーク;社会主義労働者党(SAP)

フランス:SFQI-フランス・第四インターナショナリスト

ドイツ:国際主義社会主義組織(ISO)

ギリシャ:OKDE-スパルタクス

ギリシャ;TPT(第四インターナショナル綱領的傾向)

アイルランド:ソーシャリスト・デモクラシー

イタリア:コムニア・ネットワーク

イタリア:反資本主義左翼

オランダ:SAP-グレンゼロス

ポーランド:ズビグニエフ・マルチン・コワレフスキー

ポルトガル:SPQI-第四インターナショナル活動家集団

ロシア:ロシア社会主義運動(RSD)

スペイン:アンティキャピタリスタ

スウェーデン:ソーシャリスティスク・ポリティク

スイス:社会主義のための運動(BFS/MPS)

スイス:ソリダリテ(連帯)

トルコ:ソシアリスト・デモクラシ・イジン・イエニヨル(社会主義民主主義への新たな道)

(『インターナショナル・ビューポイント』四月九日)

原文 
Faced with the Covid-19 pandemic, our lives are worth more than their profits

【アメリカ】進行中の「コロナウィルス・ストライキ」中間報告

5919(画像はAMAZONの労働現場でコロナ患者が発生したことにより、ストライキで全倉庫の洗浄を求めた労働者たち。かれらは現在、解雇攻撃にさらされている)



下部から湧き上がり広がる闘い
継続し成長すれば新時代視界に


ダン・ラボッツ

 

 われわれは今、雇用主が職場を安全にすること、あるいはその操業停止に踏み込めないでいることへの対応として、米国中で労働者が仕事の放棄や山猫ストを行っていることを見続けている。このストライキは、それらをある種のストライキの波と呼ぶには小さすぎるものだが、しかしわれわれは、自分自身の主導性で実際に彼らができるもっとも強力な行動であるもの、つまり仕事の放棄、に労働者がとりかかっている、ということに注目しなければならない。このストライキは、民間部門と公共部門の双方で、大小の労組のある職場と労組がまったくない職場双方で起きている。

広範な職場に山猫ストが伝染中


 労働者は一五〇年間、無数の産業で安全と健康をめぐるストライキに立ち上がってきた。二〇世紀の記憶に残るものは、炭塵じん肺をめぐる鉱山労働者のストライキだ。しかしわれわれは、雇用主に対し強力な要求を行う労働者による、また時に勝利を得ている、一つの感染症への対応としての健康と安全をめぐる山猫ストという、こうしたことに似たものを以前は経験したことがなかった。そしてこれらのストライキは、政治家の無知を露わにした言明、また時には偽りの言明、そしてあらゆるレベルにおける政府の失策のど真ん中で起きている。したがってこれらのストライキは、一人の特定の雇用主にだけ向けられている時であってさえ、経済的性格だけではなく政治的性格をも帯びている。

 われわれは今、さまざまな産業といくつかの州でそうしたストライキを見ている最中だ。

▼フィアット・クライスラーの労働者は、彼らの職場は安全でないと宣言し、三月半ば「ミシガン州の同企業スターリング・ハイツ組み立て工場(SHAP)で山猫的な労働放棄をやってのけた」。その中で労働者たちは、オンタリオの同企業ウィンドソー組み立て工場でも仕事を放棄し、工場閉鎖に向け三大自動車企業(フォード、GM、フィアット・クライスラー)に圧力をかけている(注一)。

▼仲間の労働者の妻が検査で陽性となりその労働者が隔離されたことを受け、ピッツバーグの下水部門労働者が三月二五日に作業を止め、トラックを駐車させ彼らの職場への入り口を封鎖した。要求は、マスク、もっと良質な手袋、そしてもう一組の作業靴の確保だった。労組は、ストライキが起きたことを否定し、労働者の職場放棄を誤解のせいにした(注二)。

▼ジョージア、カスリーンにあるプルデュー鶏肉処理工場の労働者は、工場の消毒を要求して三月二三日に労働を放棄した。「われわれは今何も得ていない。どんな形の補償もまったくなく、清潔さもまったくなく、特別手当も全然ない。われわれはここで完全に、鶏肉のためにわれわれの命を危険にさらしている」、ケンダリン・グランヴィルはこう語った。

▼ジェネラル・ダイナミックスのメーン、バースにあるケネベック川沿いのバース鉄工造船所では、労働者の一人が検査で陽性になったと会社が明らかにした後、六八〇〇人にのぼる同工場労働者の半数が三月二四日、仕事に出てくることを拒否した。労組が家に留まることを組織したのかははっきりしていないが、組合役員は、造船所の操業停止と従業員が家に留まることの容認を求めた(注三)。

▼チムスター667支部メンバーの、ほとんどがアフリカ系米国人からなる労働者の一団が三月二七日、仲間の労働者一人が検査で陽性になった後、メンフィスにあるクロガー食料雑貨倉庫で山猫スト

に入った。「われわれは本当に危険な状況にあり、怯えている」「労働者の半数は家に戻っている。彼らは自分の安全に怖れをもっている。それがここにあるものであり、彼らは設備に触れることを恐れるほど緊張している」、フォークリフト運転手であるモーリス・ウィギンズは新聞にこう語った(注四)。

 スターテン島のアマゾンの倉庫では、仲間の労働者が検査で陽性になった後に、労働者総数二五〇〇人のうち約一〇〇人の労働者が三月三〇日に仕事を放棄した。彼らは、会社が施設を清潔にし職場を安全にするよう要求した(注五)。

GEでは人工呼吸器製作要求し


 明らかに、ストライキや座り込みにとってつまらなすぎるというような職場はまったくない。三月二一日、オレゴン、ポートランドにあるクラッシュ・バーと関連のウッディーカフェおよびタヴァーンで、全スタッフ二七人のレイオフに抗議しようと、一二人の労働者が店内を占拠した。その一人であるハンナ・ジオイアは、法的回路を通じて賃金支払要求を追求するよりも座り込みを行った理由を問われて、「われわれは、この請求を処理する政府出先機関の能力を事態好転まで待つことはできないと見ている。われわれには今資金が必要なのだ」「レイオフされるのはそれだけで破滅的だが、公的な医療危機の中ではそれは破局的だ。われわれには選択肢がない。われわれは、法的に必要とされていることを、われわれの権利であるものをオーナーがやることを期待している」と語った(注六)。

▼おそらくもっとも注目に値することとして、マサチューセッツ、リンにあるGEエンジン工場の労働者が、「コロナウィルス・パンデミックの最中での人工呼吸器不足を国が埋めることを助けるためにその工場を活用するよう会社に訴えて」三月三〇日に仕事を放棄し、その後工場にピケを張り、社会的距離を確保し六フィート離れた行進を行った。これは、工場を人工呼吸器生産に転換するよう会社に訴えることにより労働者の職を救うことを意図したストライキだ。「GEの医療部門はすでに、人工呼吸器製造では国で最大の生産者の一つだ。したがって組合員たちは、他の工場も救命装置生産向けに転換され得る、と確信している」。こう伝えた「ヴァイス(万力)」紙記事は以下のように説明する。

―これらの抗議は、ジェネラル・エレクトリックによる、二六〇〇人近くの労働者の解雇として、国内航空関係要員の一〇%をレイオフすることになろうとの公表直後に現れている。そのレイオフは五億ドルから一〇億ドルを企業のために取っておく努力としてあり、整備労働者の五〇%の「一時的」レイオフと一体的になっている。このニュースは、下院が数兆ドルを投じた公的資金による企業救済案を通す準備を整える中で到来した。ちなみにこの救済策には、航空産業に対する少なくとも連邦援助としての五〇〇億ドル、貸し付けとしての二五〇億ドル、さらに税の一時的軽減が、また「国家安全保障に決定的」と思われている諸企業(すなわち、ボーイングやジェネラル・エレクトリックのような国防省契約企業)に対するさらなる一七〇億ドルの連邦援助が含まれるだろう(注七)。

官・民、組織・非組織問わず


 確実だが、報道が取り上げてこなかったこうした他のストライキや座り込みがあるに違いない。そしてわれわれは、あらゆる種類の労働者による、特にそれらの中でも重要なものとして教員や看護師による、多くの他の抗議行動があることを知っている。とはいえわれわれはそれらを、それ自体重要だが今回の議論に含めていない。山猫ストは労働者運動の歴史と理論では、またコロナウィルス・パンデミックの中における経営者と政府に対する今日の対応では、特別な位置を占めているのだ。

 われわれが注目することは、これらのストライキ参加者が高度に熟練し同時に高給取りの労働者である――ジェネラル・ダイナミックスのバース造船所の労働者のような――こととまた、またポートランドやオレゴンのバーやレストランの労働者、そしてジョージアのプルデュー鶏肉処理工場の労働者のような低賃金労働者でもあるという同時併存だ。

 人は、黒人労働者――ピッツバーグの下水、カスリーンのプルデュー鶏肉、さらにメンフィス、チムスター――がこのストライキで指導的役割を果たした、ということを典型にすることができる。しかしそれでもバース造船所の労働者は圧倒的に白人であり、他方自動車労働者は、黒人、アラブ人、白人、ラティーノであり、またGEのリン・ジェットエンジン工場もまた、民族的に混在した要員を抱えているのだ。

 そしてこれらの抗議行動では、疑いなくあらゆるジェンダーの労働者を見出すことができ、われわれは、労働者の心配に声を与えている男と女両者の叫びを聞いている。中心の要求が労働者の健康をめぐるものである一方、われわれは、彼らが早くも、賃金、手当、労働条件、さらに職の保障に関する要求を上げ始めているということを見ることができる。

