虹とモンスーン

アジア連帯講座のBLOG

報告:国家による「慰霊・追悼」を許すな!8・15反「靖国」行動

配信:反靖国デモ (1) 8月15日、国家による「慰霊・追悼」を許すな!8・15反「靖国」行動は、在日本韓国YMCAでの集会とヤスクニ神社に向けた抗議デモ行い、150人が参加した。

 新型コロナウイルスの感染拡大が続いているなか日本武道館では、例年の規模を縮小した全国戦没者追悼式を行った。天皇徳仁は、「おことば」において「過去を顧み、深い反省の上に立って、再び戦争の惨禍が繰り返されぬことを切に願い、戦陣に散り戦禍に倒れた人々に対して」追悼するなどと述べた。

前天皇明仁
が構築したアジア・太平洋などの民衆に謝罪することもなく、天皇制の植民地支配の犯罪、戦争・戦後責任から逃亡し続け、欺瞞的な「平和主義」天皇像を演じていくことを表明した。また、皇居にこもり続け、沈黙してきたが新型コロナウイルス感染症の感染拡大について触れ、「新たな苦難に直面していますが、私たち皆が手を共に携えて、この困難な状況を乗り越え」ていこうと呼びかけた。

れは天皇制民衆統合装置を発動させ、民衆を国家へとからめとろうとする任務の再確認のためにたち振る舞った。後に行う侵略戦争の居直り、戦争国家化と改憲に向けた「安倍首相式辞」効果を高めていくことまでもやってのけた。天皇・徳仁は、天皇代替わりプロセスにおいて「安倍との連携プレー」の実積のうえで全国戦没者追悼式という舞台で繰り広げたのである。新たな天皇像の押し出しの危険性に注意しなければならいない。

 安倍首相は、「式辞」において第二世界大戦での日本帝国主義の侵略戦争の犯罪、戦争・戦後責任を完璧に捨て去り、「わが国は、積極的平和主義の旗の下、国際社会と手を携えながら、世界が直面しているさまざまな課題の解決に、これまで以上に役割を果たす決意です」と述べ、グローバル派兵国家建設に向けた憲法九条改悪、東京五輪を実現していくと居直った。同時に「新型コロナウイルス感染症を乗り越え」るために国内治安統制を強化していくために緊急事態条項も含めた改憲を強行していくことを獲得目標にしていることは明らかだ。

 小泉環境相、高市総務相、萩生田文科相、衛藤沖縄北方担当相が靖国参拝を強
行したが、閣僚の参拝は四年ぶりだ。安倍は玉串料奉納で中国と韓国との外交ハレーションの緩和でごまかした。つまり、安倍は、この閣僚らの靖国参拝とセットで居直り「式辞」を準備していたと言わざるをえない。この全体像の意図を示したのが、この日、靖国神社で日本会議と「英霊にこたえる会」が開催した決起集会だ。集会では、「『えせ平和主義』を掲げた憲法の下、憲法を改正し軍隊保持が必要」(百地章)、「改憲によって緊急事態条項の創設、自衛隊を定義することが必要だ」(寺島泰三)を確認している。

 このように天皇徳仁の「おことば」、安倍の「式辞」、閣僚の靖国参拝、天皇主義右翼の決起集会などが連動し合いながらコロナ禍における右派勢力の意図を明らかにしたのである。

 実行委は、このような天皇徳仁、安倍政権、天皇主義右翼らの野望を暴き出し、集会と抗議行動を行った。

 集会は、主催者あいさつに続いて「朝鮮半島と日本に非核・平和の確立を」市民連帯行動、「女たちの戦争と平和資料館」(Wam)、オリンピック災害おことわり連絡会、安倍靖国参拝違憲訴訟の会、大軍拡と基地強化にNO!アクション2020から運動の取り組み報告と反天皇・反ヤスクニに向けたアピールが行われた。

 最後に集会宣言が読み上げられ、「敗戦七五年の今年、この8・15という日の意味を、改めて確認したい。天皇制国家は延命し、式典や『靖国』参拝を許し続けている日本社会は猛反省しなくてはならない。日本政府がやるべきことは、侵略戦争・植民地支配の被害者へのまっとうな謝罪と賠償である。そして反省を込めて天皇制を廃止することだ」と参加者全体で採択した。

 集会後、デモに移り、九段下十字路から靖国神社に向けて「全国戦没者追悼式反対!戦争賛美の靖国神社はいらない!戦争国家はつくらせない!憲法改悪ゆるさない」などのシュプレヒコールを繰り返した。デモは、公安政治警察・機動隊の重弾圧体制、天皇主義街宣右翼と「在日特権を許さない市民の会」などの挑発を許さず、断固貫徹された。

(Y)

報告 香港の自由と民主主義のために日本政府の対応を求める8.12国会正門前行動

IMG_3193緊急行動国会前に250人

#香港を守れ

#香港の自由と民主主義のために日本政府の対応を求めます

香港の自由と民主主義のために日本政府の対応を求めるStand With Hong Kong 東京実行委員会



 八月一〇日、香港警察は民主活動家の周庭さんや民主派の香港紙「蘋果(ひんか)日報」を創業した黎智英さんら一〇人を香港国家安全維持法(国安法)違反容疑で逮捕した。香港警察は八月一一日未明、逮捕した周さんらに「外国勢力と結託して国家の安全に危害を加えた」として国安法二九条を適用したと発表した。二九条の最高刑は無期懲役。

 一〇日に逮捕された周庭さんが一一日夜、保釈された。保釈後に周さんは地元メディアなどに対して「逮捕は明らかに政治的な弾圧だ。今まで四回逮捕されたが、今回が一番怖かった。香港の社会運動に参加して香港の民主と自由のために闘う一員として後悔はしていない」と話した。外国勢力と結託し、国家の安全に危害を加えた容疑がかけられているが、周さんは「七月から現在までにSNSを通して外国勢力と結託したと言われたが、具体的な内容は言われなかった」と話した。また、同じ容疑で一〇日に逮捕された香港紙「蘋果日報」などの創業者・黎智英氏も保釈された。

 国安法違反の裁判は、香港の行政長官が特別に指定した裁判官によって審理されるという、とんでもない不公正な審理システムになっている。

 このような香港民主派活動家への厳しい弾圧が行われているのに対して、昨年六月一三日、渋谷駅前で香港応援デモを開催した元山仁士郎さんら(香港の自由と民主主義のために日本政府の対応を求めるStand With Hong Kong 東京実行委員会)が緊急に呼びかけて、八月一二日午後六時から国会正門前行動が行われ二五〇人が参加した。

 緊急行動を呼びかけた元山仁士郎さん(辺野古県民投票のための条例運動代表を務めた)が行動の主旨を述べ、日本政府の対応を求める声明文を発表した(別掲載)。

 「六月三〇日、香港で『香港国家安全維持法』(国安法)が施行された。同法施行後、香港において自由や民主主義を求める市民は、香港当局によりますます抑圧されている。国安法は、逮捕・勾留に加え、最高刑は終身刑という重い刑罰が課されるものだ。同法違反の容疑で、これまでに数十人が逮捕・勾留されているとみられる」。

 「国安法による香港市民の不当逮捕、香港の自治権ならびに言論・報道の自由の侵害は、中国政府の言う『内政干渉』にとどまらず、重大な国際問題だ。私たちは、香港での市民的・政治的自由を求める個人と運動に対する香港当局の不当な取り締まり、人権抑圧を可能にする『香港国家安全維持法』の撤回を求める」。

 次に五野井郁夫さん(高千穂大学教授)が次のように訴えた。

 「民主化支援のレクチャーを行っている。国安法は悪質だ。同じような法律はマカオにもあるが、マカオに限るとあるが、香港の場合はその限定がない。香港のみならずわれわれも含む自由や民主主義を求める全員が対象になっている。しかもどのような内容かの明記がないまま、最高刑は無期懲役だ。連帯を差し伸べていかなければならない」。

 「アラブの春、台湾のひまわり運動、韓国ローソク運動には中心・リーダーがいなかった。ソーシャルメディアを通じて、自分で考えて行動していた。民主主義のない国ではそうするしかなかった。周庭さんはリーダーではなくスポークスパースンだ。厳しい弾圧がかけられている。生き残ってほしい。ハッシュタグを使って広げる。そうすれば世界を変えていくことができる。行動しよう」。

 伯川星矢さん(ライター、香港人・日本人を親にもつ)が「香港人は恐怖をも
ち、普通の生活ができない。普通のデモ参加者が逮捕されている。断じて許せない。カナダやオーストラリアは香港人を受け入れている。日本政府に要請したい」と話した。

 参加した人たちから香港民主化運動に対する弾圧反対、連帯する発言が次々と行われた。

 労働者支援ネットワーク活動をしてきた稲垣豊さんは「一九九七年、香港はイギリスの植民地支配から返還され一国二制度が行われることになった。この制度は、自由はあるが民主はないものだった。毎年行われてきた返還された記念日七月一日のデモがコロナを理由に許可されなかった。返還後二三年間自由がつぶされてきた。香港の友人たちはこの東京の行動を喜んでいる。香港の自由・民主主義を守り、アジアに広げていこう」と、この間香港連帯行動を行ってきた仲間たちが横断幕を広げるなかで発言した。

 参加者の発言。「イギリスはイギリスのパスポートを持っている香港人にイギリスに住める法案を出した。日本は何ら具体的な行動はとっていない。人権意識が欠けている。香港にデモの時行った。希望を持ってデモをしていた。あきらめたら闘いは終わってしまう。関心を持ち、持続すること。ずっと応援していく」。

 別の発言者。「ツイッターを見てきた。日本政府が何もしないことに疑問を持ってきた。生きやすい世の中を作るための動きが続いていけばいい。このような意見を言う場が必要だ」。

 参加した香港人からの発言。「香港とつながる国際戦線が重要だ。長い時間が必要だ。東欧の民主化はあきらめないことだった。香港というとジャッキ―・チェンというように、香港といえば周庭さんを思い浮かべるようにしたい」。

 小雨の降る中、「香港を守れ、自由を守れ、人権を守れ、命を守れ、民主主義
を守れ、ノーパサラン(奴らを通すな)」とシュプレヒコールをあげ、香港への連帯を熱く表明した。(M)



声明文

#StandWithHongKong #香港の自由と民主主義のために日本政府の対応を求めます


 二〇二〇年六月三〇日、「香港国家安全維持法」が施行されました。同法の狙いは、香港での"反政府的"な動きを取り締まることにあると言われています。

 「香港国家安全維持法」は一九九七年の香港返還以降、中国政府が国際的に約
束してきた「一国二制度」の崩壊であるとも指摘されています。これは、香港の社会や経済の発展の基盤ともなってきた「高度な自治」や表現の自由、集会の自由といった基本的人権の一部をも脅かすおそれがあり、香港市民は「香港が香港でなくなってしまう」という強い危機感を持っています。

