虹とモンスーン

アジア連帯講座のBLOG

報告 10.30「守ろう!外国人労働者のいのちと権利」

DSC_1297― 外国人技能実習法3年を検証する!―
10.30「守ろう!外国人労働者のいのちと権利」



 一〇月三〇日正午から、参議院議員会館講堂で、「守ろう!外国人労働者のいのちと権利」―外国人技能実習法3年を検証する!―集会が、主催:集会実行委員会/日本労働組合総連合会(連合)、移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)、在日ビルマ市民労働組合(FWUBC)、ものづくり産業労働組合JAM、外国人技能実習生問題弁護士連絡会、日本労働弁護団、外国人技能実習生権利ネットワークで開かれた。

 指宿昭一さん(外国人技能実習生問題弁護士連絡会共同代表)が司会あいさつを行った。

 「外国人技能実習法ができて三年が経った。在留する外国人労働者は一六五万人と過去最高。そのうち技能実習生は四一万人。外国人技能実習機構が作られた。保護する政策ができたが、現場では解決していない。人権侵害も続いている。法律は五年後に見直しを付帯決議でなされている。特定技能実習制度が新たに二〇一九年四月から行われているが、四〇〇〇人未満にしかなっていない。送り出し機関・団体より中間搾取(年収の3~4年分)が行われている。日本の管理団体の搾取もある」と問題点を指摘した。

 参加している議員連盟の衆参の国会議員一〇人が紹介され、石橋みちひろ議員(立憲民主党、参院)が「三年前の法律のできる時、適正化なくして数の拡大をしてはならないと主張した。技能実習生は三年前の二〇数万人から四〇万人を超えた。現場での問題は悪化し、人権侵害が拡大している。現在の法律を原則廃止して、労働者・生活者として参画できるようにすべきだ。いっしょに未来をつくっていこう」と発言した。
 
技能実習生の訴えと支援団体からの報告
 
 次に技能実習生の訴えと支援団体からの報告(オンランも含む)が行われた。

 ベトナム人技能実習生と岐阜一般労働組合。

 ベトナム人技能実習生のKさんは五月二八日に解雇され、支援のシェルターで生活している。仕事は厳しく怒られた。会社は九回注意したが直さないので始末書を九枚書かせた。精神的に疲れてしまった。組合にかけこみ、労基署に相談したが解雇予告が通知されていれば合法だとの回答。会社は弁護士を立ててきているが話は進んでいない。次の技能実習先を探している。ベトナムの送り出し機関に五五〇〇ドル払っていてその借金が残っている。「悪い日本人だけではない。日本に来れてよかった」とKさんは発言した。

 岐阜のシェルターで一二人が生活している。一〇人の実習生とその家族二人。ほとんどが解雇されている。「仕事ができない、真面目でない」などの理由だ。即戦力に役立つ労働者が欲しい、実習生としてきちんと育てていくという姿勢が経営者に足りない。それに労働条件だけではなく、寮での集団生活や保険制度の環境の問題もある。会社は「解雇していない、本人が逃げた」と言い訳する。
 
 札幌地域労組の報告。

 栗山町実習生解雇事件。Cキノコ工場にAとBファームから働きに行っていた実習生がC工場の突然の倒産により解雇された。一四人が組合に加入した。残された実習期間九カ月分の給料の支払い、解雇予告手当、寮の使用を認めよ、と要求した。前二つの要求は認められなかった。C工場は以前にも実習生受け入れ停止処分を受けた会社であり、ファームはダミー会社だった。管理団体が会社とグルになっていた。その後新たな会社で働くことができ、解雇も撤回させ解決金もとれた。この問題では機構も管理団体もダメで組合が介入して初めて解決した。
 
 ミャンマー人技能実習生と在日ビルマ市民労働組合の報告。

  二人の女性ミャンマー人技能実習生が実情を語った。

 「一年間働いた。給料は多い時で一六万円、少ない時で八万円。電気代二万円、家賃で二万円取られた。スリッパで頭を叩かれるなど人権侵害がひどかった。管理団体におカネを取られた」。

パネル討論 外国人技能実習法3年を検証する

 続いてパネル討論が行われた。パネリスト。仁平章さん(日本労働組合総連合会(連合)総合政策推進局総合局長)、鳥井一平さん(移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)代表理事)、水野英樹さん(日本労働弁護団幹事長)、コーディネーター、小山正樹(JAM労働相談アドバイザー・在日ビルマ市民労働組合顧問)。

 鳥井さん。「実習生はベトナム、中国、フィリピン、インドネシアという順に多い。技能実習生は特に地方のどこにでもいる。機構ができたが受け入れ企業の七割で労基法違反があることが分かっている。残業代、労災、暴力の問題。人身売買的構造が変わっていない。この制度を適正化することはできない、廃止するしかない」。

 「コロナ問題で、実習生は困窮している。救済策にアクセスできない。この春キノコが不足した。それは収穫する人、集荷する人=実習生がいなくなったからだ。今後漁業がたいへんになる。この制度ではやりきれないことが明らかだ。帰れなくなった人に生活の保障をすべきだ。ブローカーを排しハローワークを使う。オーバーステイを合法化する。移民政策として受け入れる。いっしょに働き、い
っしょに生活する政策を」。