 これらの行動に関しもっとも常と異なっていることは、組合の役員がそれらを呼びかけたのではなかったということだ。いくつかの例ではそもそも組合がまったくなく、自動車のような他の例では、労組はあるものの、労働者は労組と会社に反する形でストライキを行うことを強いられている。バース造船所のような一定の職場の場合、組合役員が戦術的に労働者の労働放棄を支持した可能性があるように見えるが、下水の場合ははっきりしない。

 これらの非公式ストライキは時として労組のノンストライキ協定条項に抵触し、あるいは公務被雇用者の場合、そうした業務放棄は法に抵触しているかもしれない。それでも労働者は、彼らの健康を

防護し、彼らの職を救う目的で、ソーシャルメディアや伝統的な口頭以外ほとんど頼るものが僅かなまま、それらの行動をやり切ることを自ら組織したのだ。

山猫ストの二面性と可能性


 山猫ストは、二つの面から考えることができる。通常山猫ストが勃発する理由は、労組がまったくないか、それとも組合指導部が経営者と闘う指導性を発揮できなかったか、のどちらかだ。左翼は時として山猫ストを、労働者の意志の本物の表現として、経営者に対する労働者の抵抗から自然発生的に発展した行動として、ロマン化して考えてきた。ある者たちはそれを、資本主義を打倒し、労働者を権力へと運ぶことになる、そのようなゼネストの前触れと見ている。

 だが同時に、労働者がそれまで組合を統制できてこなかったがゆえに、また組合を彼らの力の表現として使うことができなかったがゆえに、山猫ストに訴えざるを得なかった、ということも認められなければならない。山猫ストには、生産点における労働者の直接的な力の表現という側面と、しかしそれだけではなく、彼らの意志を表現できる民主的に統制された組合の建設という点での彼らの敗北――経営者と労組官僚の力を理由とした――の表現でもあるという、二面があるのだ。

 労働者がこれを認識する時、少なくとも社会的高揚の時期には、時に過去において彼らは、彼らの労組内で権力を行使し、それらを戦闘組織に変えようと挑んできた。こうして山猫ストは、基層の運動に燃料を注ぐエネルギーの源になる可能性をもつ。たとえばその一例が、重工業における一世紀を超える例、また公務部門における七五年の例だった。つまり、産業別労働組合会議(CIO)創立に導いた一九三〇年代の米労働者の偉大な前進、およびゴム工場、自動車産業、電気労働者、また他の多くにおけるまさにそのような山猫ストから派生した米職種別労組連合(AFL)の広大な拡張だ。

 労働者は何千人という単位で労働放棄を行い、ある者たちは彼らの工場を占拠した。他方他の者たちは大衆的ピケットラインをつくり出し、スト破りや警察と戦った。山猫ストは、大不況の一〇年の間、米国中でいわばウィルスのように広がり、工業の小規模な作業場や小売り労働者にまでたどり着いた。同様なことが、教員や公務部門被雇用者でも一九六〇年代と一九七〇年代に起きた。彼らは非合法なストライキに立ち上がり、彼らの労組を設立した。基層の高潮はまた、一九七〇年代に統一鉱山労働者をも転換させ、同じく他の労組指導部をも狼狽させた。

闘いへの注視と連帯強化を

 現在の経済減速を早めた(二度目の大恐慌になりそうに見える)コロナウィルスは、彼らの事業と利潤を保全しようと闘う雇用主、そして彼らの健康と命のために、彼らの職と生活水準のために闘う労働者、この間の対立の原因となった。われわれは、そう呼ばれるがままの「欠くことのできない労働者」が彼らの力を感じている中で、これらのストライキが継続すると期待できる。パンデミック――われわれは、それが米国でまさに今跳ね上がり始めつつあるに過ぎない、ということを思い起こさなければならない――が広がるにつれ、また経済危機の深さとその長期的影響が鮮明になるにつれ、ストライキはわれわれが予想できない他の形態をとるだろう。

 しかしわれわれは、何人かが労働力の二〇%から二五%に達すると見ている失業が、そうした行動の勢いを削ぐものにもなり得る、ということを思い起こさなければならない。歴史的に失業の高まりは、一九七五年から一九八〇年におけると同じく、われわれがここで論じている底辺からの闘争を減速させるように、あるいは停止させるまでに作用した。

 それでも山猫ストが続き、成長するならば、それらは、労組の指導権をつかみ取るために、またそれらを労働者階級の戦闘組織に変えるために立ち上がる、そうした新たな基層運動を推進する可能性があると思われる。もしそれが大規模に起こるならば、われわれは、多くの他の可能性が、もっとも重要なものとして、自立的な政治行動や労働者階級の政党の可能性が、視界に現れ得る新しい時代に入る。

 われわれは、これらの山猫スト運動から視線を外してはならず、それらを支え、それらが広がり成長することを願い、われわれの連帯を差し出し、それらが労組を民主化し、経済と政治の権力両者と闘う階級闘争の組織にそれらを転換する運動になることを願わなければならない。



(二〇二〇年三月三一日、「ニュー・ポリティクス」より)

(注一)「レイバー・ノーツ」二〇二〇年三月一八日。
(注二)「ピッツバーグ・ガゼット」二〇二〇年三月二五日。
(注三)WGME、二〇二〇年三月二四日。
(注四)「ペイ・デイ・レポート」二〇二〇年三月二七日。
(注五)「ニューヨーク・ポスト」二〇二〇年三月三〇日。
(注六)「イーター・ポートランドOR」二〇二〇年三月二二日。
(注七)「ヴァイス」二〇二〇年三月三〇日。

(「インターナショナルビューポイント」二〇二〇年四月号)  



報告:4.7「緊急事態宣言発令弾劾!#自粛と給付はセットだろ!」 都教委包囲 ・首都圏ネット行動

配信:4.7都教委 4月7日、都教委包囲・首都圏ネットは、新宿東口アルタ前で「緊急事態宣言発令弾劾!#自粛と給付はセットだろ!」情宣行動を行い、100人以上の仲間たちが参加した。

 情宣行動の開始にあたって参加者全体で「緊急事態宣言発令糾弾! 自粛と給
付はセットだろ! すべての人に給付金を! 中途半端はやめろ! 感染前に死んじまう! 生活保障をしろ! 希望者全員に検査をしろ! 早急に医療体制を整えろ! 都立病院の独法化を撤回しろ!」などのシュプレヒコールを行った。
 
 ネットの仲間は、「安倍首相は、オリンピック延期の前にはコロナ感染は大丈夫だと言っていたが、延期が決まったとたんに『三密』(密閉・密集・密接)を避けてくれと言い出した。そもそも政府のコロナ対策の初動が非常に遅れていた。

人命よりもオリンピックが優先されていた。この間は、外出の『自粛』、30万円の給付金を言い出した。この30万円も全ての人に対する給付ではない。貸付金もやると言っているが、早くても五月中旬の支給だ。その前に困って死んでしまう」と厳しく批判した。

 さらに「安倍の緊急事態宣言を弾劾します!」(別掲)の声明を読み上げ、「この緊急事態宣言の狙いは、国民の間に緊急事態という言葉になれさせることだ。その次のステップが緊急事態を憲法に明記することにある。小池都知事が『都市封鎖・ロックダウン』を使って活気づいている。こんな人に緊急事態などを言わせてはならない」と強調した。
 
 石橋新一さん(破防法・組対法に反対する共同行動)は、「最近、政府関係者が新型コロナウイルス感染拡大に関し『国のせいにしないでくださいね』とツイッターに書き込んでいた。とんでもないことだ。韓国のコロナ対策と比較してみれば安倍政権の初動は遅れている。学校の一斉休校をトップダウンでくだした。韓国は、今でも休校にしていない。青少年の行き場がなくなれば感染は、さらに拡大してしまう。安倍は、当初から改憲の予行演習をするために緊急事態宣言をねらっていた」と暴いた。
 
 見城赳樹さん(ネット)は、「安倍は、閣僚にも相談せず学校の一斉休校要請を言い出していた。法的根拠がないのに安倍が言うと、みんな従ってしまう事態になっている。こういうファッショ的なやり方を繰り返し批判してきた。国会でもコロナ特措法改定案に反対したのは共産党だけだ。危機的な事態に対して国会、都庁前連続行動を闘ってきた。生命が脅かされている状況下、政府、都の無策を許さず闘っていこう」と訴えた。
 
 池田 五律さん(戦争に協力 しない!させない!練馬アクション)は、「自衛隊は、コロナ対策の一環として災害救援として出動している。感染症法第33条に基づいて政令を変えるだけで都市封鎖ができるようになっている。国会を通さなくてもいい。コロナ特措法と制令の変更によって、違憲行為などを拡大していこうとする狙いがある。恐怖を煽り、情報操作をやりながらの強行に対して警戒し、はね返していこう」と発言した。
 
 リレートークが続き、医療労働者は、「医療現場の医師や看護師たちの死にそうな労働はコロナになったから起きていることではない。一貫して人員を削減し、医療費削減のために病床を削り続けてきたからだ。すでに日本の医療は破綻していた。私たち医療労働者は、そのことを必死に訴え続けてきた。今回、あらためて医療の実態が暴露された。現場にはマスクなどがまとに届いていない。命を守るために大幅な人員増を実現する必要がある。そのためにも団結して闘っていこう」とアピールした。