 実際、「香港国家安全維持法」の施行直後に行われた香港での抗議活動では、三五〇人が逮捕され、香港警察はそのうち一〇人に同法を適用したとしています。また、このことを受け、香港民主派政治団体「デモシスト」は同法の適用を恐れ、解散を宣言しました。このように「香港国家安全維持法」によって、すでに香港での民主的な政治活動は抑圧されており、今後、さらに厳しい状況となることが予想されます。

 他方、中国政府は各国からの批判に対して、「内政干渉」を理由に反発しています。しかし、香港におけるこれまでの一部の警察による暴力的な取り締まり、そして、それに対して一定の法的根拠を与えるような今回の法施行を見れば、「香港国家安全維持法」は、もはや内政を超えた人権にかかわる問題です。中国政府が引き続き香港市民の人権を侵害するようであれば、国際社会全体で、決して武力にはよらない形で対応すべき問題だと私たちは考えます。

 香港国家安全維持法は、人権、自由、自治、民主主義といった私たちが共有すべき基本的価値に反しています。よって、私たちは同法に強く反対するとともに、香港の人々の人権と自由が確実に守られ、香港における自治と民主主義がより発展することを求めます。

 以上の経緯を踏まえ、私たちは以下六つを日本政府に要求します。

 ⑴  香港市民を含む包括的な人権侵害に対する調査の実施

*本声明は香港について述べていますが、私たちは香港以外にも、日本が実施すべきと考えられる世界の人権侵害に関する調査が行われるべきであり、その結果に応じて、日本として取り得る施策を提示すべきであると考えています。

 ⑵ 就労ビザ、ワーキングホリデービザなどの取得基準の緩和

 ⑶ 在留中の香港市民のビザの延長

 ⑷ 入国後一四日間の隔離とPCR検査を条件に、深刻な人権侵害が認められるなど緊急避難が必要な香港市民に対する特別在留許可の付与

 ⑸ 社会活動に参加し実刑判決を受けた場合、これを政治罪とみなし、入管法に基づき日本への上陸を許可する

 ⑹ 新たに日本でビジネスを行い、香港市民を積極的に雇用する企業に対する
優遇措置の適用

 また、民間企業ならびに団体、日本に住む方々にも、以下の協力を求めます。
 

⑴ 積極的な香港市民の雇用

*民主化運動への参加歴などによって就職差別を行わないようにする。

⑵ 香港への関心の継続、可能な限りの行動

香港への関心を継続し、日本からできることを共に考え、それを可能な限り行動に移す。

報告:8.8平和の灯を! ヤスクニの闇へ キャンドル行動

配信:ヤスクニ (1) 8月8日、平和の灯を! ヤスクニの闇へ キャンドル行動実行委員会は、在日本韓国YMCAで「2020 コロナ、オリンピックとヤスクニ」をテーマに集会を行った。

 実行委は、当時の小泉首相の靖国参拝強行(2006年8月15日)を許さず、東アジア四地域(日本、沖縄、台湾、韓国)の市民による靖国神社反対共同行動の積み上げのもとに 「①靖国神社の歴史認識が、再び戦争のできる国へと右旋回する日本の現状と直結している。 ②韓国・台湾・沖縄・日本の遺族に断りもなく合祀していることは許さない。 ③首相の靖国参拝は憲法が定めた政教分離原則に違反する。 これらの点を「ヤスクニの闇」として切り結ぶ共同行動」と確認し、毎年八月に集会と靖国神社への抗議デモを取り組んできた。今年で15回目となる。

 新型コロナウイルス感染症の世界的大流行のなかで安倍政権は、「非常事態」・「緊急事態」を宣言し、東京オリンピック七月開催を断念したが来年7月の開催に固執し、国威発揚と改憲を目論んでいる。実行委は、このような「挙国一致」体制や「惨事便乗型改憲」に異議を申し立て、その背景にあるヤスクニ思想を暴き出していった。今年は、コロナ感染拡大を予防するため、パネリスト、台湾と韓国の仲間たちなどはオンライン参加、会場参加者は事前予約、キャンドルデモは中止にした。

 今村嗣夫さん(実行委共同代表)から主催者あいさつが行われ、「(新型コロナ)によって治療に当たった医師や看護師の子どもが保育園への通園自粛を求められ、私的取締りを強行する『自粛警察』など、巷にひろがるコロナ差別を放置するなら、さらなるマイノリティの人権侵害を招き、『緊急事態条項』の必要性が強調され、一億一心をめざす『9条改正』の動きに連なることを見抜かなければならない」と訴えた。

 パネルディスカッションは、5人のパネリストから「コロナ、オリンピックとヤスクニ」をテーマに問題提起が行われた。

 高橋哲哉さん(東京大学大学院教授)は、「コロナ感染拡大に対して当初、安倍政権は危機感を持っていなかった。オリンピックが延期となったとたん小池都知事は、都知事選キャンペーンの前段としてメディアに連日登場し、コロナ危機を叫びはじめた。2人とも人命よりも政治的思惑を優先した。『戦後』七五年、安倍政権の『植民地支配』問題を抹消していく傾向を強めている。まさにヤスクニ思想とつながるところだ。これらを批判していく人々をいかに増やしていくかが問われている」と強調した。

 米須清真さん(新しい提案実行委員会メンバー/沖縄の基地問題を考える小金井の会代表)は、小金井市議会で意見書「辺野古新基地建設の中止と普天間基地代替施設について国民的議論を深め、民主主義および憲法に基づき公正に解決することを求める」(2018年12月6日)を採択したことを報告し、「辺野古新基地は決定プロセスにおける差別であり、憲法14条(法の下の平等)違反などしている。普天間基地の代替施設については、民主主義の原則および憲法に基づき公正な決着が求められている」と述べた。

 武藤類子さん(福島原発告訴団団長)は、「原子力緊急事態宣言下の『復興オリンピック』の現実」というテーマで次のように問題提起した。

 「原発事故からもうすぐ10年を迎える。2月29日と3月1日に、原発事故被害者団
体連絡会と脱原発福島ネットワークの共催で『福島はオリンピックどごでねぇ』というアクションを行った。3月24日にようやくオリンピックは延期となったが、このオリンピック騒ぎがコロナの深刻さを覆い隠してしまった。コロナ感染拡大は感染者への差別など原発事故の時ととてもよく似ている」。

 「原発事故の誠実な賠償もせず、事故の後始末もできないまま、何がオリンピックなのだという怒りが湧きます。来年のオリンピックはどうなるのでしょうか。やはり高い線量の中を中学生などが聖火ランナーとして走るのでしょうか。福島県民としてささやかでも出来うることをこれからも頑張ろうと思います」。

 金東椿さん(韓国・聖公会大学教授)は、「日帝植民地統治と朝鮮戦争」をテーマに①1945年8・15以後における米軍政の現状と政策②南韓の支配体制と植民地遺産③朝鮮戦争期の虐殺について提起し、「米国の冷戦戦略、それ自体がすでに冷戦体制の構築過程での血腥い虐殺に備えていた」と批判した。

 呉栄元さん(台湾・労働党代表)は、「台湾における『白色テロル』と日本植民地支配」というテーマから「五〇年代の白色テロル」の実態、犠牲者、歴史的背景などを報告した。

 さらに、「米国のポンペオ国務長官が中国を敵視する『新冷戦』演説を行い、世界の人々を不安に陥れている。米国内の新型コロナの流行と深刻化する国内経済の恐慌、人種間の階級間の矛盾を深めている国内危機を、戦争を求めて地域紛争の危機を煽ることで脱しようとするものだ。東アジアと世界の平和を守り、『新冷戦』の危機に反対しなければならない」と訴えた。

 韓国、台湾の遺族は、ヤスクニ合祀反対をアピールし、「ノー!アベ ノー!ヤスクニ」のシュプレヒコールを響かせた。

 日本軍「慰安婦」問題解決全国行動共同代表の梁澄子さんは、「韓国の保守・右翼勢力は、日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連)と前理事長で与党「共に民主党」国会議員のユン・ミヒャンの『不正会計疑惑』について激しいバッシングを行っている。元慰安婦のイ・ヨンスさんに『お金を渡していない』というキャンペーンを行っているが、イ・ヨンスさんは後に『お金は貰っている』と述べている。メディアは数々の虚構をまき散らした。イ・ヨンスさんの訴えは、闘いが報われない思い、いらだちだ。日本政府こそ、被害者をこのような状況にまで追い詰めた責任がある。共に闘っていこう」とアピール。

 李政美さんのコンサートに続いて最後は、参加者全体で会場でペンライトを振りながら「朝露」を歌った。

(Y)

案内 8.15 反「靖国」デモ

8.15 反「靖国」デモ

日時 8月15日(土)15:00 集合/16:00 デモ出発

集 合 在日本韓国 YMCA9階 国際ホール (JR 水道橋駅徒歩9分、地下鉄神保町駅徒歩7分)

*参加される方は、マスクの着用をお願いします。またソーシャルディスタンスの確保にもご協力をお願いします。

主催 国家による「慰霊・追悼」を許すな!8.15 反「靖国」行動

【呼びかけ団体】
アジア連帯講座/キリスト教事業所連帯合同労働組合/研究所テオリア/市民の意見 30 の会・東京/スペース 21/戦時下の現在を考える講座/立川自衛隊監視テント村/反安保実行委員会/反天皇制運動連絡会/ピープルズ・プラン研究所/日の丸・君が代」強制反対の意思表示の会/「日の丸・君が代」の法制化と強制に反対する神奈川の会/靖国・天皇制問題情報センター/連帯社/労働運動活動評議会

連絡先 090ー3438ー026

〈呼びかけ〉

■今年は敗戦 75 年。天皇制国家による侵略戦争・植民地支配に対する反省・被害者への誠実な謝罪 と補償はいまだになされていない。それどころか、「慰安婦」「徴用工」問題に対する安倍政権の居直り・ 逆ギレは、巷に排外主義・レイシズムを溢れさせている。

■戦死者を「英霊」と顕彰する靖国神社も「今日の繁栄の礎」ともちあげる政府主催の戦没者追悼式も、 歴史の事実に向き合わず、事実を隠蔽・糊塗することによって、次なる戦争に向けて「国民」を動員する役割を果たしているに過ぎない。

■「災害被害者に心を寄せる」という天皇パフォーマンスも、事実(政策の欠陥や問題点)から眼をそ らさせ、天皇制国家という幻想に「国民」を統合するための演出にすぎない。

■コロナ危機下でも発揮されるであろう天皇のこの統合機能を視野におき、8.15
の国家による慰霊・ 追悼の欺瞞を撃つ。

8.15 反「靖国」行動に是非ご参加を!