  仁平さん。「実習制度の法ができて三五年が経つ。それでもまともに働いても生活ができない。法に基づく監督指導できる機構ができたがその地方や人によって運用が変わり、違反が改善されていない。適正化が必要だ。労働市場をどう考えるか。共生社会へ抜本的改革が必要だ」。

  水野さん。「問題点。①劣悪な労働条件、賃金未払い、長時間労働、ハラスメント。②搾取。送り出し機関へ手数料を払わなければならない。③人権侵害。パスポートを取り上げる、帰国の強制など。その原因は①実習制度の目的は技術移転。しかし、日本の企業は単純労働者を確保したい。技術を教えていない。②転職の自由がない。この制度は廃止すべきだ」。

  「労働力としてではなく、人として受け入れる。除染作業を外国人労働者にさせることは違法だ。実習期間は柔軟に、転職は自由、日本人に認められている権利はすべて同じに、受け入れは公的機関にすべきだ」。

  最後に、「外国人労働者は、地域における『生活者』であり、社会保障や行政サービス、子どもの教育、住宅保障といった共生のためのインフラ整備は待ったなしの課題だ。政府は共生社会の実現に向けて覚悟を示し、国民的議論を行うべきだ」とする集会アピールを採択した。

(M)

報告 10・26臨時国会開会日行動

1026いのちをまもれ!敵基地攻撃能力保有反対!
学術会議の任命拒否撤回!改憲反対!

共謀罪廃止!総選挙勝利!
10・26臨時国会開会日行動


 一〇月二六日正午から、衆議院第二議員会館前で「いのちをまもれ!敵基地攻撃能力保有反対!学術会議の任命拒否撤回!改憲反対!共謀罪廃止!総選挙勝利! 10・26臨時国会開会日行動」が主催:戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会、共謀罪NO!実行委員会、安倍9条改憲NO!全国市民アクションで行われ、四〇〇人が参加した。

 戦争する国づくりストップ!憲法を守り、いかす共同センターの岸本さんが「国会を開いてこなかった自公政権の責任を追及したい。この間、学術会議再任拒否問題があり、コロナ対策が不充分で、倒産・失業が広がっていて、年を越せない人が大勢出ている。福島汚染水、辺野古基地建設、敵基地攻撃能力の保持と重大な問題が目白押しだ。命を大事にする政策転換を。総選挙で菅政権を終わらせよう」と開会のあいさつをした。



 参加した政党の代表が次々に檄を飛ばした。

 伊波洋一さん(沖縄の風、参院)は「日本が米国の盾になる射程三〇〇キロのミサイルを持ち込んでの演習をわが国土でやっている。フィリピンはこうした演習を拒否した。日米共同演習を年間六〇回もやっている。日米安保は完全に変質している。辺野古への米軍基地、先島への自衛隊基地建設をやめさせ、平和を守ろう」と発言した。

 福島みずほさん(社民党、参院)は「菅首相の所信表明演説は何のビジョンも
なかった。自助・共助・公助そして絆と言っているが、自殺者とりわけ女性が増えている。自助を先に持ってくるなら政治はいらない。外交安全保障問題で、イージス・アショアの代替に敵基地攻撃能力の保有を打ち出している。これは憲法違反で絶対に認められない。ウイルスに打ち勝った証として、来年夏のオリンピック・パラリンピックの実現をとも言う。それならPCR検査をきちんとやれと言いたい。一日も早い退陣を」と語った。

 田村智子さん(共産党、参院)は「核兵器禁止条約が発効し、効力を持つことになり、おどしも、持つことも禁止される。廃絶のプロセスも求めている。日本政府は批准し、核保有国に廃絶を求めるべきだ。日本学術会議問題は、言論・表現の自由の問題でもある。コロナ対策の補正予算七兆三千億円が残っている。失業・事業所がつぶれているのに、なぜ政治は解決できないのか。次の政権の構想ができるようにがんばっていこう」と述べた。

 近藤昭一さん(立憲民主党、衆院)が「最近、石垣島、辺野古に行って現地の人と交流してきた。『なぜ、ミサイル基地を作るのか、敵基地攻撃能力を持つのか』と言われた。平和主義でいくと決意した。敵基地攻撃能力を持つことは憲法違反である」と述べて、臨時国会でも政府を追及する決意を述べた。



 次に、共謀罪との闘いを弁護士の海渡雄一さんが「衆院では継続審議になっているが、参院でも共謀罪廃止法案を出してほしい。刑事事件とされたことはないが、あらがう市民・学者を黙らせる。表現の自由を奪うものだ。デジタル法案を出そうとしている。要注意だ。省庁の壁を壊すと言っているが、壁で個人のプライバシーが守られてきた。デジタル庁ができれば自由に調べられるようになる。監視社会になってしまう」と警告を発した。