 最後にシュプレヒコールを行い、継続して緊急事態宣言反対の取り組みをしていくことを確認した。

(Y)




声明「安倍の緊急事態宣言を弾劾します!」 
2020・4・7 都教委包囲
・首都圏ネット

 本日、安倍内閣によって、新型コロナウィルス対策の下に「緊急事態」が宣言されました。

 私たちは、この寓挙かつ暴挙を断固として糾弾するとともに、宣言の撤回を要求します。

 理由の第1は、緊急事態宣言は労働者・民衆の諸権利=集会の自由・移動の自由などを大きく制限するもので、主権者たる私たちの権利を国家が侵すことは民主主義を否定するものて゛あり、認めることは絶対に出来ません。

 民主主義の否定は、安倍政治の本質です。この間いくつもの事例を知っていま
す。それは、ファッショ的政治であり、断固否定します。

 第2は、緊急事態宣言は、安倍・自民党が目指す改憲の柱の一つ、「緊急事態条項」実現に道を開こうとするものです。自民党の緊急条項は、ナチス・ファシズムが権力を握った手法です。危険きわまりないものです。コロナウィルスの感染拡大が創り出す人々の不安を政治的に利用し、自己の政治的野心を実現させることは、私たちは許しません。

 第3は、緊急事態宣言の本当の目的は安倍内閣の無策の責任転嫁です。

 安倍政権は新型コロナウィルス発生初期において、水際対策に失敗しました。それは習金平の国賓として来日(安倍のポイントかせぎ)が四月初旬で、その実現を優先させたため中国からの訪日を封鎖できなかったのと、オリンピック・パラリンピックを日程通り実現させることを最優先させたため、意識的に検査対象者を限定し感染者数の操作を行いました。

 現在の感染拡大の責任は明らかに安倍内閣にあります。それは、人々の生命・健康・生活よりも習金平訪日・オリンピック・パラリンピック開催を最優先させたからです。

 その結果、人々の生命・健康・生活は危機的状況に長く置かれています。

 安倍は、対策としていくつか出していますが、企業の救済が最優先で、真に困っている経済的弱者の救済は後回しです。

 肝心の医療対策もおざなりで、医療の現場は悲鳴を上げています。また、感染の疑いのある人に対するケアも全く不十分な状況です。

 このような状況は、緊急事態宣言を出しても何ら改善されません。

 民衆の犠牲を作り出す安倍のコロナウィルス対策=緊急事態宣言を私たちは糾弾します。

 民衆の権利制限をはねのけて、命と人権、生活を守るために断固闘い続けましょう!

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【コロナ禍問題】労働者が感染爆発を生き残るには

sinagawa緊急事態宣言はいらない!

今すぐの生活保障が先だ!


 東京都での感染拡大を受けて政府は緊急事態宣言を発令した。我々は政府の緊急事態宣言発令に反対する。補償がないままの緊急事態宣言は、派遣やパート労働者を中心に多くの失業者が生み出され、ネットカフェで暮らす人々などが行き場をなくし、感染ではなく経済的苦境により命を落とすことになる。

しかも緊急事態宣言が発令されれば、企業は、現状では義務となっている労働者に対して休業補償を企業は免れることができる。このように一方的に労働者・地域住民のみにリスクを押し付けるやり方では感染封じ込めはできない。今求められているのは、労働者・住民の自主的「籠城」を政府・自治体が全面的に支援することである。

ロックダウンではなく自主的「籠城」の支援を

今回の緊急事態宣言の背景には、無策を糊塗したい政府や都が、感染拡大を前に日本医師会や一部専門家を中心に、緊急事態宣言に続きロックダウンという強力な措置を行い、感染を封じこめて医療崩壊を防ぐべきだという一定の世論の広がりを受けて判断したものだ。

例えばクルーズ船での杜撰な体制を実名で批判した岩田健太郎神戸大学教授・医師は自身のツイッターで「東京都は「ロックダウン」を決断すべきです。今日です。現状の患者の増え方は一意的でこれまでの患者選択、検査、コンタクトトレーシングでは抑え込めません。 つまり現状維持では状況は悪くなる一方で、別の方針に転換する、プランBに移行する必要があります。」とツイートしていた。

しかし特措法にはロックダウンは定義されていない。特措法で可能なのはあくまでも「外出の自粛」だけであり現行と変わりはない。つまり切り札的イメージと裏腹にロックダウンは実施不可能である。しかし感染拡大を封じ込めるためには岩田教授が言うように現在は外出制限が必要である。

であるから政府・自治体はロックダウンのような勇ましい言葉をもてあそぶのではなく、労働者・住民が自主的に「自宅」に「籠城」できるように支援を行う必要がある。そして自宅を持たない人、自宅に居場所がない人には新たに安全な「籠城」場所を提供する必要がある。

したがって政府・自治体がまず行うべきことは、住民にのみリスクを押し付ける現行の対策からの転換である。経済活動の縮小により困窮に陥った人々を救済することが待ったなしに求められている。一律平等な現金の支給が必要だ。

年度末をまたいだ現在、様々な支払いに苦慮する人々、とりわけ収入が減り家賃の支払ができなくなった人を早急に救済する必要がある。「5月目途に所得減少世帯に30万」が検討されているが遅すぎる。このままでは「籠城」どころか多くの人が路上に放り出されてしまい、感染の封じこめは不可能だ。

災害に無力な小さな政府

直接・早急に住民に援助を届けようとすると時に障害となるのが、国・地方を含めた公務員の少なさである。20年以上にわたって公務員定数を削り、民間委託を広げてきた小さな政府・自治体は、このような非常時には何もできない。どこに生活困窮者がいるのか等、現在の自治体では、住民のニーズをほとんどつかみ切れていない。そのため、このままでは多くの孤独死が発生する可能性がある。これがこの間、新型コロナウイルスの感染拡大が明らかにした事実である。

迅速一律平等な所得補償を

政府が強権で感染を封じ込めることはできない。そして感染のリスクは平等ではなく階級差が歴然と存在する。私たちが生き残るためには自主「籠城」と、矛盾するようだが連帯が必要である。必要なのは自主「籠城」とそれを支える様々なネットワークである。住民による自主的な地域ネットワーク(それは個人加盟労組、地域労組の取り組みや貧困対策に取り組んできたNPOだったりするだろう)が求められている。

必要なのは政府の強権ではなく、自主「籠城」を支えるネットワークとそれを支える迅速一律平等な所得補償である。様々なネットワークがつながりながら、共に政府に向けて運動を展開しよう。このままでは、医療崩壊と失業・困窮による大量の病死、自殺・孤独死が発生してしまう。


感染症医療体制の今すぐの確保を!

感染拡大のさなかに都立病院を半民営化の愚

オリンピックの延期が決定されて以降、緊急事態宣言まで国や東京都の対応は手のひら返しとなった。明らかに都知事選を意識している小池都知事は「ロックダウン(都市封鎖)」という強い印象を持つ言葉を使用し、強力なリーダーシップを発揮する指導者として自分を都民に売り込んだ。しかし小池都知事の「強力なリーダーシップ」は決して都民のためには発揮されない。

その力はどこまでも大資本の利益のために奉仕される。今現在、都知事が真っ先に行わなければいけないことは医療の確保、中でも集中治療体制の確保である。しかし小池都知事は、感染が拡大する中で、都内の指定感染症病床の約70%(80/118)を占める都立・公社病院を22年度中に地方独立行政法人化する方針を3月31日付で公表した。感染との闘いが長期戦になることは明らかにもかかわらず安倍政権に倣った真逆の方針である。

感染との闘いのただ中で都立・公社病院の地方独法人化を強行すれば、労働条件の切り下げによる看護職員の大量退職などで医療提供に支障をきたす可能性が高い。都は都立・公社病院の地方独法化を今すぐ撤回し、都立・公社病院へ人工呼吸器などの医療資源と人材を集中させるべきである。とりわけ感染症病床の確保は、軽症・無症状者の入院を制限したとしても深刻さを増している。

都は現在においても都立・公社病院を自己収支比率といった経営指標で評価することをやめようとしていない。経営指標で病院運営を縛ることを直ちにやめ、採算性を度外視しても住民の命を守るために都立・公社病院を最大限活用すべきである。民間病院との間で役割分担を行い、都立・公社病院を中心に感染症対応可能病床を確保するべきである。


地域医療を疲弊させた医療費抑制

都は感染症指定病床に加えて都内の拠点病院に協力を要請して感染症対応可能病床を1000床まで確保したとしている。今後、4000床まで拡大するとしている。しかし財政措置のないお願いにとどまっているため、対応可能病床の増床は感染者の拡大に追いつておらず、自覚症状がありながら病床が空くまで自宅待機や一般病院での入院せざるを得ない患者が多数いる。

病床確保が進まない理由は財政措置ばかりではない。この間政府が進めてきた医療費抑制政策と病床削減を義務付けた地域医療構想により、地域医療を支えてきた病院が感染症医療に対応する体力をなくしている。医療費削減のために診療報酬が改悪される度、地域の中規模病院では急性期医療を断念し人員配置の少ない慢性期病床へと病床が変更されてきた。

急性期病床に比べ少ない人員配置の慢性期病床では人手のかかる感染症医療を行うことはできない。したがって国は医療従事者を確保し感染症対応病床を確保しようとする病院に対して財政措置を行い全面的に支援するべきである。しかし国は、真逆な対応を取っている。地域医療構想実現のために病床を削減する病院を支援する84億円を計上した20年度予算をそのまま成立させた。このように小池都政の都立・公社病院の地独法化は、安倍政権の医療費削減と一体のものである。