【アジア連帯講座:9.11公開講座】入門:気候危機に立ち向かうエコロジー社会主義

fullsizeoutput_1e54-1-e1568398187175アジア連帯講座:9.11公開講座

入門:気候危機に立ち向かうエコロジー社会主義


講師:寺本勉さん(ATTAC関西グループ事務局員)

日時:9月11日(金)/午後6時30分

会場:東京・全水道会館4階小会議室
http://www.mizujoho.com/

資料代:500円

主催:アジア連帯講座
東京都渋谷区初台1-50-4-103
新時代社気付 TEL:03-
3372-9401 FAX:03-3372-9402
                     

 世界中で「異常気象の日常化」の激発、新型コロナウイルスの感染が拡大しています。この現象は、どのように考えればいいのでしょうか。私たちは、グローバル資本主義システムが温室効果ガスを排出し続け、「開発と成長」と称して環境破壊、生態系破壊を繰り返し、生物多様性を減少させてきた結果として、今日の気候危機とコロナ危機があるのだと言えます。そのうえで根本的な社会—エコロジー的転換が必要だと考えます。

 日本の気候危機は、すでに冬の厳しい寒波に始まり、夏には記録的な猛暑・豪雨、そして巨大台風の上陸と立て続けに異常気象に見舞われました。さらに今年の7月も九州地域における豪雨によって被害が拡大しています。やはりこの背景には、地球温暖化に伴う気温の上昇、日本周辺での海水温上昇による水蒸気量の増加があることは明らかです。

 世界的に見ても、北半球が記録的な高温となり、北極圏でも30℃を超えるかつてない高温を記録しました。各国で高温・乾燥による山火事も多発しています。

 COP25(国連気候変動枠組条約締約国会議/スペイン・マドリード/2019.
12)では「国別の温室効果ガス削減目標を引き上げる機運の醸成」と「市場メカニズムによる排出量取引のルール作り(パリ協定第六条の具体化)」を獲得目標にしていました。

 すでにCOP24を前に公表されたIPCC(国連の気候変動に関する政府間パネル)特別報告書は、パリ協定で目標とされた1.5℃の気温上昇にとどめるには、世界のCO2排出量を2030年までに45%削減(2010年比)し、2050年ごろまでに実質ゼロにする必要があると強調していました。

 だがCOP25は、国別削減目標の大幅な引き上げを明確に義務化することはできませんでした。「各国の事情に応じて」とか「可能な限り」とかの表現を用いて、削減目標の引き上げを事実上回避できる内容です。

 日本の小泉環境相は、COP25で脱石炭や削減目標引き上げを表明できず、環
境NGOから「化石賞」を受賞するほどです。そもそも日本政府は、「第五次エネルギー基本計画」(2018年7月)で2030年における電源構成の中での原発の比率を20年22%、化石燃料の比率を56%にするという目標を掲げ、脱化石燃料にも、脱原発にも真剣にとりくむつもりがないことを明らかにしています。

 その現れとして安倍政権は、東京五輪と「復興」をリンクさせ、福島第一原発事故などなかったかのようにキャンペーンを繰り返しました。ところが新型コロナウイルスの感染拡大によって延期に追い込まれ、今度は「ウイルスとの闘いに打ち勝って五輪を成功させたい」などととんでもないことを言い出しました。環境破壊、カネの無駄遣い、コロナ感染拡大へと導く東京五輪は中止にし、気候とコロナ危機によるすべての被害者に援助を強化していくことが必要です。

 寺本さんは、「気候危機」に立ち向かうためにクライメート・ジャスティス
(気候正義)運動、「システム・チェンジ」を目標としたエコ社会主義(社会主義とエコロジーを結合させた新たな社会の展望)の取り組みを提起しています。

 講座は、地球温暖化STOP、クライメート・ジャスティス運動、コロナ危機に立ち向かう入門編として設定しました。ぜひご参加ください。


125■8月新刊

「エコロジー社会主義  気候破局へのラディカルな挑戦」

著者:ミシェル・レヴィー
訳者:寺本 勉

柘植書房新社/2800円+税


著者ミシェル・レヴィーについて

著者のミシェル・レヴィーは、一九三八年にブラジルで生まれ、一九六九年からパリに居住している政治哲学者で、パリ国立科学研究所の社会学研究所長などを務めた。彼が研究の対象とした分野は極めて広範囲にわたっていて、マルクスの思想に関する多くの著作があるほか、中欧におけるユダヤ人文化、ラテンアメリカにおける政治と宗教、シュールレアリズム、ヴァルター・ベンヤミンの思想などについても、著作を著している。さらに、ATTACや世界社会フォーラムに参加するなど社会運動に積極的にかかわるとともに、気候変動・地球温暖化を生み出す資本主義システムに対するオルタナティブとしてのエコ社会主義について積極的な発信を続けている。(柘植書房新社のホームページから転載)

 

目次

序章 二一世紀の大洪水

第一章 エコ社会主義とは何か?

第二章 エコ社会主義と民主的な計画作成

第三章 エコロジーと広告

第四章 エコ社会主義的倫理のために

第五章 マルクス・エンゲルスとエコロジー

第六章 革命とは非常ブレーキである ヴァルター・ベンヤミンの政治・エコロジー思想

第七章 シコ・メンデスとアマゾンを守る闘い

第八章 先住民によるエコ社会主義的闘い

資料1 国際エコ社会主義者宣言(二〇〇一年)

資料2 ベレン宣言(二〇〇九年)

資料3 リマ・エコ社会主義者宣言(二〇一四年)

訳者あとがき


報告:7.23〜24「中止一択! 東京五輪」集会・デモ

配信:オリンピック3 (1) 7月23日、「オリンピック災害」おことわり連絡会は、日本キリスト教会館で「中止一択! 東京五輪」集会が行われた。

 国際オリンピック委員会(IOC)は、新型コロナウイルス感染の世界的拡大によって東京五輪・パラリンピックが延期に追い込まれ、現在進行形であるにもかかわらず、オリンピック・マフィアと連なる利権集団の延命をかけて2021年7月23日に東京五輪開会式および競技を強行しようとしている。安倍首相にいたっては、「人類がウイルスに打ち勝った証として完全な形で開催する決意だ」などとコロナ危機の収束の根拠をなんら示すこともできず開催強行を叫ぶだけだ。

 コロナ危機に対する医療や生活などの財政支援の増額が求められている。だがこの事態をあざ笑うかのように招致時の総経費が約7300億円と見積もっていたが、3兆円を超える額に達し、無駄金の垂れ流し状態だ。関連施設の維持費だけでも巨額な支出となっている。あらためてこのような人権・環境破壊、無駄カネを膨らませる東京五輪は延期でなく中止を!オリンピックは廃止しろ!の訴えを強めていかなければならない。連絡会は、来年の東京五輪開会式予定日の1年前、新たな反五輪運動のステップをめざし集会を設定した。

 司会の鵜飼哲さん(連絡会)は、集会開催にあたって「連絡会として二年続けて東京五輪・パラリンピック開会式1年前に抗議する集会を持たざるをえなかった。『どこからどうみてもこのオリンピックはおかしい』ということを一致点にしてメディアなどすべてがオフィシャルパートナーとなっているなか、反対運動を積み上げてきた。当初は『復興五輪』と言われ、その姿は安倍首相が強調するように『改憲五輪』へと作り上げようとしている。この状況を許さず、東京五輪中止を訴えていこう」と述べた。

 発言として武田砂鉄さん(ライター)が「今、ニッポンにはこの夢の力が必要ではない」をテーマに問題提起した。

 「一月の安倍首相の施政演説は、オリンピックから改憲へと主張した。2013年
五輪招致スローガンは、『今、ニッポンにはこの夢の力が必要だ』った。3.11から2年後だ。肌触りがいい言葉、貧相な言葉がこの間、飛び交ってきた。最近では安倍首相は、なぜか1年後に『コロナに打ち勝つ』などと繰り返している。『夢の力が必要だ』と言い出したころから論拠がないことを言い続けてきた。ついに『心を一つに全員団結』などと言いだした。あいまいな言葉、スケールが大きい言葉でからめとろうとしている」。

 「多くの被災地の人々は、『復興五輪』などに批判的だ。『オリンピックどころじゃない』と怒っている。かつて東京招致委員会の竹田恒和理事長は、福島原発から流れ出る汚染水についての質問が海外記者から集中した。そこで竹田がなんと答えたかといえば、『福島と東京は250キロ離れている』である。東京は安全だと言った。当初から福島切り捨てであり、『復興五輪』は欺瞞的なものだった」。

 「小池百合子都知事は、五輪延期が決まってから、連日、コロナ感染拡大に対してメディアに登場してきた。それ以前は、オリンピックをやるつもりでいた。メディアは、アスリートの思いを取り上げて五輪を応援しようとしている。小池都知事当選によってオリンピックに対する支持があったとも言っている。ビッグパーティーのたびにいずれも論拠がなく、気持とか、夢とかのまやかしで押し進めようとしている。厳しく見ていかなければならない」。

 志葉玲さん(ジャーナリスト)は、「東京オリンピックで悪化、難民の迫害」について次のように報告。

 「警察庁・法務省・厚生労働省は、『不法就労等外国人対策の推進』(2018・4・26)を確認し、政府は2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて『世界一安全な国 日本』を作り上げるとして難民迫害、人権侵害を強化してきた。収容施設に『収容』されている難民その他の外国人に対する入管職員による虐待やセクハラが多発している。入管行政の劣悪な状態は深刻だ」。

 「日本の入管行政は難民への排斥そのものだ。しかもオリンピックに名を借りて人権侵害を繰り返している。日本はオリンピック憲章に反し、開催国としてあるまじき暴挙であり、開催資格はない。IOCの日本での難民差別・迫害を見て見ぬふりは許されない」。

 ジュールズ・ボイコフさん(ジャーナリスト、元五輪選手)のビデオメッセージが上映され、オリンピックの実態、北京冬季五輪などを批判した。

 続いて韓国・ピョンチャン冬季五輪(2018)に反対してきた仲間をはじめフランス・パリ五輪(2024)、ロサンゼルスオリンピック(2028)反対運動の取り組み報告のビデオメッセージ。

 さらに東京五輪・マラソン札幌に反対する仲間のビデオ、「原発いらない福島の女たち」の 黒田節子さんのアピール。谷口源太郎さん(スポーツジャーナリスト)、江沢正雄さん(長野五輪反対運動)、大阪の仲間からのメッセージ紹介。オリンピック終息宣言展、オリンピック阻止委員会からのアピールが行われた。

 最後に「中止一択!東京五輪」集会宣言が提起され、「私たちは一刻も早く東京五輪の中止決定を求める。しかし、コロナ状況によって東京五輪が中止になることだけを願っているのではない。様々な『オリンピック災害』をもたらす近代五輪は『廃止』にすべきであり、今後の北京・パリ・LAと予定されている五輪も『中止』しかない。コロナ状況で顕在化した五輪の醜悪さを世界に発信して、世界『反五輪運動』と連帯してオリンピック・パラリンピックを廃止に追い込もう!」と確認し、参加者全体で「東京五輪は中止だ中止! オリンピック・パラリンピックは廃止だ!廃止!」のコールを上げた。

 7月24日、「オリンピック災害」おことわり連絡会は、午後5時、日本オリンピックミュージアム(JOC)前に集合し、JOC に「東京五輪の即時中止を求める申入書」の申し入れ行動を行った。

 その後、デモに移り、東京五輪反対のシュプレヒコールを響かせた。(Y)