 改憲問題対策法律家6団体連絡会の大江弁護士が学術会議任命拒否問題について、その危険性を指摘した。ふじさわ・9条の会の島田さんが毎日スタンディングをして学術会議問題を訴えていることを報告した。武器取引反対ネットワークの杉原さんが、午後三時から公明党へ「長距離ミサイル購入・開発に反対しよう」と訴える行動を提起した。

 最後に高田健さんが、11月1日大阪都構想住民投票日、11月3日国会正門前行動、11月15日柏崎市長選(元社民党参院議員の近藤正道さんが立候補)、11月19日国会前行動などを提起した。

(M)

案内 11.8「立皇嗣の礼」反対緊急行動

天皇も跡継ぎもいらない!
11.8「立皇嗣の礼」反対緊急行動


[日 時]11 月8日(日)15:30 集合/16:00 デモ出発
[集 合] 原宿・神宮橋(JR 原宿駅のすぐ南側)


 コロナ禍によって延期されていた「立皇嗣の礼」が 11 月8日に行われることとなった。

 これは、天皇徳仁の弟である秋篠宮が、次の天皇となることを内外に宣言する儀式である。コロナ状況を受け、海外からのゲストを含む 730 人程度が招かれる予定であった「饗宴の儀」は中止となり、「宣明の儀」の参加者も 350 人から50人程度に減らすなど、規模は縮小されるが、天皇制存続のための神道儀礼を含む儀式であることに変わりはない。
 
 「立皇嗣の礼」は、昨年の明仁の退位、徳仁の新天皇即位に続き、文仁が次の天皇となることを宣言する──天皇制という制度がこれからもこうして永続していくのだということを宣言する一連の代替わり儀式の締めくくりと位置付けられている。そこには多額の税金が投入される。この儀式だけでなく、秋篠宮が「皇嗣」となることによって、「お世話をする」ための職員はこれまでの 20人余りから 50 人以上に増員され、その住居も約33 億円かけて大規模改修される。延べ床面積も約 1600 平方メートルから 5500 平方メートルにまで拡張されるのだ。これとは別に、完成までの仮寓所の費用として、約 9億8000万円が支出される。

 違憲の神道儀礼を含んで行われ、多額の税金を浪費する「立皇嗣の礼」に反対!!天皇制はいらない。天皇もその跡継ぎもいらない! 「立皇嗣の礼」反対の緊急行動を呼びかけます。ともに声を上げましょう!!

 
主催 ● 国家による「慰霊・追悼」を許すな!8.15 反「靖国」行動
  連絡先 090ー3438ー0263
  
【呼びかけ団体】
アジア連帯講座/キリスト教事業所連帯合同労働組合/研究所テオリア/市民の意見30の会・東京/スペース21/戦時下の現在を考える講座/立川自衛隊監視テント村/反安保実行委員会/反天皇制運動連絡会/ピープルズ・プラン研究所/「日の丸・君が代」強制反対の意思表示の会/「日の丸・君が代」の法制化と強制に反対する神奈川の会/靖国・天皇制問題情報センター/連帯社/労働運動活動評議会


報告 アジ連10.16講座 11月大統領選挙 ~ 分裂するアメリカ BLM運動と社会運動、左派は 今

配信:喜多幡講座講師:喜多幡佳秀さん(ATTAC関西グループ)

 10月16日、アジア連帯講座は、全水道会館で喜幡多佳秀さん(ATTAC関西グループ)を招き「11月大統領選挙 ~ 分裂するアメリカ BLM運動と社会運動、左派は今」をテーマに公開講座を行った。

 11月大統領選挙に関する米メディア各種世論調査では民主党のバイデン候補の優位が報じられている。トランプは、劣勢ばん回に向けてコロナウイルス対策による郵便投票に対して「大統領選で郵便投票が広範に導入されれば、歴史上、最も不正確で詐欺的な選挙になるだろう」「選挙で不正が行われれば辞めない」と言い出している。迷走・流動的な大統領選をいかに分析し、次の局面を見いだすのか。

 講師の喜多幡さんは、米国の労働者階級と左派の方向性を問題提起してきた。その柱は、MeToo、ブラック・ライブズ・マターなどの新たな運動、民主党内サンダース議員支持勢力と左派州議員などと連携しトランプの再選阻止の陣地をひろげていくことであり、この闘いは同時に資本主義の危機に対する対案を掲げる政治勢力の登場を戦略的に準備していくことであると強調してきた。

 講座では最新のトランプ派・極右グループの動向、米左派情報の紹介なども含めて問題提起した


喜多幡さんの講演 

(1)11月大統領選挙はどうなるのか?