脆弱な日本の医療体制

日本は病床数こそ多いが、そこに働く医師・看護師数は少なく、多くの医療従事者を必要とする集中治療室の数も少ない。人口1000人当たりの診療医師数はドイツ4.3、イタリア4.0人に対し日本は2.4人でOECD加盟35か国中30番目である。看護師数はドイツ12.9、イタリア5.8人に対し日本は11.3人、OECD加盟国中11番目である。集中治療室の病床数は10万人当たりドイツ29~30床、イタリア12床、日本は5床程度である。しかも看護師の配置数は他のOECD加盟国の半分である。

この人員配置数では感染予防を徹底させた場合4分の一程度しか運用できないと指摘されている。つまり新型コロナウイルス感染症の前では人口10万人あたり実際に稼働できるICU2床弱であり、イタリアの6分の1である。

日本では体制不備のため検査数が極端に少ない。そのため国内感染者数が5000人を超える前にあっけなく医療崩壊に至る可能性がある。


感染爆発を生き延びるために

1.財政措置による感染症病床の増床と軽症・無症状者の入所施設の早急な開設。

2.迅速一律平等な所得補償。

3.自主「籠城」を支える「自宅」の確保。

4.封鎖ではなく住民・労組などのネットワークを活用したすべての住民の自主「籠城」への相互援助、とりわけ自主「籠城」中の職の確保を企業に義務付けること、派遣切り、雇止め、解雇、内定取り消し等を許さない闘い。

5.自主「籠城」を支える公共サービスの維持。

6.公共サービスを支える労働者への支援、とりわけ長時間労働の禁止。この感染爆発を労働者階級が生き延びるための戦略・戦術を確立するために経験を交流させよう。


(矢野薫)

報告:3.26オリンピック災害おことわり新宿デモ

配信:3.26新宿反五輪デモ 東京オリンピック・パラリンピックは新型コロナVのパンデミックによって、3月24日にIOCが1年間の延期を決定した。それにともなって26日に予定されていた福島県のJビレッジからスタートする聖火リレーも中止になった。そうした状況のなかで、東京オリ・パラの延期でなくて中止を訴える行動が、3月26日に新宿アルタ前での集会と都庁までのデモとしてかちとられた。

 聖火リレーも東京オリ・パラも中止だ中止! のこの日の行動には、80人が参
加した。多彩な横断幕も三枚広げられて、道行く人々に大きくアピールすることになった。集会ではまず、実行委員会から新型コロナV影響の現状と開催するにあたっての経過報告が行われた。福島で予定されていた聖火リレーに対する抗議行動は、聖火リレーそのものが中止になったために抗議行動も中止になっている。いくつかのアピールの前に力強くコールがあげられた。

 五輪災害おことわり! JOCは恥を知れ! 延期じゃなくて中止だ中止! 
五輪じゃなくて生活保障! インフラ盗む五輪はいらない! 情報隠蔽許さない! 原発復興終わってないぞ!……怒りの声をあげていこう!

 アピールのなかで、「オリンピック災害」おことわり連絡会からは「JOCもIOCもマネーファーストで悪どいことをやってきた」として、インフラ建設にともなった住民の追い出し、過酷な突貫工事にともなった労働者の過労死、広大な熱帯林の破壊と先住民の被害などを明らかにし、オリンピックの中止と廃止を訴えた。

 福島県の南相馬から神奈川県に避難し現在、被団連の活動をしている村田さんは、「東京オリンピックは原発被害者にとっては恨みそのものだ。安倍首相は原発はアンダーコントロールされていて健康の心配はないとウソを言って引っ張ってきた。そして20年までに被害をゼロにすると無理強いさせて、県も政府の手下となって住宅支援の打ち切りと帰還の強制を行い、被害者を提訴までしている」と訴え、最後に「オリンピックは安倍自身のために延期されたのだ」と東京五輪延期の欺瞞性を明らかにした。

 新宿駅西口の繁華街をコールをあげながら元気よく進むデモは、道行く人々の注目を集めた。「中止! 東京オリンピック」「STOP! Tokyo Olympic」と書かれたプラカードに次々とカメラが向けられる。一方、高層ビルが林立するオフィス街は新型コロナVの影響なのか、ほとんど人通りがない。

「TOKYO 2020」の大看板を張り出している都庁ビルも、わずかばかりの窓明かりを残して力なくそびえ立っているようだ。

 警察の規制を跳ね返して、都庁に向けて怒りのコールをあげる。その後デモは
新宿中央公園での解散となった。一九三六年のベルリン五輪がヒトラーとナチスの五輪だったのと同様に、延期された東京五輪は腐敗しきった安倍政権延命のための五輪に他ならない。そんなオリンピックはまっぴらごめんだ。オリンピックマフィアとゼネコンのための五輪はどこにもいらない。東京オリンピックを中止に追い込もう。

(R)

報告:3.28郡山/「聖火リレーと五輪災害」トーク・リレー集会

配信:郡山駅前・大河原さきさん 3月28日、「オリンピック災害」おことわり連絡会は、福島の仲間たちとともに「聖火リレーと五輪災害」トーク・リレー集会を行った。

 国際オリンピック委員会(IOC)は、3月24日、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大とともに各国、五輪選手などからの東京五輪・パラリンピックの延期要求に対して利権とカネの膨大な損失が必至なために抵抗していたが、ついに無駄な抵抗も崩れ七月から開催予定だった東京五輪・パラリンピックを一年程度延期し、遅くとも2021年夏までに開催すると発表した。

バッハ会長は、なんら科学
的根拠を示すこともなく延期した五輪大会を「前例のない危機を人類が克服した祝祭とする」などとオリンピックマフィアの意向を代弁する始末だ。安倍首相に
いたっては、「IOCによる延期の検討は、完全な形で大会を実施する方針に沿うものだ。東京大会の開催は、世界がコロナウイルスに打ち勝った証しになるとともに、日本の成功の証しになる」などと強調し、東京五輪の開催決定以降の関連経費が全体で3000億円以上の無駄ガネがかかることを前提にぶち上げた。

 かつて安倍は、福島原発事故後は「アンダーコンロールされている」と大嘘をついて日本に五輪招致を決めさせたが、その犯罪に続く、大嘘だ。すでに五輪総経費は3兆円を超えている。巨額な無駄カネを五輪に使うのではなくコロナウイルス対策のための医療システム、無償の検査・医療アクセスの充実、発症者・感染者などへの生活援助、コロナ感染拡大の被害による労働者休業補償、雇用・賃金手当などに支出すべきなのだ。

 東京五輪延期が決まったことに対して連絡会は、①五輪延期ではなく中止だ 
②延期によって膨大な人員とカネがこれまで以上に五輪に投じられることに反対 ③五輪延期による復興やコロナ対策へのしわ寄せを許さない ④2024パリ五輪、2028ロス五輪に反対する地元のグループとのスクラムを継続していくことなどを確認している。

 また、26日の福島復興キャンペーンの一環としてのJビレッジからの聖火リレーは中止となり、28日の午後5時過ぎに郡山駅西口駅前広場スタートから開成山公園自由広場にゴールも中止になった。そのため26日に予定していた「聖火リレーへのスタンディング・アピール」を28日に予定していた郡山駅前での行動に集中することになった。

 トーク・リレーのトップは宮崎俊郎さん(連絡会)から行われ、「コロナウィルス感染が拡大している東京の者が福島にコロナウィルスをばら撒く危険性もあるということで郡山に来ることについて議論してきた。しかし、皆さんに五輪は延期ではなく、中止だということをぜひ伝えたいという思いで来た。1940年に東京五輪を開こうとしていたが戦争で返上した。関東大震災からの復興としていた。1964年は、太平洋戦争からの復興として位置づけていた。2020東京五輪も福島原発と東北大震災からの復興として位置づけた。だが復興していない現実を隠すためにオリンピックを利用しているにすぎない。延期された五輪も『コロナウィルスに打ち勝った』などと、また嘘の位置づけでやろうとしている。こんなオリンピックはいらないことを強く訴えたい。そのために自家製のトーチを作って走ろうとしていた。五輪にカネを使うのではなく、福島の復興のために使えと言いたい」とアピール。

 大河原さきさん(ひだんれん/原発事故被害者団体連絡会事務局長)は、「『共同声明「福島はオリンピックどごでねぇ』(ひだんれん、脱原発福島ネットワーク)を出し、二月二九日に双葉郡楢葉町のJヴィレッジ周辺で、『福島はオリンピックどごでねぇ』アクションを行った。福島から県外に避難した人たち、県内に避難した人たちの損害賠償裁判を取り組む団体が入っている連絡会です。県は、避難者への住宅の無償提供を2017年に打ち切り、有償で国家公務員宿舎に住むことを認めていたが、それを認めず追い出しを行っている。3月25日に県は、四世帯に対して追い出すために裁判に提訴した。追い出しをやめろと抗議しています。ほとんどの人が非正規で就労し、コロナ状況による雇止め、収入減に追い込まれている。住んでいる人たちには、二倍の家賃を請求してきている。支払えない状況を無視し、五輪には無駄なカネを使っている。被害者、避難者への補償、救済が必要だ。オリンピックどこでねぇ。廃止を求めます」と訴えた。