報告 7.1 香港と中国、日本と世界の変革のためのスタンディング

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民主と人権に国境はない 
香港と中国、日本と世界の変革のためのスタンディング
中国による「国家安全維持法」施行、弾圧に反対する


 七月一日午後七時から、九段下の香港経済貿易代表部前で、Fight for HongKong 2020(連絡先attac首都圏)の呼びかけで、中国政府が「国家安全維持法」を作り、香港の民主化運動を抑え込むための新たな弾圧法を香港返還の日に合わせて施行したことに抗議する行動が行われた。雨の降る中、三〇人近くの人々が集まった。

 京極紀子さんが司会を務めた。京極さんは「香港で昨年民主化運動をつぶそうと『逃亡犯送還条例』がつくられようとしたが、大きな反対運動が起きた。昨年四月からデモが起き、六月には百万人のデモになり、街中がデモで溢れた。立法会への突入も起きた。私も香港のデモに参加し、香港の運動に連帯するために『Fight for Hong Kong 2020』をつくった」と昨年のデモを振り返り、さらに「秋には区議会選挙があり、民主派が圧倒的に勝利した。今回の国家安全法は、香港人抜きに中国の法律で弾圧をしようとするもので、許しがたいものだ。周庭さんらは香港デモシストを脱退するなど絶望の声も伝わってくるけれど決して香港の闘いは終わらない。これからも連帯する」と発言した。

 次に、稲垣豊さんが次のように発言した。

 「中国の全人代で、国家安全維持法が可決され、公布・施行された。香港政府は記念式典を開催した。しかし、香港の若者たちは朝から団体でのデモが禁止されたので、個人として抗議の意志を表明する行動を行い、引かない姿勢を示した」。

 「国家安全維持法では犯罪として、国家の分裂、政権の転覆、テロ活動、国家の安全を危険にさらすための外国勢力との結託の四種類を規定している。四種類すべてにおいて、最高で終身刑が科される。中国で作った法律を香港に適用するものだ。この法律の制定に香港人は一切かかわっていない。海外から批判が起きている。監視社会になる。昨年来の闘争で八千人以上が逮捕されている。香港独立派は政党を解散し、海外に移転した。学生は命あるかぎり闘うことを表明した(別掲載)」。

 「香港返還時に約束された『一国二制度』を五〇年間維持する中国政府の立場に反しているから問題だという意見が一般的だ。しかし、一九九〇年四月に制定された香港基本法はイギリスの植民地時代のものを維持している。香港の人々の意見をまったく無視したものだ。中国は資本主義グローバル化の中にあり、香港も新自由主義だ。つまり、両方とも資本主義を維持している」。

 「私たちは自由を求める香港の人々、巨大な監視社会と化した中国の民主化をもとめる中国の人々の側に立つとともに、LGBTQ+や外国人への差別、ブラックライブズマターといった各国・各地での人権問題に取り組み、コロナ恐慌や気候変動といったグローバル資本主義を変革しようとする日本と世界の変革をもとめる人々とともに立つ。民主主義と人権に国境はない。主権は国家ではなく民衆にある。抑圧に抵抗するすべての人々とともに」。

 続いて、名波ナミさんが最初に行動を監視する私服刑事など警察官に対して批判した。そして「国家は何から身を守ろうとしているのか。私たちのような人から身を守ろうとしている。国家こそが危険な存在だ。ブラックライブズマターの運動は警察の暴力に抵抗しているが、香港の運動を取り入れている。例えば催涙弾を防ぐために雨傘を使っている。周庭さんは日本によく来ていたが国外への渡航禁止にされている。渋谷署はトルコ人男性に嫌がらせの職質をし暴力を振るった。国家はつながる人々を抑圧している。人々が国境を越えて連帯することが重要だ」と発言した。

 武器輸出に反対する運動を行っている杉原浩司さんは「今回の中国の国家安全維持法は世界人権宣言にことごとく違反している。日本政府は一応抗議しているが、中国とは強いパイプを築いている。香港で使われている弾圧用の催涙ガス弾やゴム弾は最初イギリス製だったが中国製が使われている。世界ではイスラエルで作られている。武器輸出の規制をすべきだ。日本でやれることはもっとある」と話した。

 続いて、参加者から「独立の旗を掲げただけで、国家安全法で逮捕された。改めて許せない」と抗議の声を挙げた。最後に、陳怡(チェン・イー)、區龍宇(アウ・ロンユー)およびBORDERLESS MOVEMENT一同から寄せられた「闘いの炎は消えず 次の炎はさらに激しく」というメッセージが読み上げられた(別掲載)。七月一日、香港では若者たちが国家安全維持法に抗議し、三七〇人近くが逮捕され、独立の旗を持っていただけで、国家安全維持法違反で五人が逮捕された。香港の自由・民主主義を守るために、日本での連帯行動を強めよう。(M)


【資料】



闘いの炎は消えず 次の炎はさらに激しく
7・1 メッセージ


 香港で去年から始まり現在も激しく燃え上がっている逃亡犯送還条例反対運動は、長年のあいだ政治と社会に蓄積されてきた問題が表面化したものです。返還後、香港人が求め続けてきた行政長官と立法議会の普通選挙を実現するという意志は、二〇一四年の雨傘運動によってさらに確固たるものになりました。雨傘運動は失敗したという意見もかなりありましたが、二〇一九年の運動は、社会の覚醒が運動の蓄積の過程であり、それはそう簡単には失われるものではないということを明らかにしました。

 逃亡犯条例反対運動は、デモ参加者の大量逮捕、司法が敵対勢力への政治的道具と化し、そして国家安全法の到来という経過を経てきました。一部のデモ参加者のなかには疲労感も出始めていますが、みなさん、雨傘運動以降のことを思いだせば、それほど悲観的になる必要もとおもいます。大規模な行動は減ってしまいましたが、初心を忘れずに運動を継続すれば、いずれの日にかまた民衆の力が爆発するでしょう。二〇一九年以前は香港で一〇〇万人を超えるようなデモはありませんでした。いったん火の付いた闘いの炎は消し去ることはできません。そして次の炎はさらに激しく燃えあがるでしょう。

 暴政をまえに、冷静に落ち着くことこそが、いつの時代でも必要です。今回の運動では、初めて街頭に出たという政治的経験の少ない香港人がたくさんいました。闘いから学び共に成長する道は長く険しいでしょう。この運動は香港人の激しい闘争心や断固たる意志を示しました。同時に多くの欠点もみられました。昨年の運動がはじまったときには、「みんなで一緒に乗り越えよう」というスローガンで団結力と包容力をしめしました。そこには中国からの新移民や中国国内の仲間も含まれていたからです。

 しかし武漢発の新型コロナの感染拡大を契機として、一部の右翼が新移民や中国国内の仲間を排除する雰囲気を扇動し、世界的な感染拡大のなかで広がる嫌中意識を利用して、中国政権に圧力をかけようとする動きがありました。それによって一部の新移民や中国国内の仲間たちは運動圏から排除されることになりました。

 私たちはそのことを大変残念に思っています。「みんな一緒に」というスローガンの背後に隠されたイデオロギーによる引き回しは、いまこの時にこそ直視しなければならない問題になっています。

 アメリカのブラックライブズマター(黒人の命は大事だ)運動についても、香港の右翼はまたしても「敵の敵は味方だ」(中共の敵のトランプは味方で、それを攻撃するブラックライブズマターは間違っている)という単純な二分法によって、香港人がブラックライブズマターに連帯する道を閉ざそうとしたことを、私たちは残念に思います。

 右翼がイニシアチブをとるこの社会運動のなかで、左翼の声は非常に弱いものです。しかし私たちは世界各地で抑圧される民衆の側に立つというスタンスを堅持します。この一年のあいだ、たとえばロヒンギャ難民たちのように、世界各地で悲惨な状況に置かれた人々にくらべ、香港に対する国際社会の関心はきわめて大きなものでした。

 わたしたちは自分たち受けた過分な恩恵と同じように、私たち自身も、世界各地で被害を受ける民衆に関心と共感を持ち、支援することを忘れてはなりません。私たちが盟友とするのは民衆であり、どこかの国の政府ではありません。

 いま香港やアメリカでは、香港デモとブラックライブズマター運動をつなげようとする人々にレッテルを貼り、中傷しようとする動きがありますが、私たち「無國界社運BORDERLESS MOVEMENT」(ボーダレス・ムーブメント)は正しい取り組みを放棄することなく、人々に対して、恐れたり落胆したりせず、一時の感情に流されないよう呼びかけていきます。

 理性を維持し、共感を抱くこと、これこそ香港人が今後も世界からの支援を獲得するために必要なことであり、遠い将来の勝利への道です。

 最後になりましたが、日本の友人たちによる支援に感謝します。たとえば沖縄の米軍基地に対する闘いのように、日本でも同じように国際的な関心が必要になるテーマを香港にも伝えていきたいと思います。残念なことに私たちの力は微力であまりお役に立てませんが、努力したいと思います。日本と世界の友人たちが私たちとともにあることに感謝します。

陳怡(チェン・イー)、區龍宇(アウ・ロンユー)およびBORDERLESS MOVEMENT一

無國界社運BORDERLESS MOVEMENT?https://borderless-hk.com/


◆7・1宣言:香港11大学の学生団体の共同宣言

 主権移譲以来、香港人は毎年7月1日にはデモを行い政権に意志を表明してきた。2003年に民衆の怒りが爆発したときには50万人以上が街頭で「基本法23条反対」のデモに参加し、六四天安門事件の虐殺以降では最大規模の社会運動になった。それ以降、香港人は毎年民間人権陣線が主催する7・1デモに参加してきた。この7・1デモは香港人の民主化闘争の象徴となった。

 去年の送還条例反対運動においてプロテスターは7月1日に「別の重要な意義」を付与した。2019年7月1日、プロテスターは午後一時半から立法会のガラスを叩きはじめ、夜9時にはシャッターを持ち上げて、香港開闢以来はじめて立法会を占拠し、壁に「平和的デモが無意味だということはオマエらから教えられた」というグラフティを書きなぐった。り、持つ日となった。今年は国家安全法という矢をつがえる日となった。香港人はすでに「私たちの後ろには無数の仲間の犠牲があり、目の前にあるのは民主を実現する唯一のチャンスである。私たちは生死を香港とともにするしかない」という覚悟に目覚めている。

 『香港民族論』共著者の一人、梁継平はマスクを外して、毅然と宣言を読み上げた。「ぼくらは勝たなければならない。いっしょに勝ち続けなければならない。ぼくら香港人はもうこれ以上負けるわけにはいかない。ぼくら香港人はもう負けるわけにはいかない」。勝利はわれわれの香港を取り戻すため、負けは香港人の命の終わりを意味する。われわれは逃げることも、臆病になることも、妥協もできない。これは我々と全体主義との最後の一戦だ。