 11月3日投票の大統領選挙を前に、米国では、どちらが勝つかよりも、バイデンが勝利した場合にトランプが結果を受け入れるかどうかが最大の関心事となっている。何が起こるかわからない。すでに異例の事態が起こっている。トランプは、大統領選挙の結果を受け入れない可能性を示唆し、武装した極右勢力の行動を容認し、メディアを動員している。

 トランプ政権の継続は何を意味するか? 次の四年間、アメリカ社会の分裂とファシズムへの動きに決定的に弾みがつく。大統領の権限の無制限の拡大、国際社会の分裂、国際機関や条約からの離脱が既成事実となる。その一方で米国とイスラエル、インド、英国、オーストラリアによる新たな枢軸(国連・国際機関の空洞化)が軍事的緊張と偶発的戦争の危険性を一層高める。「宇宙戦争」、サイバー戦争、小規模核兵器の実用化が現実の脅威となる。ただし後者は民主党政権の時代から始まっていたことに注意しておかなければならない。

 多くの人たちが懸念していることは気候危機、感染症対策への決定的打撃、白
人優位主義と移民・黒人への差別・抑圧・排除の拡大だ。ただし、この点でもは民主党政権が頼りになるわけではない。

特異な選挙制度と極右勢力の動き

 前回(2016年)の大統領選挙では、民主党のクリントン候補が300万票近くの差で多数の支持を獲得していたにもかかわらず、獲得した選挙人の数で上回るトランプの「圧勝」となった。2000年の大統領選挙では、激戦となった3つの州で双方が勝利を主張したため、開票作業のやり直しや裁判所での審理のため35日間にわたって空白が生じた。

 その背景には、独立戦争後の憲法制定時に、普通選挙導入にあたって南部の奴隷主への妥協として導入された選挙人制度が、「奴隷解放」の後も温存されてきたという事情がある。この制度の問題は常に指摘されてきているが、二大政党にとっては第三の政党を事実上排除するために都合のよい制度であり、憲法に規定された制度であるため、修正には手続き上のハードルも高い。

 有権者登録制度にも問題がある。全国的な有権者名簿というものが存在せず、
投票するには自分で選管に登録して有権者の資格を得なければならない。登録制度は不正を防止するために設けられたものだが、黒人や中南米出身者、貧困層の投票を抑制するために利用されている。

 今回の選挙では郵便投票が焦点になっている。2016年大統領選では郵便投票の
割合は20.9%だったが、今回はコロナ感染の影響もあり50%を超えると予想される。これがなぜ問題になっているのかは後で述べる。

 そのような背景の下で、今回の選挙がどうなるのかをめぐって、気になる動きが続いている。

 4月以降、テキサス、イリノイ、フロリダ、テネシー、インディアナ、アリゾナ、コロラド、モンタナ、ワシントンなどの州でロックダウン解除を求める集会が開かれ、その中で極右派の動きが目立ってきた。4月30日にはミシガン州ランシングで「自由のためのミシガン連合」などのグループが武装デモを行い、州議会前を一時的に占拠した。

 5月下旬からブラックライブズマター(BLM)の運動が全国に広がる中で、トランプは、オレゴン州ポートランド、ウィスコンシン州ミルウォーキーなどのBLMのデモ鎮圧に連邦の治安部隊を派遣し、弾圧をエスカレートしている。それに呼応して「第二の南北戦争」を呼びかける「ブーガルー運動」などの武装勢力が活動を活発化させる。このグループは6月に、北部カリフォルニアでデモ警備中の二人の警察官を襲撃・殺害した。これは暴力事件によって騒乱状態を作り出すことを目的とした挑発行為だったと考えられる。

 決定的な転機となったのはトランプが7月19日放送のFOXニュースのインタビューで、選挙に敗れた場合に選挙結果を受け入れるかという問いに対し、「単純にイエスとは言えない」、「選挙で不正行われれば辞めない」と言明したことだ。その後もトランプは同じ趣旨の発言を繰り返している。民主党が郵便投票を通じて大がかりな不正を行うという根拠のない情報を拡散して、とくに激戦区での投開票の「監視」、つまり妨害と有権者への威圧を扇動している。

 さらに、郵便投票の業務を委託されている郵政公社が7月末に各州の選挙管理委員会に「投函された票が期限までに届かない恐れもある」と警告する書簡を出した。6月に公社総裁に就任したルイス・デジョイはトランプへの巨額献金者だ。彼は郵便投票期間中の人員の配置や業務時間の延長の措置を拒否して、意図的に郵便投票の妨害をはかってきた。

 8月19日、トランプがテレビインタビューで極右グループQアノン(謀略論者で、トランプを救世主として崇拝)を擁護する発言をした。

 8月25日、ウィスコンシン州のBLMのデモ(同23日に起こった警察官による黒人の殺害への抗議)で、白人のティーンエージャー(武装グループのメンバー)が発砲、デモ参加者2人を殺害、1人に重傷する事件が発生している。

 9月29日、FBIが「今から1月20日(大統領就任式)までの間、白人優位主義グループによる暴力の脅威がある」とする報告書を発表。同日、トランプは「プラウドボーイズ」などの武装グループを擁護する発言をした。

 10月8日、FBIがミシガン州のグレッチェン・ウィトマー知事(民主党)の拉致計画を阻止し、13人を逮捕したと発表した。トランプは「ウィトマー知事打倒、ミシガン州の奪回」を呼びかけていた。