 くわばらよもぎさん(連絡会)は、「東京五輪が延期となりましたが、私たちは五輪の中止と廃止の訴えはかわりません。都は週末の外出自粛を要請してるが、マスクも店頭になく、生活補償、休業補償など全くなされないままだ。『復興五輪』だと言うが、避難者支援の打ち切りなどをやっている。五輪のお金でもっと様々な支援ができたはずだ。毎月、東京駅前でスタンディングを行い、五輪の問題を訴えてきた」と発言。

 梅津俊也さん(郡山駅前アクション・ 原発いらない金曜日)による「民衆の唄」アピール。

 鵜飼哲さん(一橋大学教員)は、「東京五輪の延期のプロセスは非常に問題だ。延期を決めたとたんにコロナ感染人数が増えだした。多くの人がおかしいと思っている。支配者にとって都合が悪いときは、数字をいくらでも改ざん、隠されてきた。福島原発事故以降、このことを経験してきた。全く同じことがコロナウィルス問題でも起きている。オリンピックと結びついて世界的な感染症の拡大が繰り返されてきた。リオデジャネイロオリンピック(2016年)のときジカ熱の感染拡大が危惧されていたが、WHOが延期、中止の勧告しなかったことで批判されている。長野オリンピック(1998年)の時もインフルエンザの拡大があったにもかかわらず行った。七年前、福島原発事故被害を隠すために安倍首相は嘘をつき、今度はコロナウィルスに打ち勝ったことにして東京五輪をやろうとしている。こんなでたらめがあるか。現在のままコロナ感染が拡大していけば医療崩壊は必至だ。またしても人々に犠牲を強要しようとしている。本当に許せない」と糾弾した。

 黒田節子さん(原発いらない福島の女たち)は、「五輪は延期になったが、中止だ、廃止だ。オリンピックは、福島の大惨事を隠すためにやるということが福島にいるとよくわかる。オリンピックに使うカネがあるなら、被災者のために使え。公営住宅に入れて、今度は出ろと言われている。被災者が訴えられているというとんでもないことが起きている。子どもたちの健康被害の問題もいいかげんな扱いだ。オリンピックをやっている場合じゃない」と強調した。

 谷口源太郎さん(スポーツジャーナリスト)は、「オリンピックの延期はオリンピック憲章にない。まともにみせようということで2020東京をそのまま二一年に延長して使う。バッハIOC会長は、自ら破るデタラメぶりだ。IOCは、大会をやるごとに一兆円近くのカネが入ってくる。だから、それが入ってこなくなると困るので延期にした。全てカネが根源にある。安倍首相は、政治利用のためであることは明らかだ。マネーファースト、国家ファーストによって堕落してしまったオリンピックだ。あまりにも選手たちが可哀相だ。いいかげんにオリンピックを止めさせ、これからどのようにスポーツのあり方があるのかを追求していくきっかけにしていこう」と呼びかけた。

 最後に「原発いらないいのちが大事の歌」を合唱し、トーク・リレーを終えた。

「聖火リレーと五輪災害」集会

 引き続き、郡山市総合福祉センターで「聖火リレーと五輪災害」をテーマに集会を行った。

 鵜飼哲さんは、「『聖火』を人質に取った『復興』五輪」について取り上げ、①「聖火」はどのように日本に運ばれたか ②五輪/「聖火」/リレー ③「原発事故と新型コロナ―災害『克服』という名の災害について問題提起した。

 とりわけ、「2013年に7年後、被災地は『復興』していることにされたように、2020年に一年後、世界は新型コロナを『克服』していることにされた。安倍が意図せずしてバッハにこの理屈を受け入れさせられたのは五輪理念に元来『復興』の観念が含まれているためだ。つまり、五輪は単に利用されているのではなく権威主義国家の優生思想、棄民政策、能力主義と高い類縁性がある。64年の東京五輪準備でも死者が300人以上も出ている。今回の準備でもどれだけの犠牲者が出ているのか」などの問題点を浮き彫りにした。

 谷口源太郎さんは、「1月2日、国会で安倍首相が施政方針演説を行った。オリパラを乱発した。とくに『国民一丸となって』ということを強調していた。『復興』の象徴としてJビレッヂからスタートする聖火リレーだと言っていた。とくに『子どもたちの笑顔があふれている』と表現していた。Jビレッヂは、原発事故の工事拠点として使った場所だ。工事拠点をとっぱらい、『復興』の拠点にするために聖火リレーの出発点とした。東電は一切、除染していなかったことが環境団体によって明らかにされた。汚染物質がたくさんあるのに聖火リレーのスタート地点にし、子どもたちを動員しようとしていた」ことなどを厳しく批判した。

 へびいし郁子さん(郡山市議/「虹とみどりの会」)は、「メディアも東京五輪と聖火リレーの宣伝を繰り返し行っていた。福島の聖火ランナー(200数人)の写真を一人ひとり掲載するほどでオリンピック一色だ。郡山市長が外出自粛を要請していたが、先ほどの駅前アピールでのビラの受け取りはいつもよりよかった。連絡会のとりくみがあって、大変感激し、力強かった。オリンピックは、安倍首相の数々の悪政を隠すための政治利用だ。オリンピックは中止しかない。」と批判した。 また、郡山市議会に対して「新型コロナ感染症による社会・経済影響は深刻 医療・食・住居の保障を!」などの要求実現に向けて取り組んでいることを報告した。

 さらにトークは、黒田節子さん、中路良一さん(郡山教組)、桜井大子さん(連絡会)、稲垣絹代さん(沖縄)、中森圭子さん(神奈川)、くわばらよもぎさん、斉藤春光さん(いわき)から行われた。最後に主催者から今後の行動提起を受け、終了した。

(Y)

【フランス】国際女性デー 新たな闘いの宣言 暴力への対決で抵抗新たに高揚

1(高揚したパリ3.8国際女性デー闘争2020)







国際女性デー 新たな闘いの宣言

ペネロペ・ドゥガン

暴力への対決で抵抗新たに高揚

 近年における女性運動の新しい高まりは、暴力の問題によって大きく推し進められてきた。二〇一五年のアルゼンチンにおける「ニ・ウナ・メノス」(一人も欠けさせない)の第一宣言以来、挑戦課題は、その経済的、社会的、国家的、家庭内、またジェンダーの諸形態をとった女性に対する暴力に向けたものになった。二〇一六年、ポーランドの女性は中絶の問題で決起し、最初の女性ストライキが起きた。

 これらには、二〇一七年一月のトランプ就任式典に対する諸々のデモ――米国内だけではなく国際的にも――が続いた。二〇一七年の国際婦人デーでの国際的女性ストライキ呼びかけと同年九月の「#me・too」運動の爆発は、この運動の国際的拡大のもう一つの段階を刻みつけた。

 われわれは、気候運動の中に、アルジェリア、スーダン、ブラジル、またチリの民主的抗議行動、同じくロジャヴァ(シリア圏クルディスタン)女性の闘争の中に、決然とした、そして著しい女性の存在を見てきた。われわれはまた、フランスの黄色のベストの中の、あるいは年金「改革」反対の運動の中の女性を忘れてはならない。そして重要なことだが、ラテンアメリカ、スペイン、イタリア、スイス、ベルギーでは諸々の運動が女性ストライキを呼びかける声を上げてきた。

システムにノー 女性ストライキ

 フェミニストストライキの呼びかけは、全体としての、またさまざまな道筋で特に女性に害を及ぼしている、その新自由主義政策に反対する反抗の前線に女性がいる一つの時期と関係している。女性ストライキは、「#me・too」、賃金と所得の不平等や緊縮の効果の姿をとった経済的暴力、国家的抑圧、自身の肉体を支配する女性の権利に対する暴力の形をとった社会的暴力、そして過剰消費により引き起こされたものも含む地球に対する暴力、これらの暴力との間に結びつきを作りつつ、ジェンダー的暴力に異議を突きつけている。それゆえフェミニストストライキの呼びかけは、職場での作業停止という観念の先まで進み、それは、全体としてのシステムに対する拒絶を象徴する行動の一方法となっている。

あらゆる波と同じようにこの波は不均等だ。いくつかの地域では長続きする影響力をまだ獲得するにいたらず、他のところでは下降を経験中だ。しかしアルゼンチン、ブラジル、あるいはチリでの大規模な諸決起、あるいは二〇一八年のスペインで数百万人の女性が決起したストライキ、のような高い段階がこれまでに生まれ、他方遅れて始まった諸国は、ベルギーやスイスを例に、二〇一九年にようやく初めてのストライキを作り上げた。

フェミサイド(女性殺人)の高い発生率で悪名高い国であるメキシコは二〇二〇年、ブルジョア報道の中で注目の焦点になっている。しかし現場のフェミニストはもっと慎重だ。行動の呼びかけには、サパティストが組織し、女性と少女に対する暴力に反対する今年の、特に三月八日の共同行動を呼びかけた、「第二回闘う女性国際集会」が加わった。

その呼びかけは次のように述べている。つまり「日、週、月がいつであれ、世界のどこであれ女性は、いつか攻撃を受け、連れ去られ、殺害されるのでは、とびくびくしていることをわれわれは知っている。われわれはすでに、闘う女性には安心がないと確認した。したがってわれわれは、われわれの声を聞き、読み、あるいは注目しているみなさんに、一つの共同行動を提案したい。それは今年のどんな日でも可能だろう。家父長制はわれわれへの虐待を止めない、ということをわれわれが知っているからだ。しかしわれわれは、世界中の闘う女性のこの共同行動を二〇二〇年三月八日に行うことを提案する」と。

