新型コロナウイルスの感染拡大が続いているなか日本武道館では、例年の規模を縮小した全国戦没者追悼式を行った。天皇徳仁は、「おことば」において「過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対して」追悼するなどと述べた。
前天皇明仁が構築したアジア・太平洋などの民衆に謝罪することもなく、天皇制の植民地支配の犯罪、戦争・戦後責任から逃亡し続け、欺瞞的な「平和主義」天皇像を演じていくことを表明した。また、皇居にこもり続け、沈黙してきたが新型コロナウイルス感染症の感染拡大について触れ、「新たな苦難に直面していますが、私たち皆が手を共に携えて、この困難な状況を乗り越え」ていこうと呼びかけた。
これは天皇制民衆統合装置を発動させ、民衆を国家へとからめとろうとする任務の再確認のためにたち振る舞った。後に行う侵略戦争の居直り、戦争国家化と改憲に向けた「安倍首相式辞」効果を高めていくことまでもやってのけた。天皇・徳仁は、天皇代替わりプロセスにおいて「安倍との連携プレー」の実積のうえで全国戦没者追悼式という舞台で繰り広げたのである。新たな天皇像の押し出しの危険性に注意しなければならいない。
安倍首相は、「式辞」において第二世界大戦での日本帝国主義の侵略戦争の犯罪、戦争・戦後責任を完璧に捨て去り、「わが国は、積極的平和主義の旗の下、国際社会と手を携えながら、世界が直面しているさまざまな課題の解決に、これまで以上に役割を果たす決意です」と述べ、グローバル派兵国家建設に向けた憲法九条改悪、東京五輪を実現していくと居直った。同時に「新型コロナウイルス感染症を乗り越え」るために国内治安統制を強化していくために緊急事態条項も含めた改憲を強行していくことを獲得目標にしていることは明らかだ。
小泉環境相、高市総務相、萩生田文科相、衛藤沖縄北方担当相が靖国参拝を強行したが、閣僚の参拝は四年ぶりだ。安倍は玉串料奉納で中国と韓国との外交ハレーションの緩和でごまかした。つまり、安倍は、この閣僚らの靖国参拝とセットで居直り「式辞」を準備していたと言わざるをえない。この全体像の意図を示したのが、この日、靖国神社で日本会議と「英霊にこたえる会」が開催した決起集会だ。集会では、「『えせ平和主義』を掲げた憲法の下、憲法を改正し軍隊保持が必要」(百地章)、「改憲によって緊急事態条項の創設、自衛隊を定義することが必要だ」(寺島泰三)を確認している。
このように天皇徳仁の「おことば」、安倍の「式辞」、閣僚の靖国参拝、天皇主義右翼の決起集会などが連動し合いながらコロナ禍における右派勢力の意図を明らかにしたのである。
実行委は、このような天皇徳仁、安倍政権、天皇主義右翼らの野望を暴き出し、集会と抗議行動を行った。
集会は、主催者あいさつに続いて「朝鮮半島と日本に非核・平和の確立を」市民連帯行動、「女たちの戦争と平和資料館」(Wam)、オリンピック災害おことわり連絡会、安倍靖国参拝違憲訴訟の会、大軍拡と基地強化にNO!アクション2020から運動の取り組み報告と反天皇・反ヤスクニに向けたアピールが行われた。
最後に集会宣言が読み上げられ、「敗戦七五年の今年、この8・15という日の意味を、改めて確認したい。天皇制国家は延命し、式典や『靖国』参拝を許し続けている日本社会は猛反省しなくてはならない。日本政府がやるべきことは、侵略戦争・植民地支配の被害者へのまっとうな謝罪と賠償である。そして反省を込めて天皇制を廃止することだ」と参加者全体で採択した。
集会後、デモに移り、九段下十字路から靖国神社に向けて「全国戦没者追悼式反対!戦争賛美の靖国神社はいらない!戦争国家はつくらせない!憲法改悪ゆるさない」などのシュプレヒコールを繰り返した。デモは、公安政治警察・機動隊の重弾圧体制、天皇主義街宣右翼と「在日特権を許さない市民の会」などの挑発を許さず、断固貫徹された。
(Y)