 過去一年、香港人は世界中の予想を超えて、全体主義に対して団結してきた。
一年のあいだ全体主義の弾圧は強まることはあっても弱まることはなく、いままた国家安全法という矢がつがえられた。香港人は腐敗甚だしく、人間性を完全に失った政権に敗れ斃れることに甘んじるのだろうか。中共政権はとっくに一国二制度という嘘っぱちを投げ捨て、香港を蚕食しようとする狼の野心を露わにしている。香港人は覚醒した。この暴政がわずかでも生存空間を残す余地があるなど考えるのは妄想である。われわれの背後には香港のために犠牲となった無数の仲間たちがいる。目の前には民主を実現する唯一のチャンスがある。われわれは生死を香港とともにする。

7月1日、命ある限り徹底抗戦を。

香港大學學生會
香港理工大學學生會
香港公開大學學生會
香港恒生大學學生會
香港中文大學學生會臨時行政委員會
香港城市大學學生會
香港樹仁大學學生會
嶺南大學學生會
香港教育大學學生會
香港浸會大學學生會臨時行政委員會
香港科技大學學生會

報告:6.28東峰現地行動報告

配信:東峰デモ 6月28日、三里塚空港に反対する連絡会主催による「石井紀子さんと共に 三里塚『第3滑走路』反対! 夜間飛行時間延長を許さない! 安倍政権打倒! 反原発―再稼働やめろ! 沖縄・辺野古新基地建設反対! 6・28東峰現地行動」が取り組まれ、42人が参加した。

前段集会の会場は、強雨のため平野靖識さん
(らっきょう工場)から東峰地区のらっきょう工場の一角を借りて行われた。

 第1部集会は、司会の山崎宏さん(労活評現闘/芝山町横堀地区)から開催あいさつから始まった。

 次に柳川秀夫さん(三里塚芝山連合空港反対同盟代表世話人/芝山町)のメッセージが読み上げられた。

 「今は六月下旬、梅雨の真っ最中である。三里塚空港は、新型コロナウィルスの流行のため旅客機の飛行が極端に減少し、4月12日からは平行滑走路が完全閉鎖されている。平行滑走路の飛行コース下は、静かである。

 こうしたことで飛行機が飛ばなくなるとはまったく予想もできなかった。しかし、第3滑走路の建設計画は日々着々と進められている。横堀・丹波山の空港会社用地では工事が連日行われ、滑走路予定地・騒音地区住民の移転工作も進められている。ただひたすら利潤を追求することだけを求めて空港を拡大することが、はたして正しいことなのかが根本から問われている。今回の新型コロナウィルスの流行はそのことを突きつけているのではないか」。

 続いて加瀬勉さん(元三里塚大地共有委員会〈Ⅱ〉/多古町)のメッセージ「石井紀子さん追悼する」が読み上げられた。

 (要旨)

「〈1〉三里塚闘争に生涯をかけてきた一人の同志をまた失った。紀
子さんの遺志を引き継ぐことは『言はやすく行うは難し』である。悲しみを力に変えて断乎進んでゆこうではないか。

 〈2〉小川明治副委員長が亡くなって天浪の墓地を掘り起こした。小川明治副委員長の棺は反対同盟が作った檜の特製のものであった。三里塚大山の火葬場の施設には入らなかった。市販の棺に明治副委員長の白骨死体を入れ替えて火葬した。空は騒音地獄、地上田畑を奪い、村を廃墟にし、自然を破壊し、コンクリートで埋め尽している。三里塚の天地に眠るところなどない。紀子さんの遺志を引き継ぐとゆうことは闘うわれわれの血と肉体の中に紀子さんが生きていることである。紀子さんと共に戦いつづけよう。……紀子さんをはじめ三里塚闘争に生涯をかけた同志が安らかに眠ることのできる三里塚の大地をつくりあげよう」。

 平野靖識さん(らっきょう工場)は、「コロナ騒ぎの中で外国人の訪日ができないでいる。この状態が5年も続くと言われている。空港会社は、23万回の離発着を言っているが、とても第3滑走路などは必要ない。空港機能の拡大も考えなおすべきだ。東峰地区にとって、4月12日以降、平行滑走路が閉鎖され、静かな日常を楽しむことになっている。生協を通した販売も増えた。しかし、コロナ第二波、三波がくることで仕事が続くだろうかという不安も抱えているが、奮闘している」と報告。

 さらに「紀子さんとは、いろんな局面で議論してきた。原則の人だった。シンポジウム、円卓会議に対して反対でした。東峰ワンパックと分かれて紀子パックを立ち上げたことなど紀子さんなりに原則を貫き通した。新年の反対同盟旗開きにおける紀子さんの豚汁は、野菜が一杯で大変おいしかった。食べることの重要性を常に訴えてきた人でもあった」と述べた。

 繁山達郎さん(一般社団法人三里塚大地共有運動の会事務局長)は、「東峰現地行動は、1999年時の暫定滑走路建設計画があったころから取り組んできた。集会には、毎回、石井紀子さんからのアピール、メッセージがあった。共に東峰を守るために闘いぬいてきたが、紀子さんの声が聞けないのは大変残念だ」と発言。

 また、「1983年から共有地の再共有化を取り組んだ。すでに30年以上経過しているが、共有地を守りぬき、政府の所有者不明土地対策法による土地取得の策動をはね返すために法人を結成した。共有地を法人に移転登記すれば、法人が管理していくことができる。すでに登記変更に着手し、昨年が20人、現在、30人が終了し、さらに増やしていきたい。ぜひ協力してください」と呼びかけた。

 第二部は、「石井紀子さん追悼」と運動報告。司会は辻和夫さん(田んぼくらぶ)。

 アピールは、高見圭司さん(スペース21)、渡邉充春さん(関西・三里塚闘争に連帯する会)、小山広明さん(元泉南市議)、根本博さん(泉州沖に空港を作らせない住民連絡会)、山田謙さん(東大阪三里塚闘争に連帯する会)、鈴村多賀志さん(田んぼくらぶ)、野島みかさん、片岡万里子さん(労活評)、山崎宏さん(労活評)、国富建治さん(新時代社)から行われ、紀子さんの思い出、運動報告などが語られた。

 集会後、デモに移り、開拓道路に到着。仲間たちは石井紀子さん追悼の黙祷を行い、「第3滑走路反対!三里塚空港粉砕!」のシュプレヒコールを空港に響かせた。

 デモ終了後、第3滑走路計画に対する現地調査に向かう。建設予定地のど真ん中の加茂地区では空港周辺地図を見ながら山崎さんの解説を受け、あらためて大地と自然破壊、空港公害に満ちた第3滑走路建設計画の実態を暴き出した。

 加茂地区から飛行騒音直下コースを確認しながら多古町に到着。加瀬さん宅に
向かう。加瀬さんは、サツマ芋とジャガイモを用意し、迎えてくれた。

 加瀬さんは言う。「コロナによって空港が止まり、空港会社が破産していく。
廃港をめざすわれわれにとっては喜ばしいことだ。グローバルな世界が壊れ、矛盾が深まっていく。新しい闘いは、命を守る運動、生活を守る運動などによって根底から問い直さなければならない。さらに旧日本軍731部隊の石井四郎中将は千代田出身だ。天皇制との対決も負けるわけにはいかない。天皇制と三里塚の関わりを切開し、人民の闘いを明らかにしていく」と決意を述べた。

 参加者は、加瀬さんの問題提起を受け止め、三里塚闘争と新たな闘いの方向性
への踏み込みに向けて誓い合った。

(Y)

 

【東京都知事選2020】小池知事は宇都宮けんじさんの質問状に誠実に答えよ

Eb2BnV6VAAES9jO 7月3日、宇都宮さんが出した公開質問状に対して小池都知事がFAXで宇都宮さんに回答を送付した。

2日に続き陽性者が100人を超えて都のコロナ対策に疑いがもたれて
いる時に出された公開質問状なのであるから、本来ならばFAXで宇都宮さんに回答してすませていいような問題ではない。

小池都知事は、情報公開が都政改革の一丁目一
番地と言ってきたのであるから、公開質問状が出されたこと自体を広く都民に知らせなければいけないはずであり、公開質問状に対する回答を合わせて都民に公表するべきである。

コロナ対策は都民の命の問題である。命の問題に関する政策に疑義がもた
れているのだから、積極的に応答するのが現職としての責務である。

 小池都知事の回答に対する宇都宮さんの会見が先ほど行われ、宇都宮さんのコメントも公開された。小池都知事の回答は極めて不誠なものでしかない。あと1日、小池都知事の嘘と宇都宮さんの誠実さを象徴する公開質問状を広げよう。
http://utsunomiyakenji.com/4301)

【第四インターナショナル声明】パンデミック、経済不況、新自由主義 - 歴史的大転換宿す世界

MW-II685_seattl_20200616140936_ZQ(アメリカ・シアトルでは青年と市民のデモ隊が3週間に渡って市中心部を占拠して「自治区」を現出させた)





パンデミック危機は巨万の生命を脅し、地政学的危機をも加速中


2020年6月8日 第四インターナショナル執行ビューロー


 パンデミック、経済不況、新自由主義が作り出した構造的格差と抑圧の可視化、世界システムの覇権をめぐる地政学的対立、差し迫った環境崩壊の詳細な未来像……こうしたものすべてが二〇二〇年に一度に起こった。われわれの世代にとっては前代未聞の世界的パンデミックに人間全体が直面したのである。

パンデミックは、世界中で四〇万人以上の死者(六月八日現在で四〇万一千人)を出し、公式に記録された感染者は二一六カ国で六八〇万人以上にのぼった。三月後半、ロックダウンがアジアに波及し始める以前に、三〇〇万人以上の人々が自宅に隔離されていた。

現在の時点で、どの程度まで流行の第二波があるのか、そしてウイルスが突然変異するかどうかを判断するのは不可能である。

医療問題以上のもの


これは長期的に続いている諸プロセスが凝縮した瞬間である。エコロジー危機、新自由主義の限界と格差、古い帝国主義と中国の間でのヘゲモニーをめぐる地政学的闘争といったさまざまなプロセスは、それぞれ相対的に自律的な発展を遂げてきたのだが、いまや爆発的に集中している。一九四五年に形成された世界を構造的に変えつつあるプロセスが生じており、相互に作用し合っている。それは間違いなく歴史の道程における分岐点であり、すべての政治的当事者にとって大きな賭けの瞬間である。

われわれは諸危機の集中点の中にいるが、それは危険に満ちていて、資本主義文明の危機であり、二〇世紀の世界大戦以降でもっとも深刻な危機なのである。これはグラムシが有機的危機と呼んだものである。すなわち、ブルジョア権力のまさにその構造の中に裂け目が現れはじめ、ブルジョア権力による普遍性の主張が崩れはじめる。そして、以前の覇権的主張がその本当の姿―資本主義の安定性を確実にする手段―を白日のもとにさらけ出すのだ。社会的合意は悪化し、資本家の主張はもはや公共の福祉に対応しているようには見えなくなる。「病的症候群」が現れはじめるとともに、政治的分裂が発生し、エコ社会主義的反資本主義者だけでなく、極右にも獲得の可能性がある政治的な空間が開かれていくのである。