ベルギーの運動は、二〇一九年のブリュッセルにおけるうまくいった最初のイニシアチブを受けて、この国の様々な部分における異なったリズムをも考慮しながら、さまざまな現場でのもっと多くのイベントを今めざしている。

フランスのフェミニストは、特に女性がどれほどひどく失うことになるかを示すために、また決起とフェミニストストライキの行動日として三月八日を押し上げるために、年金改革をめぐる運動の中でずっとキャンペーンを行ってきた。とはいえ主要労組は、年金に関する長期に続いたストライキの後を受けたストライキの呼びかけに腰が引けてきた。交通ストが原因で全国会議が計画できなかった期間が長かったことを条件に、全国レベルの協調は難しかった。とはいえ、重要な決起がさまざまな都市で予想されている。

女性決起の伝播ウィルスしのぐ


コロナウィルスのCovid―19の広がりと政府による諸制約を前にイタリアとスイスでは、メッセージを行き渡らせるためにフラッシュモッブスや他の戦術を利用して、さまざまな運動は分散的な諸行動を組織してきた。たとえばスイスの組織、ソリダリテSは次のように説明している。

つまり「今年二月二八日、連邦会議はコロナウィルスの広がりを抑えるために異例の保健衛生方策を取り、一〇〇〇人以上のあらゆるデモを禁じた。結果として、ストライキの活動家たちはこの大動員日に向けて、計画を再構築することを公表した。ソリダリテSはこの日曜日、さまざまな分散的行動に加わるつもりだ」。

再び南からのイニシアチブ


今日あらゆる者の任務は、時を通じて維持され、政治的、社会的現場で強力な主体となることを国際的に確実にする、一つの組織化され包括的な運動を構築することだ。この方向でのイニシアチブがあらためてラテンアメリカから現れている。一月九日から同一一日の間に、チリの三・八共闘が「闘う者たち」の多国民会議の呼びかけを発した。この会合から現れた呼びかけは次のように強調している。

つまり「下記に署名した諸団体は、労働者階級、先住民、黒人や農民の女性、同じく学生、レスビアン、トランス、また異性服愛好者が三月八日と同九日に発進させられた反乱と行動に向けた多くの呼びかけに加わるために結集した。われわれは、支配、搾取、占領、また強奪に対決して世界中に広がり続けているフェミニストの反乱にエネルギーを注ぎ続けるための、共通の戦略構築を求める」。

多様で包括的な国際的運動追求


その呼びかけは、次のように極右の脅威を照らし出している。「それは、マイノリティが集住しているコミュニティ、女性、レスビアン、トランスジェンダーの人々を敵視する憎悪に油を注いでいる」。そしてその極右に対し女性は、違いと経験の多様性を認める包括的な闘いとして今闘っているのだ。

それはさらに進んで、「中東やクルディスタンの女性がロジャヴァの歴史的な抵抗に続いて今行っているように」、女性の人権と自由に対する系統的な侵犯と軍事化に対して反乱するという女性の権利、また政治的暴力としての性的暴力を糾弾しつつ、暴力に対決して女性の肉体と土地を支配するという女性の権利、を例に挙げ、「人生のあらゆる側面をひっくり返すことになると思われる決起の広大な歩みの高まりを求めて」呼びかけを行っている。

それらはまた、「子どものケアの世界的危機、強奪の直接的形態としての債務の高まりと投獄、臨時職化、命の否認」をも指摘している。それらは、「反乱するよう、もうたくさんと言い、ノーと言うわれわれの力をはっきり声にするよう」叫びを上げ、「われわれがこれまであったこととしての同じダンス――悲惨……の管理に関し真に責任ある者たちを示し、われわれの多くの物語と傷跡を共に織り上げるいわば有罪宣告であるダンス――に調子を合わされた前進の道を示すよう」叫びを上げている。

アルゼンチン、ボリビア、チリ、エクアドル、メキシコ、ウルガイの諸団体、同じくクルディスタン、ブルガリア、フランス、またイタリアの他の人々、および米国の国際的な「女性ストライキ」が署名したこの呼びかけは、一つの重要性を示している。それは、あらゆる多様性の中にある全女性を含む一つの運動の建設に、および資本主義と家父長制のシステムを打倒する闘いの中で、これまで歴史的に女性に対し否認されてきた場を含むところで、全面的に自分の場を占めることに、この新しい運動が与えている重要性だ。

▼筆者は、フランスNPAメンバーであると共に、第四インターナショナル執行ビューローの一員、かつ「インターナショナルビューポイント」の編集者。また特に女性プログラムに責任を負っているアムステルダムのIIREスタッフでもある。

(「インターナショナルビューポイント」二〇二〇年三月号)



【第四インターナショナル声明】新型コロナウイルスのパンデミック:やつらの利益を守るのではなく、われわれの生命を守ろう!

rsayFO1R(画像はコロナ医療支援にイタリアに駆け付けたキューバ医師団。3月22日)








新型コロナウイルスのパンデミック:やつらの利益を守るのではなく、われわれの生命を守ろう!


第四インターナショナル執行ビューロー
二〇二〇年三月一七日


 コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)は、深刻な公衆衛生の問題であり、それによる被害は膨大なものとなるだろう。西ヨーロッパにおいてはすでに、医療システムは崩壊の瀬戸際にある。それがグローバル・サウスにまで拡大するならば、すでに非常に脆弱であった公衆衛生システムが四〇年に及ぶ新自由主義政策によって恐ろしいほどに壊されてきたために、数多くの死者がでるだろう。

 それはこの一世紀でのもっとも深刻なパンデミックとなっている。一九一八年から翌年にかけてのいわゆるスペイン風邪による死者数は、推計は困難だが膨大なものだった。その多くは青年層だった。その影響は、とりわけ第一次世界大戦の直後に深刻となった。新型コロナウイルスによるパンデミックの急速な拡大はとりわけ、資本主義グローバリゼーションや一般化した商品化、そして利潤法則の優先によってもたらされた国際貿易の発展という状況のもとで、新自由主義的秩序や危機の高まりによって引き起こされた人民の抵抗能力の減少によって説明することができる。

 この新型コロナウイルスは二〇一九年一一月はじめに中国で発見された。警告を発しようとした医師と科学者は当初、弾圧され、沈黙させられた。中国共産党がただちに対応していたとすれば、流行の危険は未然に防がれていたかもしれない。

 危険を認めない政策は、中国政府に限ったものではない。アメリカ合衆国のトランプは、この「外国のウイルス」をあざ笑っていた。ボルソナロは、すでにブラジルがパンデミックに巻き込まれていたのに、「サッカー試合を禁止するなんて過剰反応だ」と述べて、法律や医療当局の指示に反して、裁判所や議会に反対する(支持者たちの)デモに参加した。イギリスのボリス・ジョンソンは、はじめのうち「集団免疫」(ウイルスが広がるのを許容し、人口の約七〇%が感染するまで流行するのにまかせる)を提唱していた。彼はあとでこの冷淡で危険なアプローチを変更せざるをえなくなった。ベルギー首相のソフィア・ウィルメスは、長い間いかなる警告にも耳を貸さなかった。

 フランス大統領は、二〇二〇年一月に最初の症例が見られても、すぐには戦略的備蓄(防護服や防護用品……)を補充しなかった。

 東ヨーロッパのあまり感染者が出ていない国の政府は、西ヨーロッパにおける医療危機の教訓から学んでいない。ヨーロッパ連合(EU)は、深刻な打撃を受けているイタリアに対するもっとも基本的な連帯すら組織することができないでいる。イタリアは、国内ではマスクの生産さえしていないのに……。こうした遅れの主な理由は、政府が経済活動や製品輸送を危うくすることを望んでおらず、人々を守るためのリソースを最小限にしようとしていることにある。労働者に対する資本の攻撃としての緊縮政策を続けたいという要求と景気後退への不安の方が、人々の健康を守ることよりも強いのである。

 医学・科学研究がきわめて急速に進歩しているにもかかわらず、新型コロナウイルスの進化について予見するには早すぎる。たとえば、北半球に暖かな天候が到来すれば、ウイルスは弱まるのだろうか? その病気は収束するのだろうか?