 逮捕されたクロフトは「愛国運動」のリーダー。ソーシャル・メディアを通じて扇動していた。同州ではミシガン民兵隊 (MMC、一九九四年に元空軍幹部のノーマン・オルソンが創設)、ボランティアを組織し、軍事訓練を行っている。ピーク時は一万人以上、現在は数百人だと言われている。

 「空位の79日間」

 大統領選投票日の11月3日から1月20日にワシントンで大統領就任式が行われるまでの79日間は何が起こるかわからない。次の大統領が決まらない「空位の79日間」となるかもしれない。

 トランプ陣営は「不正防止」のために激戦区に五千人のボランティアを派遣すると威嚇している。開票結果に不服を申し立てるために弁護士の集団が準備を整えている。

 郵便投票は開票に時間がかかることから、即日開票分は激戦区を除く州の開票結果が先に発表されることになる。この時点では共和党が先行することが多い。激戦区の開票結果はまだ確定しない。だからこの時点で、つまり投票日の深夜にトランプが「勝利宣言」を出し、翌日から支持者たちが街頭で祝勝のパレードを繰り広げ、それを背景に残った州の開票あるいは開票結果の発表を妨害する可能性、その際に何らかの暴力的衝突を引き起こし、それを口実として強権的な措置を発動する可能性、バイデンがそのような事態を回避するために何らかの交換条件を付けて「敗北宣言」を出す可能性。さらに、選挙の結果に関わりなくトランプの任期は1月20日までであり、その間に権力を悪用することは間違いない。

 トランプ再選を阻止するには、①大差で敗北させることと、②街頭での闘争、非暴力の抵抗が必要だ。後で述べるように、米国の左派や社会運動は、あらゆる可能性に備えて、さまざまな方法で広範な大衆を動員しようとしている

トランプの4年間

 トランプ政権の下での政策上の変化を見ておこう。

そのポイントは、①金融、軍事産業、エネルギー産業の影響力が圧倒的優位にあることは変わらない ②米国経済の衰退、国際的地位の後退は加速 ③中東政策はオスロ合意の事実上の廃棄。イスラエルによる併合とアラブ諸国との関係の「正常化」(パレスチナ問題を否認する「最終解決」への動き)、イランとの核合意の破棄・封じ込め ④「新冷戦」・・・中国との対決路線:双方に相手の出方を見ながら「レッドゾーン」の見極め/確定へ(ギリギリまで挑発)。 ⑤対ロシア宥和政策と対北朝鮮政策は、民主党および共和党内での抵抗によって挫折 ⑥NATOなどの同盟関係の変調などが上げることができる。

 トランプ政権の下での社会の変化については、次のことが特徴である。「フェイク」が広範に受け入れられ、トランプの強力な支持基盤となっている。トランプは社会を分断し、自らの支持基盤にだけ訴えかけるという政治手法を使いながら、大衆の中に「強いリーダーシップ」への期待を引き出していった。

 トランプ政権の政策に対抗して気候危機、移民問題、コロナ感染等では州政府が独自の政策を打ち出してきた。

 注意しなければならないのは、これらの事態が起こっているのはトランプ政権の特異性ではなく、一過性のことでもなく、米国社会の変化に根拠があるということである。それは世界的な現象でもある(ドテルテ、モディ、ボルソナロ、ネタニヤフ、ジョンソンなど)。ファシズムが現実の問題となっている。

 しかし、このようにファシズムが台頭する条件は、民主・共和両党の新自由主義政策や移民規制、人種差別的な警察活動の容認等によってもたらされ、トランプ政権の下で加速したのであると言える。バイデンが勝っても、この条件が解消するわけではない。

 それではこの4年間、社会運動にはどのような変化があったのか。そのポイントを簡単に列挙しておく。

①  2017年1月の女性マーチがあった。全国で4~500万人が参加。その後は運動内部の論争(中絶の選択権をめぐって、イスラム系グループの「反ユダヤ主義」的発言をめぐってなど)があり、後退。

  だが2020年1月は移民の権利、クライメートジャスティス、生殖に関わる権利をテーマに開催した。10月17日には最高裁判事の任命に反対を掲げたマーチを計画している。Me Too運動は持続的に取り組まれている。

 ②移民の権利をめぐって、地域レベルでの運動へと発展した。 

 ③労働運動は、教員、物流・倉庫(アマゾンなど)、医療、清掃、小売り店など、とりわけ女性、マイノリティーが多い、組合員数は回復の兆しがみえる。

 ④若者の運動は、移民、奨学金、気候危機などをテーマに諸グループが登場している。
 
ブラックライブズマター運動の歴史的意味

 ブラックライブズマター運動の背景としては、警察官による暴力、日常的な監視と不審尋問や冤罪、閉塞感などがある。「黒人の命だって大事なんだ!」という叫び・・・広く共有されている。