われわれが連帯にもとづいた健康政策を提案するとき、その要求が資本主義によって設定された枠組みを超えることは明らかである。われわれの健康は生活環境次第である。それはきれいな空気を呼吸するかどうか、汚染されていない水を飲めるかどうか、高品質の食料を手に入れることができるかどうか、都市が居住に適した環境であるかどうか、などにかかっている。

手短に言えば、それはわれわれが良く生きるかどうか、われわれの賃金が良い生活を保障するに足るものであるかどうかにかかっている。健康は肉体・社会・文化・環境の問題であり、人間的に豊かな生活のための基礎である。資本主義によって生み出された生活状況のもとでは、われわれは社会・文化・環境の面で良い生活を送ることができないために、連帯にもとづく健康政策は資本主義によって設定された限界を超えるのである。

エコロジー危機

 森林伐採、資源略奪、資本主義的生産性、エコシステムの破壊、監禁状態での動物飼育の増加、食肉需要の増加によって、ウイルスはより容易に、より頻繁に種の境界を跳び越えるようになった。一九六〇年以降に出現した新たな病気の四分の三は、動物由来感染症である。この中には、エボラ出血熱、エイズ、SARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)、そして新型コロナウイルスが含まれる。貿易のグローバル化はウイルスの急速な世界的拡散を導いた。巨大都市とそれと結びついたスラムの増加は、人間間での伝染のスピードを加速させている。それゆえに、新型コロナウイルスのパンデミックはグローバリゼーションのさまざまな影響の相互作用の結果である。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、二一〇〇年までには世界の平均気温上昇が六℃に達すると予測している。そのことは、大陸域のほとんどや北極海でのそれ以上の気温上昇と著しい海面上昇を引き起こし、熱波、森林火災、干ばつ、洪水、破壊的なハリケーン・台風のような異常気象がますます頻繁に、激しく発生することを意味している。これにより、三五億人の人々が海岸地帯や熱帯地方を含む陸地の一九%から離れざるをえなくなるだろう。気候破局は、それ以外の環境的なティッピング・ポイント(臨界点)(訳注)―生物多様性の著しい喪失、森林伐採、きれいな水の不足―とともに、新型コロナウイルスの影響よりもずっと恐るべき結果をもたらすだろう。しかし、パンデミックは、そうした災厄の世界的犠牲者がどうなってしまうのかをわれわれに教えてくれている。

世界には、アグリビジネスが、パンデミックの瞬間を、自然破壊を引き起こす資本主義プロジェクト推進のために利用している地域がある。これが起きている一つの例はブラジルである。ブラジルでは、今年三月と四月にアマゾン熱帯雨林の伐採が、昨年同時期と比べると二九・九%も増えた。この森林破壊の進行は、アマゾンの諸民族、とりわけ先住諸民族の集団殺戮の進行でもある。先住諸民族はすでに新型コロナウイルスによってもっとも影響を受けている集団の一つなのだ。エコ社会主義組織であるわれわれが、アマゾン熱帯雨林およびパンデミック期間中における先住諸民族の健康の国際的な防衛を繰り返し述べることは必要不可欠なことなのだ!

(訳注:ティッピング・ポイントとは、それまで小さく変化していたある物事が、突然急激に変化する時点を意味する語。環境破壊や地球温暖化に関して使われる場合、それがある地点=ティッピング・ポイントを超えると、不可逆的・爆発的に進行して、取り返しのつかない事態となることを示す)。

地政学的・地理経済的影響


アメリカ合衆国と中国の双方が攻撃的に作り出している二極対立の中で、ヘゲモニーをめぐる議論が明確となり、それは好戦的なものとなっている。

中国は、半世紀にわたって、アメリカ合衆国との戦略的パートナーシップの中で発展してきた。オバマ政権はすでに、二〇一五年に締結した環太平洋連携協定を通じて、その土台を掘り崩そうとすることにより、中国の恐るべき発展に対処しようとしたのだった。しかし、トランプ・プロジェクトによって推進された地政学的再配置の一部として、トランプ政権は二〇一七年一月にその合意を非難し、北京が主導権を発揮できる空間をそのまま残した。北京はワシントンの国家主義的保護主義に直面して、自由貿易と経済グローバリゼーションの旗手としての位置を占めはじめた。

この同盟関係の崩壊は国際社会のすべての領域に影響を及ぼしてきた。それゆえ、アメリカ合衆国とヨーロッパ連合(EU)は、この面から弱体化しつつある。EUはすでにブレグジットによって打撃を受けていたが、もっとも大きなダメージを被ることになるだろう。危機に際してヨーロッパ全体として医療手段を動員できなかったことは、EUに打撃を与えることとなった。つまり、危機がヨーロッパに及んだときに加盟国は協力して行動しなかったばかりか、一方的に国境を閉鎖し、自由な移動を中断し、調整もなしに運輸ネットワークを停止してしまったのである。何週間もの間、イタリアは、フランスや(医療用品や設備の輸出を停止した)ドイツのような近隣諸国からも、EUレベルにおいても、いかなる援助も受け取ることがなかった。備品供給に関しては、中国がもっと多くをおこなった。キューバはアメリカ合衆国による犯罪的な封鎖にもかかわらず、二〇カ国以上に医療団を派遣した。

スペイン、ギリシャ、イタリアのような債務国は、二四〇〇億ユーロのパンデミック危機特別支援枠をもつEFSM(ヨーロッパ金融安定化メカニズム)の方に誘導されている。このメカニズムは、借金と引き換えに、緊縮政策や公共サービス削減を強制するのである。

アメリカでは六月初めには四千万人が失業手当を申請し、(IMFによると)年末にはアメリカ経済の減少幅が五・八%にまで達すると予想されている。社会危機(と現在進行中の人種差別に抗議する反乱の波)を背景として、アメリカでは一一月に選挙が予定されており、それは国内および国外の政治状況の道筋を示すものとなるだろう。
トランプは(詐欺行為を含む)すべての可能な手段を用いて、再選をかちとろうとするだろう。しかし、彼の目標は達成困難である。国民の半数の間での彼の威信は大きな影響を受けている。アメリカにおける現在の急進化した広範な動員の爆発は、歴史的な社会的・人種的格差、新たな世代によって蓄積された政治的不満と経験、(黒人コミュニティに対してより大きな影響を引き起こした)トランプ政権によるパンデミックへの破滅的な対応という状況の中で発生している。

より貧しい国々では、人々は健康被害と経済的影響の両方に同時に直面している。ブラジル、ペルー、チリ、メキシコでは、感染者数が実際に増加している。ブラジルでは、医療専門家は六月に新型コロナウイルスの感染爆発が起こると予見しているが、それはボルソナロの犯罪的行動によって増大している。ブラジルは急激に悪化しつつある医療危機と経済不況・深刻な構造的危機とが結びついている。ボルソナロはさらに孤立を深めているが、彼のファシスト・イデオロギーという基本的支持基盤に訴えかけている。彼は国家警察、軍隊、武装集団に支援され、あからさまな独裁的方法で支配するために議会と最高裁判所を閉鎖している。

アフリカと中東においては、医療システムは最悪のレベルにあり、それは戦争状態によってさらに悪化している。病人数が少ない中でも、エピデミックのリスクが既存のリスクに加重されている。アフリカにおいては、たとえば、二〇一八年にマラリアによって三八万人、結核で六〇万七千人、栄養失調で二~三百万人が死亡した。

各国人民は、より強化された緊縮策、低開発・食料依存・債務の深刻化、多国籍企業・国内大企業による経済・資源支配に深刻に直面するだろう。これらはアラブ地域での革命的プロセスの引き金を引いたのと同じ要因であり、新型コロナウイルス後の新しいサイクルにとって新たな原動力を与えるだろう。
V字型回復が起こるかはまったく不確かなため、資本家グループや政府はより攻撃的になりがちである。資本主義が打倒されない限りは、さまざまなより良い「次の世界」は単なるユートピアになるだろう。「次の世界」はより不平等にさえなるだろう。反資本主義的オルタナティブのための闘いはますます緊急のものとなっているのだ。

新自由主義的モデルの危機

 この危機はグローバリゼーションにその根拠を持っている。以前からある危機はすべて、このパンデミックの後には深刻化しているだろう。その上、新型コロナウイルスは、(バリュー・チェーンを通じた、そして被支配国の生産を大企業集団の利益に適応させることを通じた)最大価値の追求や成長とはほとんど無関係な利益率の追求に深く規定されているグローバル化した資本主義生産システムのもろさを暴露した。にもかかわらず、次の数カ月間における資本家の目標は、できるだけ早く「いつも通りのビジネス」を推し進めることなのである。

ここ数年で、グローバリゼーションと緊縮政策を強調することの限界はすでに明らかになっていた。二〇〇八年の金融危機以降、主要中央銀行は、アメリカ連邦準備制度、ヨーロッパ中央銀行、イングランド銀行を含めて、経済システム全体を持ちこたえさせるために巨額の資金を民間銀行に注入した。同時に、実質ゼロ金利あるいはマイナス金利にすることで、各国と資本主義企業の負債額はアメリカとヨーロッパの両方で急増した。

銀行やそれ以外の部門の資本主義大企業は、中央銀行が豊富に分配した財政手段を生産的投資には使わなかった。それらは金融資産を取得するために使われたのである。このことによって、株式市場、債券市場(たとえば債務の債権化)、そしていくつかのところでは不動産部門において、投機的なバブルが作り出された。すべての大企業はこの危機の当初において過重債務状態となっていたのだ。

深刻な社会危機

 新型コロナウイルスは、生産・製品輸送・需要の急激な中断という影響を与えた。

パンデミックによる打撃が比較的小さな地域でさえ、たとえばアフリカ(六月七日現在において五一二五人の死者、そのうちアルジェリア・カメルーン・エジプト・モロッコ・ナイジェリア・南アフリカ・スーダンだけで三五〇〇人以上)においてさえ、中国での危機やアメリカ・EUの危機が経済・社会レベルでの深刻な影響をもたらしている。世界食料計画は二〇二〇年一年間に、深刻な食料不安が憂慮される人々の数は、とりわけアフリカと中東において倍増すると予想している(二〇一九年には戦争と気候変動のために一億三五〇〇万人が食料不安に陥っていた)。

この危機の影響は、いくつかの国における労働者階級のもっとも貧しいセクターに飢餓の亡霊を呼び戻している。この中にはとりわけ、労働世界から排除されている人々、あるいはまったく労働権を持たないまま不安定なやり方で労働世界に参入している人々、いつも民族的・社会的条件によって排除されている特定の人種の人々が含まれる。

それが、飢餓と闘うための階級連帯の呼びかけを組織しようとする社会運動のイニシアチブが決定的に重要である理由であり、そのイニシアチブが貧しい地域における政治組織にとっての能力に直接的影響を与える理由である。(とりわけブラジル、アメリカ、ヨーロッパにおける)黒人コミュニティや移民コミュニティによる運動が、こうしたイニシアチブを主導してきた。そのことはパンデミックに対する大衆的抵抗を組織する上で決定的役割を果たしている。