 ウイルスは突然変異するのだろうか? もし変異するとすれば、毒性が強まるのだろうか、それとも弱まるのだろうか? 中国で発生した伝染病は、東西に拡散していった。それには、ヨーロッパ、イラン、アメリカ合衆国が含まれる。それらは条件の整っている国である。しかしながら、ウイルスは同様に南の諸国にも存在しており、そこでは、たとえば季節の次の変わり目に、北へと逆流する前に、感染が大きく増加する可能性がある。ワクチン開発には時間がかかるだろう。新型コロナウイルスによる病気が短期間のうちに自然に消え失せることを期待するとすれば、それは無責任である。

 ウイルスは非常にすばやく広がっている。実際に感染している人数と感染が判明した人数との割合は、日常的なスクリーニング検査がなされていないためよくわからない。しかし、その危険性ははっきりと立証されている。病気による致死率は、国によってさまざまである。感染者のうち、八〇%は軽症であり、二〇%が重症化し、そのなかで五%が重篤になり、約二%が死亡すると言われている。高齢者や持病を抱えた人だけに重症化する危険があるわけではない。流行が広がった地域では、もっと若い人々も集中治療室に入れられている。

 主だったメディアや政府は、年齢による致死率の違いに焦点を当てている。しかし、階級の違いに関心を寄せようとはしないし、コロナウイルスに起因する致死率が、収入や資産によって人々にどう影響するかにも注意を払おうとはしない。あなたが七〇歳でしかも貧しいとき、集中治療室での治療にアクセスできて、そこで治療を受けられる保証は、あなたが金持ちであるときとは同じではないのだ。

 人々の中には、新型コロナウイルスの抗体は存在していない。重症化したときの治療には、最先端の設備と訓練された有能な医療スタッフが必要である。こうしたものがなければ(あるいは病院のシステムがパンクすれば)、多くの治療可能な患者が亡くなっているし、これからも亡くなるだろう。

 それゆえ、新型コロナウイルスのパンデミックは、われわれの組織も含めて、すべての進歩的な活動家のネットワークがきわめて真剣に考慮すべきことなのである。流行が広がっているところではどこでも、流行を封じ込め、人々を守るための厳格な方法がとられなければならないし、このことが資本主義経済を機能させることよりも優先されなければならない。すべての国において、起こりうる流行の広がりに備え、政府に真の予防策をやらせるために、最初に被害を受けた国々の教訓を学ばなければならない。

強力な予防計画

 感染が広がったほとんどの国では、準備ができていなかったために、政府は不足分を何とかやりくりしたり、ときには開き直ったりしている。すでに予防計画があるところでは、それを強化しなければならないし、ないところでは予防計画を制定しなければならない。

 こうした計画では、全体としての医療システムの再構築や流行した場合に必要とされるリソースのすべてを動員することが準備されなければならない。とりわけ、すでに深刻な人手不足に陥っている医療サービス従事者をただちに増員する準備をしなければならない。

 病院は、重症者の治療に当たることで、感染と闘う中心的存在のひとつであるにもかかわらず、これまでずっと予算削減や弱体化、民営化にさらされてきた。公的・社会的コントロールのもとで、民間の治療サービス、薬品や医療用具の生産は徴発されなければならない。スペイン政府は、民間病院の病床を徴発する措置をとっている。

 防護服、水性アルコール消毒ジェル、検査キットといった戦略的備蓄は、医療労働者やその他の絶対に必要な労働者、そしてもっともリスクを抱えた人々に優先的に回されなければならない。

 予防計画はまた、医学的・科学的研究をも含んでいる。しかしながら、ここでもう一度言わなければならないのは、緊縮政策によって研究予算が減額ないしはカットされてきたことである。とりわけコロナウイルスの研究予算はそうである。この分野で仕事しているすべての民間企業は公的・社会的コントロールのもとで国営化されなければならない。

 韓国は、流行の動きを理解しできるだけ早く対処するためには、大規模なスクリーニング検査をおこなうことが有効であることを示した。しかしながら、予算の制約があるということは、こうした検査キットの備蓄がたとえあったとしても更新されてこなかったということを意味する。これによって劇的な状況が作り出されている。防護手段が不足しているという状況では、それは装備が不足している医療従事者やその家族のために優先的にとっておかなければならない。

 生活条件を保障するために、家賃、住宅ローン、公共料金の支払いは猶予されなければならない。住宅からの立ち退きをすべて中止させること、ホームレスの人々に必要な家具のある避難所を設けること、不健康な建物に人々を放置しておかないように空き家を徴発することが実施されなければならない。道路上で生活している人々を孤立させたり、どこかに閉じ込めたりしてはならない。

 資本主義経済における問題の蓄積によって準備され、パンデミックによって爆発する経済的・社会的危機の到来が、さらなる富の集中と社会的権利の破壊の機会であってはならない。むしろ、進歩的勢力は、リソースの再分配と公共財に基礎を置く解決策を求めなければならない。

 最後に、流行の急速な拡大を考えるならば、社会的接触や旅行を制限する極めて厳格な措置や経済活動の急激な縮小が実施されなければならなかった。それゆえ、計画の中には、貧困の拡大を防ぎ、医療危機の際に誰一人として貧困のまま放置させないために、人々への大規模な援助が含まれなければならない。これは、賃金労働者とフリーランスの労働者のいずれにも適用されなければならない。こうした規制にかかる費用は、利潤や企業収入、大金持ちへの増税によってまかなうべきである。

社会的自己組織化の大きな重要性

 われわれは、当局が人々の医療や社会保障を守るため、必要なすべての措置をとることを要求しなければならない。しかし、こうしたものだけに頼ることほど危険なことはない。社会構成者の独立した動員が不可欠である。

 労働運動は、すべての不必要な生産と輸送を中断させるために、どうしても必要な労働職場には最大限の安全衛生条件を確実に遵守させるために、全面的ないしは部分的な失業の場合にも労働者の収入と労働協約が確実に十分に維持されるために、闘わなければならない。すでに自動車のような不必要な生産をおこなっている労働職場を閉鎖することを要求して、ストライキが発生した。たとえば、バスク州のビクトリアにあるメルセデス・バンツ工場がそうである。他のところでは、たとえばフランスの病院やスコットランドのごみ収集の場において、どうして必要な労働に従事する労働者が、より安全な条件を要求して行動を起こした。

 地域組織は、多くのレベルにおいて不可欠な役割を担っている。それらは人々が置かれている孤立を打ち破るのを助ける。とりわけ自宅隔離の期間中に家事や子育てというもっと重い束縛を引き受けざるをえない女性の孤立を打ち破るのを助ける。地域組織は、レイシズムや外国人嫌悪、LGBT+嫌悪と闘うことによって、不安定な、移民の、登録されていない、差別されているマイノリティが、受ける資格のある保護から確実に排除されないようにすることができる。地域組織は、自宅隔離によって暴力を振るう配偶者と一緒に過ごすことになり、自宅が死に至る刑務所になってしまう女性を助けることができる。地域組織は、「社会的距離をとる」という日常的な行為が確実に尊重されるようにすることができる。

 これまでなかったことだが、近隣地区やマンションにある草の根組織が、援助を申し出る人々と助けを求める人々(高齢者、障がい者、隔離中の人)とをつなげるという例がさまざまな国、たとえばイギリス・オランダ・フランスにおいて多く見られる。イタリアでは、実際の援助とならんで、バルコニーからみんなで歌うことを通じて、コミュニティが一緒になって孤立を打ち破り、連帯を示そうとしてきた。

社会運動は、どんな手段が効果的で不可欠なものであり、国際的な交流を励ますのかを知るために、独立した医学的・科学的知見を信頼できなければならない。医師と研究者は、社会運動にかかわらなければならない。

 最後に、社会運動の自己活動は欠くことのできない民主的保証である。大国の専制主義は、効率の名のもとで医療危機の際に強化される可能性がある。可能なもっとも広範で単一の動員によって、この支配的な傾向に反対しなければならない。

資本主義社会の世界的危機

 パンデミックは、社会にとっての重要な試金石を示している。北イタリアのロンバルディの状況は、支配的秩序に何が起こっているのかを端的に示している。ロンバルディはヨーロッパでもっとも豊かな地域の一つであり、もっとも充実した病院システムの一つを有している。にもかかわらず、この病院システムは新自由主義的政策によって弱体化させられてきた。病院は、重症患者が殺到することで身動きが取れなくなり、麻酔鎮痛集中治療学会が、患者を選別して、生存する望みのある患者だけを治療し、そのほかの患者は死ぬに任せるという指示を出すほどまでになっている。

 これは、事故のあとに、救急労働者が多数の犠牲者の中から最初に治療するものを決めなければならないときのような一過性の状況ではなく、もし政策が別のものであったならば避けられたかもしれない制度的失敗なのである。平時において、必要なものが不足することによって、全員を助けるのを放棄する戦争医学が必要となっているのだ。これが、世界でもっとも経済的に豊かで、医療が発達した地域の一つで起こっていることである。そして、明日のヨーロッパのどこででも起こりうるのだ。

資本主義支配秩序への明確な非難

 問題は、新型コロナウイルスのパンデミックが、明日にでも「正常化する」のかどうかではなく、どれだけの死者を出して、どれだけの社会的激変の犠牲を払ってなのかということである。というのは、われわれは大きな流行(SARS、AIDS、新型インフルエンザ、ジカ熱、エボラ出血熱……)が繰り返し発生する時代に生きているからである。慢性的な医療危機の状態は今日、世界的なエコロジー危機(地球温暖化はそのひとつの側面)、永続的戦争状態、新自由主義的グローバリゼーションの不安定さ、資本の「金融化」、債務危機、基本的社会構造の不安定と脆弱さの増加、ますます専制的になる体制の増加、差別、レイシズム、外国人嫌悪などと結びついている。

 医療危機と闘うことは、多国籍企業や製薬業界ロビー、工業的農業と具体的に闘うことを必要とする。工業的農業は、均衡のとれたエコシステムを可能とする小農民のアグロ・エコロジーやアグロフォレストリーに敵対しているからである。それは、都市改革において、不健康なメガシティに終止符を打つことを必要とする。一般的には、利潤論理に無料の治療を対置する。いかなる病人も社会的地位にかかわらず無料で治療されなければならない。われわれの生命はやつらの利益なんかよりも価値があるのだ。

 エコ社会主義は、資本主義社会のこの世界的危機に対するオルタナティブを表現する。医療危機への対応は、このオルタナティブを実現するための他の分野の闘いと一体となった動員であるべきである。そのようにエコ社会主義者、フェミニスト、労働者の闘いを一つにすることは、その目標として、われわれや地球を殺しつつある資本主義システムの廃棄と新たな社会の建設を掲げなければならない。


(「インターナショナル・ビューポイント」三月一八日)