 ここでブラックライブズマターの訳語について、私の意見を述べておきたい。このスローガンを黒人が叫ぶ場合は「黒人の命も大事」と訳しても特に問題はない。非黒人が叫ぶ場合、「も」には抵抗があるが「黒人の命は大事」では意味不明。被差別の当事者の叫びであることにメッセージの強さがあり、当事者性を弱めて一般論的な議論に回収してしまうような訳語は避けるべきだろう。そういう観点から、私はとりあえずは「ブラックライブズマター(黒人の命を守る運動)」と表記しているが、脈絡によって、使われている脈絡に想像を馳せることが大事だと思う。

 現在のブラックライブズマターの叫びは、公民権運動以降も変わらない人種差別に対する怒りの爆発であり、新たな歴史の開始である。警官の暴力によって命を奪われた青年への同情、映像を目にした時の衝撃、警察官への怒りから、事件を隠蔽しようとする警察そのものへの怒りへ発展している。「警察の解体、警察予算の削減」の要求は、改良ではなく革命!を意味している。

 BLMは非暴力を掲げている。一部には商店の襲撃・略奪などの暴力的行動があったことが報じられている。その一部は挑発分子によるものだが、多くは自然発生的なものだ。活動家たちが必死で防ごうとしても防げないほど、人々の怒りが蓄積されてきているのだ。襲撃されたのは警察署や警察車両以外では多くの場合、警察と連携して黒人を差別し、監視してきたスーパーなどであり、コミュニティーを侵略し、破壊してきたことへの正当な怒りである。

 BLMを支持している人たちは、警察で取り締まるよりも、学校や住宅に予算を出せば犯罪や麻薬は減ると主張してきた。治安や財産よりも命と尊厳が大事なのである。

 当初は、「警察の解体」はともかく、警察官の行動への規制や予算削減は多くの民主党市長も受け入れる事態へとなっている。さらにミネアポリスやシアトルでは一時的に警察官がデモ隊との衝突を避けるために州庁舎前から退去するほどだ。

 このようなプロセスを経て、白人優位主義者への反発抗議運動が一連の白人優位主義のモニュメントの破壊に向かったとき、「反革命」が始まった。トランプは「アンチファ」との「テロとの戦争」を呼びかけ、連邦の治安部隊(国境警備隊など)を動員し、民主党市長によって事態の収拾へと至った。その後は武装した白人優位主義者たちが街頭を跋扈する局面に入っている。これはアメリカの建国以来の歴史を問い直し、根本からの変革を迫る新しい局面の始まりである。

 「民衆のアメリカ史」の著者で政治学者のハワード・ジンは、白人優位主義の観点から語られてきた米国の歴史、特に建国や奴隷制廃止に関連して称揚されてきた「自由と平等」や民主主義が、黒人への差別と支配を組み込んだ階級支配を覆い隠すものであることを容赦なく暴き出した。彼は「・・・上流階級としては、中産階級に忠誠を誓わせなければならない。そのためには、中産階級を引きつけるようなものを差し出す必要があるのだが、自分たちの富や権力をそこなうことなく、そうする方法はあるだろうか。1760年代から70年代にかけて、支配者たちはまさにぴったりな道具を見つけ出した。それは<自由と平等>という合言葉だった。この言葉が、イギリスに反旗をひるがえすのに充分なだけの、上流階級と中産階級の白人を団結させていくことになる――しかも奴隷制も社会的不平等も終わせることなく」と述べている(ハワード・ジン「学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史」(あすなろ書房、2009年)。

 トランプは九月中旬に、「ホワイトハウス・アメリカの歴史会議」で、「左翼はアメリカの歴史を嘘とデタラメで歪め、否定してきた」として、ハワード・ジン(「学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史」(あすなろ書房、2009年))と「ニューヨーク・タイムズ」の「1619プロジェクト」を名指しで攻撃した。学校での「愛国教育」の必要を強調した。(「アトランティック」紙、9月24日付)

 米国の建国(独立革命)の歴史と「建国の父」たちの物語は「神話」となったが、BLM運動は白人優位主義との闘いの中で、この神話の解体に手を付けた。しかも白人優位主義者たちが疎外感や将来への不安を強め、ナショナリズムを拠り所にしようとしている時にである。

 ハワード・ジンが語っているように、黒人への差別は建国以来の階級支配の柱に据えられていた、したがってBLM運動はそのような階級支配を暴き出し、打倒する闘いを目指しているという点で、公民権運動の限界を超え、未完のアメリカ革命(民主主義革命)の完遂に向けての歴史的な一歩を踏み出した。支配階級には「黒人奴隷と貧困白人とが結束して、第二のベーコンの反乱を起こす」(同書)という恐怖が蘇ったに違いない。

 もし2020年大統領選挙におけるトランプが勝利するならば、そのような闘いに対する手痛い反革命となるだろう。

 11月大統領選挙をめぐる左派と大衆運動の状況

 大統領選挙をめぐる左派と大衆運動の立場について、主な特徴を簡潔に列挙しておく。

 ①民主党内の左派とサンダースの支持者たちは、バイデン支持だ。バイデンを通じて国民皆保険制度、グリーンニューディールなどの要求の実現を目指している。

 ②DSA(アメリカ民主社会主義者党)は、基本的には(多数は)バイデン支持だ。戦術的に「まずトランプを阻止し、それからバイデンと対決する」と設定し、民主党内左派にとどまる。