食料生産は、現在では、各部門で支配的な一握りの大企業の手に集中している。生産されているものの多くは人間の健康にとってかなり有害である。安価で満腹感を得られるため、ジャンクフードは貧困層にもっとも悪影響を及ぼす肥満や病気の大きな原因となっている。

労働者の雇用と生活条件劣化


労働者階級(われわれはその中に貧しい農民を含めている)は、直接的には死者の数によって、間接的にはレイオフ、雇用喪失や活動停止、賃金カットによって、新型コロナウイルスの主な犠牲者となっている。

たとえばアメリカ、ブラジル、フランスでの最初の研究によれば、どの研究においても、民衆諸階級が新型コロナウイルスによる死者という点で主な犠牲者となっている。ILOの推計によれば、三三億人におよぶ勤労人口のうち、五分の四以上が労働現場の全面的閉鎖、あるいは部分的閉鎖によって影響を受けてきた。アメリカでは、四月に二千万人の雇用が失われ、三月からの新たな失業保険申請は三千万人にのぼった。イギリスでは、三月一六日から三一日までの間に九五万人の失業保険新規申請があったが、これはいつもの一〇倍に達するものだった。ヨーロッパでは、短時間就業の割合が急増した。ドイツでは、五〇万社近い企業が三月に短時間就業を採用した。これは二〇〇八年金融危機後の一カ月間の二〇倍以上になる。

アフリカ、ラテンアメリカ、アジアでは、仕事場のかなりの部分はインフォーマル経済の中に存在している。それはインドでは九〇%にも及んでいる。こうした「正規のルートによらない」労働者は、新型コロナウイルスで収入を失い、実質的に社会的保護を受けておらず、失業手当の対象でもなく、医療サービスもほとんど利用できないでいる。

多くの国々で、こうした労働者のかなりの部分は移民であり、農村部から都市へと流入した国内移民(インド、アフリカの多く)か、あるいは他の国からの移民(湾岸諸国ではアジアから、アメリカでは南アメリカ・中央アメリカから、など)のどちらかである。こうした労働者は、経済破壊だけでなく、レイシストによるスケープゴートにもされるという意味で二重に弱い位置にある。

ILOは、世界中で一六億人の人々―世界のインフォーマル労働者の四分の三にあたる―が、第二四半期に自らの生活手段を失うリスクがあると予想している。ILOの推計では、世界の労働時間の六・七%が第二四半期に失われ、これは一億九五〇〇万人のフルタイム労働者が週四八時間働くのに相当する。このうち、一億二五〇〇万人分はアジアで、二四〇〇万人分は南北アメリカで、二〇〇〇万人分はヨーロッパで失われるという。アフリカ連合による調査によれば、二〇〇〇万人の雇用がアフリカ大陸で失われ、債務が増加するとされる。

差別は一段と悪化させられた


一般的に言って、労働者階級の中でもっとも不安定な人々がウイルスによって直接・間接に一番大きな影響を受けた。ニューヨークでは、ブロンコスに住む黒人であり、アメリカ全体ではネイティブ・アメリカンであり、黒人である。パリ地区では、セーヌ=サン=ドニ県に住む特定の人種の人々であり、ブラジルではスラム(ファベーラ)の黒人である。インドでは、街頭で暮らしたりスラムに住んだりする人々の相当部分がムスリムであり、彼らはモディ首相が非常に急いで、残忍なロックダウンを強制したとき、地主や州当局によってただちに追い立てられた。その結果、人々の巨大な移動が生み出された。フィリピンでは、七万人以上の海外出稼ぎ労働者が、パンデミックの結果として帰国せざるをえなくなるだろうと推計されている。この中には建設現場で働いていた人々もいるが、多くはクルーズ船を含む接客業で働いていた。

こうした人々はすべて、より高い罹患率、より不安定な食料・居住状況、働き続けるためにあちこちを動き回る必要性の犠牲者だった。

ヨーロッパ、アメリカ合衆国、カナダ、ラテンアメリカ、インド、中国、中東では、女性に対する暴力とフェミニサイド(男性による女性の殺人)がそれ以前と比べると三〇%から一〇〇%も増加した。
アメリカ合衆国、カリブ海沿岸地域、南アメリカ(とりわけブラジル)では、アフリカ系の人々が、その大多数が貧困な状態にあることを考えると、パンデミック、失業、インフォーマル部門からの収入の喪失、国家による暴力でもっとも被害を受けている。

すべての国外退去させられた人々、難民、シリア人、パレスチナ人、ウイグル人、バングラデシュのキャンプにいるロヒンギャの人々はこの状況によってさらに大きな影響を受けている。

アラブ湾岸諸国では、南アジアからの何百万人もの移民労働者が、仕事や収入がないもっとも不安定な状況に置かれている。

貧しい家庭出身の生徒や大学生は、教育機関が物理的に閉鎖され、コンピューターやインターネットへのアクセスを全員に保障するという動きがないままに授業がオンライン化されたことによって大きな被害を被ってきた。もっと年少の子どもたちにとっては、特に家庭環境において十分な支援がないことによって、被害を受ける可能性が高い。

民主主義的自由への攻撃も助長


多くの国が緊急事態を封じ込めるという観点から、民主的権利に対する規制を導入してきた。多くの国において、特例法が制定され、反対する者は逮捕されている。たとえばフィリピンでは、ドゥテルテ大統領が新型コロナウイルスを人民管理の抑圧政策を拡大するために用いた。同じことが香港でも起きている。北京政府は民主的権利への新たな制限を導入しつつある。ラテンアメリカでは、たとえばブラジル、チリ、エクアドル、ボリビアでこうした例が見られる。多くの国では、実行されている抑圧・管理措置は、新たな追跡技術や監視技術をともなう新たな政策手段を実験する機会となっている。

明らかに、その目的はこれらの手段を永続化させることにある。資本主義的政策がもたらしたさまざまな結果に反対する数多くの動員があったあとで、新型コロナウイルスが多くの国に達したので、ますますそうなっているのだ。たとえば、香港、アルジェリア、チリ、フランスがそうした例である。社会的に不公正な状況を拡大させたために、支配階級は当然にも社会的動員の再燃を恐れているのだ。

それでもやはり、新型コロナウイルスにもかかわらず、すでに香港では人々が北京政府の反民主主義的な法律に反対して街頭に出ている。ブラジルでも広範な運動がボルソナロの弾劾を要求して組織されつつある。われわれは次の数カ月間において多くの社会的・政治的動員が起きることを予期できる。

ミネアポリス市警の警官によってジョージ・フロイドが処刑されたことに反応したアメリカでの現在の爆発は、トランプの対ウイルス政策によって黒人コミュニティがより大きな影響を受けている中で、そして「黒人の命は大切」運動が展開されているという状況の中で起きている。

社会運動と反資本主義者は攻撃的政策の暴力に反対して団結しなければならない


  医療危機が依然として存在しており、支配階級の唯一の目標が自分たちの利益を再構築することである中では、労働者階級にとっての脅威は二重のものとなっている。事業閉鎖やレイオフが増加し、賃金が支払われなかったり削減されたりするだけでなく、労働権を保護する法律(それが存在するところでは)は緊急措置の期間中に広範囲にわたって問題にされてきたが、その狙いはそうした措置を延長することである。インドでは、モディ政権がこの方向で各州に圧力をかけ、ウッタルプラデシュ州やマディヤプラデシュ州では、健康法や新たな活動のための安全規則、解雇の促進などと一緒に、労働組合の諸権利の一時停止が実施されている。

 ドイツ、スペイン、アメリカ、ブラジルなどさまざまな国において、ロックダウンの間に、人種差別主義、外国人嫌悪、あれやこれやの陰謀説、国家主義、白人優位主義などを掲げて、極右グループがロックダウンに反対するデモを組織した。それ以外では、インドにおいて、(二億人の)ムスリムが「エピデミックに責任がある」と非難するレイシストのキャンペーンの犠牲者となっている。こうしたグループは、ロックダウンの間やその後に、多くの国で存在する社会的・政治的危機に寄生しているのだ。

 しかし、数多くの国において、ロックダウンにもかかわらず、社会運動、労働組合、民衆コミュニティが活動していた。それは、監禁状態になる前に労働組合、政治組織、社会運動によって実行されていた多くの行動や動員の継続としてであった。そうした行動や動員の例としては、性的暴力やレイシストによる暴力に反対する動員、住居の権利を求める動員、フランスの医療労働者の闘いのような被雇用者の闘い、チリ・レバノン・アルジェリア・香港における反緊縮・民主主義運動、そして過去数カ月におこなわれたクライメート・ジャスティスを求める動員などがあげられる。

 いくつかの国では、これは相互援助という新たな社会運動の成長へとつながった。その新たな運動は、現在の状況において「国の中で、国に反対して」活動するという興味深い問題を提起している。それはおそらく長期間にわたって、同じような規模では今まで存在していなかったようなコミュニティ組織を作るという問題なのである。新型コロナウイルス、そしてわれわれが生活する社会についてそれが明らかにしたことによって、こうした動員や運動は、活動を継続させ、成功させるという決意を強くすることができた。

労働の再評価と自己組織化へ


 多くの自己組織化された労働者人民のイニシアチブが、ロックダウンの期間中に、抵抗している諸領域から、農村部と都市の双方において、生まれてきた。人民からの、あるいは組織された諸セクターからのこうしたイニシアチブの例としては、小農民、先住諸民族、失業者、大都市周縁部での人々やコミュニティ、フェミニストの連帯ネットワークなどがある。こうしたイニシアチブは非常に興味深いオルタナティブを作り上げている。たとえば、伝染を確実に防ぐために布製マスクを人々に提供する共同工場のとりくみ、食料の提供やオルタナティブな生産、公的医療システムの防衛とそれを誰でも利用できるという要求、家庭で孤立している間に女性に対する暴力のエスカレーションが増えるとともに女性が担っている厳しい介護労働も増えていることへの非難などが挙げられる。

 危機の結果の一つは、非常に広範囲な民衆諸階層に、使用価値を生み出す種類の労働―エッセンシャル・ワーク―と利益を生み出すためだけに存在する種類の労働とがあることを明らかにしたことである。労働者階級のコミュニティがこの重要な労働に与えている価値を印象付けた行動によって、一般的に言っても、より特別な意味でも、医療・介護における社会的再生産という労働が重要であることが示された。家庭の中であっても、公的セクターあるいは民間セクターのいずれかで(低い)対価を支払われていても、同じように重要なのである。

 多くの国では、医療労働者への感謝の気持ちで始まった行動(拍手を送ること)によって、彼らの視野が広がり、すべての必要不可欠な労働者(エッセンシャル・ワーカーズ)、とりわけ郵便、輸送、食糧分配、小売サービスで働く労働者をも含めるようになった。こうした部門で働く者の多くが女性であり、黒人であり、移民であるということが明らかにされた。

 同時に、航空輸送の顕著な減少、そしてもう少し規模は小さいが道路輸送の著しい減少は、予期していなかった成果をもたらした。それは、「通常は」スモッグで息苦しい何千という都市で大気汚染が減ったことであり、さらに騒音が減ったことにより、この数十年間で、あるいはこれまでで初めて、多くの人々が鳥の歌声を聞けたことである。