【転載】石井紀子さんの急逝を悼む

石井紀子山口幸夫さんの「石井紀子さんの急逝を悼む」を三里塚大地共有運動の会のBLOGから紹介します。
 https://kyouyu-undou-no-kai.blogspot.com/2020/03/blog-post.html

 写真は、2020年1月12日、三里塚芝山連合空港反対同盟(代表世話人・柳川秀夫)主催の「2020反対同盟旗開き」(横堀農業研修センター)で発言する石井紀子さん。


石井紀子さんの急逝を悼む


信じたくないことだが、三里塚の石井紀子さんが3月11日の夕刻、帰宅途中に交通事故で亡くなった。1952年12月18日生まれ。67歳と2カ月の人生を、差別と闘い、三里塚を闘い、全力で駆け抜けていった。

全共闘運動が盛んだった高校生時代に社会主義研究会に入り、70年安保、制服廃止、卒業式粉砕などをたたかって71年に法政大学に入学。そこは学生運動のメッカだった。田中美津のウーマン・リブ運動に共鳴し、学内に女解放学生戦線をつくって活動した。

三里塚には71年の第2次強制代執行阻止闘争に労学連を通して、リブの人たちと一緒に参加。現地に行ってみて、三里塚は男の闘争でしかないとリブの人たちは労学連と分れ三里塚を放棄したが、紀子さんはその理屈に納得せず、独りで三里塚に通った。

学内で議論に明け暮れている男たちとは違う魅力が青年行動隊にはあり、青行のひとりの石井恒司さんと75年に結婚。反対同盟の農家の嫁という立場になって、「百姓を一人前になるには10年かかる」、「この仕事は二、三年たたないと出来ないから」などと、さんざんに苦労する。

わたしが紀子さんと出会ったのは76年にワンパック野菜の産直運動が始まってからである。小泉英政さんが、ベトナム行き戦車を阻止しようとする相模原の「ただの市民が戦車を止める」会と「くらしをつくる会」の運動に共感して、始めたのがこの運動である。誤解を恐れずに言うと、小泉さんは三里塚闘争の行く末を考え、展望がなかった青行に希望を抱かせ、ワンパックという運動を始めたのである。石井恒司・紀子さんはワンパック野菜運動に最初に共鳴した夫婦である。

この運動に現地で加わったのは、小泉美代、島寛征・ひさ子、石井新二・順子、小川直克・篤子、山口義人、染谷かつ、田中富美、下野啓子、守田力、外山哲さんらである。

97年、小泉さん夫婦はワンパックを離れ循環農場を始めたが、ワンパックという名前は残った。その後、ワンパック農家も入れ替わりがあり、恒司さんと離婚したのち、紀子さんはワンパックに野菜を出荷し続けながら、三里塚の情報を発信し、独自の紀子パックを始めていた。

ワンパック野菜に初めから熱心に取り組んでこられた近藤悠子さん(元婦人民主クラブ代表)が去年11月に亡くなった。近藤さんを尊敬していた紀子さんは、お通夜の晩と翌日のお葬式に三里塚からかけつけてくれた。たいへん思いやりのあるひとだった。

ワンパック野菜に入ってくるチラシ「本日の野菜」には生産者の声が交代で載る。紀子さんが書いた最後の記事は1月29日付で、「冬の畑」と題して、三里塚の四季の畑の様子とその中の暮らしを生き生きとつづり、「大好きな冬の畑に今日も出かけていける幸せな日々です」と結んでいる。その幸せの日々は終わってしまった。謹んでご冥福を祈る。
                           
(山口幸夫、2020年
3月)

報告:被災者・被災地切り捨ての『復興五輪』反対!3・11を反天皇制・反原発 の日に!

3.11② 3月11日、星陵会館で「被災者・被災地切り捨ての『復興五輪』反対!3・11を反天皇制・反原発の日に!」(主催:3・11行動実行委)が行われ、61人が参加した。

 安倍政権は、この日、国立劇場で「東日本大震災九周年追悼式」を秋篠宮夫婦、政府関係などの出席で実施する予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ必要があると判断して中止にし、追悼式に代わる献花式を首相官邸で行った。

安倍首相は、談話で「防災・減災、国土強靱化を進め、災害に強い故郷を創り上げてまいります」と強調し、原発事故を引き起こした国家責任・原発企業責任に触れることもなく、過去のものとして葬り去ろうという狙いだ。すでに政府主催の「追悼式」は、来年で10周年となり終えることを明らかにしている。

 秋篠宮の式典出席は4回目であり、皇嗣として初めての出席の予定だった。秋篠宮の出席は、「天皇代替わり」キャンペーンの延長のうえで式典を天皇制賛美の一環として作り上げ、被災者に「寄り添う」ポーズをとりながら原発事故責任を覆い隠し、天皇制による民衆統合の役割を振舞うことでしかない。

 式典は中止になったが、実行委はこのような政治的意図を許さず、「政府・東電・電力独占の責任を隠ぺいし、原発を推進する『皇族出席の追悼式典』・一斉黙祷反対!」を掲げ、集会とデモを行った。

 集会は基調報告から始まり、以下のポイントを提起した。

 ①「復興」と原発政策推進に「国民」を向かわせる政治的意図のもとに行われる儀式。原発事故責任への抗議や怒りを封じ込めるための「追悼」動員であり、それに従わないものの排除、切り捨てだ。

 ②東電は住民・労働者の健康被害の責任をいっさい拒否。福島第一原発の労働者は、溶融燃料取り出しなど高線量下での危険な作業が予定され、労働者被ばくが深刻化している。

 ③聖火リレーのスタートを「復興のシンボル」として原発事故の対応拠点としていた「Jビレッジ」とし、オリンピックで野球とソフトボールの一部試合を福島市でおこない「復興」をアピールしようとしている。

 ④「象徴としての務め」という天皇の「非政治的」政治の拡大と権力性の強大化は、象徴天皇制を超えた元首性を天皇に付与し、戦争国家の要素となった。

 ⑤オリンピック・パラリンピックで天皇が、「国家元首」として世界に向かっ
て開会宣言を行う。それは原発事故責任追及ではなく、「国難」と「復興」に立ち向かう「国民」の一体性をつくりだす国民の融和(「復興五輪」)と、天皇制と一体となったナショナリズム=国威発揚だ。

 鵜飼哲さん(一橋大学教員)は、「福島原発事故隠しの東京オリンピック・パラリンピックと天皇制」というテーマで講演した。

 鵜飼さんは、①2013年9月、五輪招致決定②「復興五輪」と天皇制③惨事便乗型資本主義と祝賀資本主義について批判。

 さらにグリーンウォッシング(欺瞞的な環境配慮)を取り上げ、「五輪組織委
員会は、『環境五輪』の例として新国立競技場には木がたくさん使われている。だが、熱帯雨林を破壊、多摩川河口の橋建設で干潟が減少、しじみの減少へと追い込んだ。外国人記者から『グリーンウォッシング』だと批判された。コロナウィルス等、周期的に発生する感染症は、世界的な森林破壊による野生動物の生育域の縮小が構造的な原因だと言う研究者もいる。『復興五輪』と称して、その一方で福島原発汚染水の海洋投棄強行が迫っている」と批判した。

 また、「国内の少数民族・外国人とオリンピック」について「アイヌの『民族共生象徴空間』は、先住権を認めず、遺骨を返還せず、『文化』のみ多文化主義のアリバイでしかない。沖縄では『聖火』は消失した首里城跡から出発だ。国民統合の強化による反基地運動の切り崩しをねらっている」ことなどを指摘し、東京五輪の反動性を明らかにした。

 池田実さん(元原発労働者)は、「重層的下請け構造と原発労働の実態」について報告。

 「浪江町の除染作業では、工期が迫ってくると下請け会社から『草だけ刈ればいい』とせかされ、いいかげんだった。イチエフ(第一原発)構内の作業に移った。APD(アラーム付線量計)が鳴っても、すぐに慣れてしまう。『白血病など、年間五ミリSv以上が認定基準』とはじめに講習をうけるが、これまでに認定された人はわずか。自分は2014年2月から15年5月まで働いた。累積線量は7・25ミリSvだった。白血病の5ミリSvを上回っている。今も不安を抱えている」。

 「福島第一原発だけでも10万人近くの労働者が入っている。除染労働、中間貯蔵施設、警備も含めて様々な関連労働者がいて被ばく者が増え続けている。ガン、白血病になった人、過労死で亡くなった人もいる。しかし、その補償はまったくない。労災申請もあるが、時間とカネがかり、申請しない労働者が多い、ほとんど泣き寝入りだ。政府・東京電力は、無視し続けている。福島原発労災認定された人の損害賠償裁判(あらかぶ裁判)を支援している。東電は、『放射能の因果関係が認められない。喫煙、食生活との因果関係も考えられる』と居直り続けている。被害者切り捨てを許さない。原発関連労働者ユニオンを作りました。労働者の命と健康、福利厚生、労働条件向上を求めていきたい。今後も被ばく労働者への支援をお願いしたい」と訴えた。

 連帯アピールが「3・11から10年目 原発被ばく隠しを許さない 首都圏行動」、「オリンピック災害」おことわり・連絡会、4・28━29行動実行委員会、ピリカ全国実・関東グループから行われた。

 集会後、デモに移り、千代田区一帯にわたって「追悼式典・一斉黙祷反対!復興五輪反対!3・11を反天皇制・反原発の日に!」などのシュプレヒコールを響かせた。

(Y)
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