 ③緑の党は、H・ホーキンスが立候補した。H・ホーキンスは、「トランプを追い出さなければならないが、バイデンに任せておいては気候変動も人種差別も期待する進歩は実現しない。つまり、バイデンは気候変動否定論者と同じような行動をしてきたし、国民皆保険制度に関する政策を受け入れなかった。われわれがバイデンの政策を受け入れれば、バイデンが当選した場合にも彼に政策を受け入れさせるのは難しい。

 前回、緑の党が立候補をやめていたらクリントンが勝っていたという根拠はない。緑の党がメディアから無視されているのは不当。緑の党への票は反トランプの票であって、トランプを利するものではない。有権者にとって環境問題はもっとも重要な問題のはずだ。」と語っている。(「ニューズウィーク」とのインタビュー、2020年9月11日)

 左派の間での議論は、常に二つの議論が繰り返されてきた。

 一つは「より少ない悪」(民主党への投票を呼びかける)という考え方への批判であり、「第三の候補」の挑戦という主張もあった。この点ではSWP(社会主義労働者党)の独自の闘いや、2000年の消費者運動家ラルフ・ネーダー氏(288万2955票、2・74%)の取り組みがあった。緑の党は2004年以降、一貫して独自候補を立てて健闘している。

 共和党と民主党はどちらもブルジョワ政党であって、政策も変わらないし、ど
っちが政権を取っても何も変わらないというのは確かに現実である。しかし、この間の大統領選挙、特に2004年以降の選挙では、政策上の違いよりも、アイデンティティー・価値観・「雰囲気」の違いなどに着目すべきだと思う。「トランプに勝たせてはならない」という意識は重要である。

 同時に実施される両院の選挙、とくに下院選挙での左派議員(民主党)の勝利との連動や、独立的政党(ワーキングファミリー党など)、ローカル政党との連動は一定の成果を上げている。

 もう一つの議論は「労働者の党」あるいは「社会主義を掲げる党」の建設をどう展望するのかである。この点ではこれまで多くの挑戦と失敗があった。労働者階級や労働組合の受動性(保守性)があり、一方で黒人運動やフェミニズム運動からの急進的な要求に応えられていないという問題があった。

 そのような状況の中でサンダース・ブームとDSAの登場は、新たな可能性と
評価していいのではないか。

 連動して若者の間での社会主義への関心が高まっていることも、その現われだ。ただし、その内容は「グリーン・ニューディール」(資本主義の改良)であって、資本主義の廃絶がイメージされているわけではない。社会運動との結びつきが重要であり、DSA内の「分岐」も試行錯誤の一つの段階として考えるべきだろう。古い議論を繰り返すのではなく、ここから始まるということが重要であり、「何
が始まっているのか」を理解することから始めるべきだろう。

 最後に若者のグループについて紹介したい。ウエイブ配信されている主なグループをピックアップした。各グループの主張等の詳細は省略するが、直接、ブログをチェックしていただきたい。

①  Dream Defenders(警察官の暴力と人種差別に抗議、2012年) 

②  March for our lives (銃規制、2018年) 

③  Sunrise Movement (気候変動対策・再生エネルギー、2017年) 

④  United We Dream Political Action Committee(移民の青年のグループ、28州に100のグループ、40万人)など100以上のグループがProtect the Result Coalitionを結成(9月25日)。投票の権利を守るための行動を呼びかけ、投票日の動員などをブログ#COUNT ON USで発信している。

 参考までに「#COUNT ON USのよびかけ文」〈https://wecountonus.org/〉 を紹介しておく。

 「今秋、私たちの世代はトランプを打ち負かし、この国の変革を始める力を持っている。私たちには私たちの力が頼りだ。私たちは移住者の保護を勝ち取ったドリーマー(夢見る者)だ。私たちはNRA(ライフル協会)に挑戦した子どもたちだ。私たちの世代はブラックライブズマターを全米の鬨の声にしたし、グリーンニューディールを優先的な政治課題にしてきた。ドナルド・トランプと彼の大金持ちの仲間たちは自分たちが負けることを知っている。だから彼らはわざと私たちを引き裂き、私たちの声なんか関係ないと思いこませ、選挙結果を盗もうとする企みから私たちの目をそらせようとしているのだ。私たちは彼らを止めるために結集しようとしている」。


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報告:10.11「新型コロナと監視社会」小笠原みどりさんの講演

配信:小笠原みどり  10月11日、盗聴法に反対する市民連絡会は、かながわ県民センターで「新型コロナと監視社会」というテーマで小笠原みどりさん講演会を行った。

 連絡会は、世界的な新型コロナ・パンデミックのなかで、各国の政府は感染拡大を抑えると称してスマホのアプリなどを利用して感染者接触確認や感染経路を特定し、膨大な個人情報を収集している状況に対して、目的外の使用の危険性、民衆管理の一環としての政策の危険性を批判してきた。あらためてコロナ対策を口実とした監視社会化の加速化に反対し、その役割を担う政府や監視テクノロジー企業に対して統制していくための方向性を探った。