 多くの社会運動の中で、そしてあちこちの労働運動の中で、「#ビルド・バック・ベター」というスローガンのもとで討論が始まっている。それは、「常態」というのが、おびただしい富の中での貧困、ホームレス、安全でない労働条件、女性に対する暴力、黒人や移民に対する差別、汚染やフードマイレージ(訳注)、他の側面での環境破局を意味していることを問題にするものだ。

 ロックダウンの期間中やそれが解除された後、多くの行動や労働者のストライキが起こっている。それらは、安全、不必要な生産の閉鎖、労働権の保障、賃金の支払いを求めている。たとえば、多くの国で、アマゾンで働く労働者やケータリング、輸送、物流(配達)部門の労働者が行動を起こしている。

 それゆえ、次の数カ月間における社会運動の絶対必要な任務は、雇用、社会的権利、民主主義的自由に同時に影響を与える社会的攻撃の波に直面している民衆諸階級の健康と権利を守るために、彼らを組織することであり、さらに人間と環境との持続可能な関係を再構築することである。

 (訳注:フード・マイレージとは「食料輸送距離」のことで、輸入食糧の総重量と輸送距離を掛け合わせたもの。食料の生産地から食卓までの距離が長いほど、輸送にかかる燃料や二酸化炭素の排出量が多くなるため、フードマイレージの高い国ほど、食料の消費が環境に対して大きな負荷を与えていることになる)

医療、住居、雇用、賃金、教育、移民、環境への要求が緊急


*あらゆるところで、とりわけパンデミックで打撃を受けた地域において、検査キットを利用できる人を大幅に増やすために有効な手段および蘇生病床・人工呼吸器の増設に資金を投入すること。適切な保護マスクと生物学的検査をすべての人々に普及させること。

*労働者の健康保護がおこなわれている場合にのみ経済活動を再始動させること。保護手段(マスク、ジェル、ゴーグル、手袋)をすべての被雇用者に提供すること。安全条件が遵守されない場合、被雇用者の保護および仕事から離れる権利の即時行使を認めること。

*仕事を一時停止した労働者の賃金について、休暇をとる、あるいは勤務しなかった時間を後で補填するという義務を課すことなく、企業/国が一〇〇%の責任を負うこと。その中には、移民労働者、不安定労働者、一時的労働者、家事労働者、フリーランス労働者、季節労働者が含まれること。雇用者が危機の間の賃金支払いを拒否した場合には、被雇用者の賃金を支払う義務を国が持つこと。政府は賃金を支払わないという罪を犯した企業に罰金を科すことによって、この介入の費用を回復しなければならない。

*きちんと生活するのに十分な額を保障されたミニマム・インカムを、インフォーマル部門の労働者、失業手当を支給されていない失業者、学生、それが必要な者すべてに国が提供すること。

*資本家グループによる解雇や事業閉鎖をすべて禁止すること。パンデミックが始まって以降に解雇された被雇用者を復職させること。

*学生・教員にとって安全な状況のもとで学校を再開すること。授業がなかったことにより学生に不利な扱いをおこなわないこと。

*ストライキ権を含む社会的権利を一時停止する独裁的で特例的な措置を禁止すること。とりわけロックダウン解除後にこうした措置を継続することを禁止すること。

*借家人の立ち退きをすべて停止すること。賃料、個人ローン、水道料金、エネルギー料金を一時猶予すること。住居が不安定な人々や住居を持たない人々に適切な住居を提供すること。空き家を接収すること。

*障害を持つ人々、高齢者、ロックダウンによって社会的に孤立している、あるいは孤立してきたすべての人々のために適切な社会的介護を提供すること。

*暴力の犠牲者である女性や子どもたちのために、ただちに緊急の保護措置を確立すること。暴力を振るう配偶者を排除する、あるいは犠牲者のための他の住居を提供する決定をすみやかにおこなうこと。重要な医療処置としての避妊・妊娠中絶を必要なときに利用できるよう保障すること。

*閉じられた難民センターを衛生設備のある開かれた受付センターに転換すること。すべての「不法」移民や難民をただちに合法化すること。すべての社会保護システムを利用できるようにして、あらゆる排除をやめること。超過密状態にある難民収容所、とりわけレスボス島にあるモリア収容所やアメリカ・メキシコ国境沿いの収容所をただちに閉鎖すること。


民衆諸階級の利益と社会的必要を一連の緊急解決策の先頭に

1.医療保険を含む医療システムの必要不可欠な領域すべて、および製薬業とバイオ産業、すべての医学・薬品の研究・開発は、最終的には公営化されて、公的管理のもとに置かなければならない。薬品・知見・医療製品の特許は廃止されなければならない。医学研究は、国際的な連帯精神のもとで、人間に奉仕するためだけにおこなわれなければならない。知見や技術はあらゆる国で自由に使えなければならない。

2.このことは、介護・看護・医療のための無料の社会インフラの発展と同時におこなわなければならない。社会的再生産という必要不可欠な仕事は、ほとんど、あるいはもっぱら女性が担っているが、社会的に再検討され、もっとよい報酬が与えられなければならない。

3.医療システムを再建するという状況では、すべての民間病院は公的管理のもとに置かれ、社会的所有へと移行されるべきなのは自明のことである。統一された医療・病院部門は絶対に不可欠である。

4.病院やそれ以外の医療設備を機能させるために必要な清掃やさまざまなサービスは、公共の仕事に戻されるべきである。関連労働に就いている被雇用者にはきちんと賃金を支払わなければならない。労働現場でのきちんとした医療を保障しなければならない。

5.これら全部をうまく処理できるように、一切の武器生産をやめ、武器工場を社会的に有用な生産へと転換し、これによって生まれた資金を同時に医療システムの発展に投資すること。

6.多額の所得・利益・資産には特別税を課して、医療システム拡大にかかる費用を調達すること。危機対策の費用は、最近数十年間に一般大衆の犠牲によって巨大な利益を上げ、富を蓄積してきた者たちに確実に負担させなければならない。

7.労働環境によって人々が病気になることがあってはならない。労働環境は人々の発展と健康に貢献できるものでなければならない。これは食肉産業、農業、高齢者介護、配達サービスで働く未熟練労働者にとって、とりわけ急を要するものである。労働安全、適切な衛生・健康措置が保障されなければならない。労働時間の短縮やよりよい休憩の手配。

8.高品質の公共住宅を建設する都市計画によって、居住に適さない住宅をなくすこと。

9.公共教育システムの強化・拡充。インターネット学習パッケージを提案する企業の発展を理由にした教育の民営化を拒否する。

10.主要なソーシャルメディアであるフェイスブック、ワッツアップ、アマゾン、ズームは、ロックダウンによって大きな利益をあげ、将来の巨額の利益を生み出すデータを収集している。こうしたソーシャルメディアを公的所有に移すこと。それらは(すでにあまりにも多くをかき集めているので、一切の補償なしに)、支配権を移されるべきである。それらは、利益のためではなく、透明性を持った公的なサービスとして運営されるべきである。

11.あらゆる国において、葬祭サービスを公的所有に移すこと。民間企業が人の死から利益を上げ、自らの売り上げの最大化のために人々の悲しみを操作するのは許されるべきではない。

12.持続可能な農業および世界的な食料正義(フード・ジャスティス)。社会的ニーズにもとづいて生産・分配の循環を再組織すること。フード・マイレージと食肉消費の削減。森林伐採を終わらせること。とりわけアグリビジネスによって推進されている森林伐採を終わらせること。

13.民間銀行を大株主への補償なしに収用すること。金融システムを市民管理のもとで社会化すること。個人口座への銀行手数料の一時的停止。当面のニーズを満たすために労働者階級にゼロ金利ローンを提供すること。家計への銀行債務、マイクロクレジット、家賃を凍結すること。誰に対しても水、電気、ガス、インターネットを保証すること。

14.公的債務支払いを当面の間停止することは、パンデミック期間中に大衆的ニーズを満たすために、さまざまな国が必要とする有効な資金を動員することを可能にするに違いない。債務支払いの一時停止は、不当な部分を特定し、それを帳消しにするための市民参加による監査と結びつかなければならない。

15.難民に法的地位を与え、医療・社会保障サービスが利用できるようするとともに、難民の安全な入国のために国境を開放すること。

16.先住民、移民、黒人、女性、LGBTIQ、障害を持った人々に公共サービスを提供する際の差別と闘うためには、何世紀にもわたる構造的差別と闘う積極的行動のプログラム、およびあらゆる人のニーズを真に満たすサービスを作り上げるための本当の政策決定において、コミュニティとの協議や関与をすすめるプログラムが必要不可欠である。


もう一つの世界は急を要する


現在の危機を収束させるためには、それが人間の生命の基盤を危機に陥れるので、エコ社会主義的展望を持った反資本主義的政策が必要である。それは社会的ニーズに基礎を置き、労働者階級によって、労働者階級のために組織された、銀行や主要生産手段の公的所有をともなう社会が緊急に求められていることを示している。そして、この危機が示すのは、その緊急性が気候変動の原因にブレーキをかけること、「われわれの共同の故郷」を破壊し、生物多様性を減少させ、ウイルス性の深刻な呼吸器症候群のような現代のペストへの道を開いている環境破壊を食い止めることが必要であるということである。

新自由主義の最初の一〇年間において、「もう一つの世界は可能だ!」という熱望があり、さまざまな社会分野が「もう一つの世界は可能だ!」と言って一体となったのなら、今日において、われわれは団結して「もう一つの世界は必要であり、緊急である!」と言わなければならない。われわれは共同の国際主義的行動を必要としているが、それは生命が利益よりも価値がある世界に向けた道筋をわれわれに指し示すものでなければならない。そこでは自然が商品であるのをやめるのだ。現在の危機は明らかに、資本主義生産のかなりの部分が純粋に略奪的で、完全に余計なもので、無駄に使われるものであることを示している。

二〇〇〇年代はじめ、グローバル・ジャスティス運動は、社会運動や労働組合のメンバー何百万人を団結させ、そこに急進的左翼組織が参加していった。今日では、われわれは資本主義、気候変動、差別に反対して闘うための要求を提起しながら、そうした結集を作り上げる必要がある。この目標を追求する上で、さまざまな国において、あるいは国際的レベルで、いくつかのイニシアチブが生まれ始めている。第四インターナショナルの諸組織と活動家は、そのようなイニシアチブの成功に向けて努力を傾注するだろう。社会主義・反資本主義・革命をめざす諸組織と諸潮流が、地域レベルであれ、国際的レベルであれ、共同行動を調整し、論議し、確立することは緊急に必要なのである。

新型コロナウイルス以前のいわゆる通常の状態に戻ることは不可能だろう。未来の人間と地球を脅威にさらしてきたのは、資本主義的「常態」だったからである。社会的ニーズに基礎を置き、労働者階級によって、労働者階級のために組織された、銀行や主要生産手段を公的所有に移した新たな社会へと変革することは緊急の課題である。それが根本的な社会―エコロジー的転換の展望が必要な理由である。    

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