 こういったアプローチからカナダ在住の監視研究家・小笠原みどりさんの講演をオンラインで行った(講演要旨・別掲)。

 なお小笠原さんは、米国家安全保障局による世界監視システムを告発したエドワード・スノーデンに日本人ジャーナリストとして初めてインタビューし、著書に『スノーデン、監視社会の恐怖を語る』『スノーデン・ファイル徹底検証』(共に毎日新聞出版)などがある。

 宮崎俊郎さん(共通番号・カードの廃止をめざす市民連絡会)は、「菅政権になってデジタル化を進め来年デジタル庁をつくると言っている。上から強制的な仕組みを作るということだ。地方自治体のシステムも統一かすると言っているが、個人情報保護条例も含めて否定し、国が統一化していこうとしている。その中にマイナンバー制度を位置づけ、デジタル番号とつなげカードを持たせようとしている。デジタル庁に反対していこう」と訴えた。

 角田富夫さん(共謀罪NO!実行委員会)は、「実行委員会としてデジタル庁反対の取り組みを行っていく。デジタル庁は監視社会の柱になる。準備されているデジタル庁法に反対していこう」とアピールした。 (Y)

■小笠原みどりさん講演要旨

 各国政府は、スマートフォンを使う市民一人一人の生活・個人情報データを監視しコロナ対策を行っている。政策的にコロナ緊急事態を宣言し、その一環として「ビッグデータ」利用に門戸を開いた。つまり、人々の「行動変容」を予測し、掌握することにある。まさに新たな「コロナ資本主義」が作り出されようとしている。ナオミ・クラインが規定したショック・ドクトリンをおおいに利用した。

 これまで政府と企業はビッグデータによって利害を一致させてきた。1990年代からインターネットの普及によりIT企業が台頭、個人情報を利用したターゲット広告で巨大な利益をあげてきた。

 米国政府は、2001年から「対テロ戦争」の下で極秘裏にデジタル通信システムに監視機器を埋め込み、個人情報の大量収集を開始した。人権団体、労働組合、ジャーナリストなどを対象に情報を収集し様々な妨害をしてきた。連動して日本も2013年から特定秘密保護法、共謀罪、盗聴法などを制定し、プライバシー侵害を合法化させ、市民監視を強めてきた。
 
 各国のコロナ対策と称する接触者追跡アプリの危険性は、こうだ。

 ①移動の追跡―GPSによる位置情報から携帯使用者の移動した場所を特定、追跡する。感染可能性を予測し、政府が外出を許可したり、自己隔離を要求したりする(中国、イスラエル)。

 ②隔離の強制―政府によって隔離の必要があると判断された人たちが、実際に自己隔離を実行しているかを位置情報によって見張る。隔離場所から離れると、本人と警察に警告が発信される(台湾、ポーランド)。

 ③接触者の追跡―携帯アプリによって、近距離で一定時間接触した者同士の携帯電話がお互いを暗号化して記録し、後で感染が判明した場合、アプリに感染を入力すると、接触した相手に通知される(シンガポール、イギリス、アメリカ、日本)。

 接触者追跡とは、感染経路を明らかにし、感染拡大を防ぐため、これまで保健所などで専門家が感染者から聞き取りをしてきた。感染者に接触した人々を割り出し、連絡して、検査や自己隔離を促す。長年の新自由主義政策によって日本や欧米各国で保険医療が削減され、人手と資源が不足しているため接触者追跡アプリが急ごしらえされる。 

 日本の接触者追跡アプリは、①プライバシーに「最大配慮」?②ブルートゥース(返信通信機能)③陽性者との接触の可能性を通知、検査の受診などを案内、となっている。だがPCR検査態勢の不十分な状況を前提にしており、いまだに改善されていない。

 そもそも個人の健康情報、身体情報の掌握はプライバシーの侵害であり、人権
被害の危険を繰り返してきた。ハンセン病、水俣病、被曝、精神疾患など、病歴や健康情報をもとに本人や家族が、結婚や就職などで社会的に差別されてきた例は枚挙にいとまがない。

 それだけではない。近代の政治は、個人の身体に優劣をつけ、優生思想によっ
て「生きるべき人間」と「死ぬべき人間」の線引きをしてきた。例えば、ナチスの強制収容所、障害者の不妊強制手術、先住民虐殺などを見れば明らかだ。

 企業のねらいは、健康情報をもとに人々の心身の状況を把握し、利益を最大化
するとともに、リスクを回避しようとすることにある。
 
 あらためてプライバシーの意味をとらえ直す必要がある。3つの観点から捉えよう。

 「プライバシーと自由」とは、通信の秘密、内心の自由、表現の自由、個人の尊厳などを守ること。「プライバシーと平等」とは、人種/民族、性別、年齢、職業、収入、学歴、その他の属性によって差別されることを防ぐこと。「プライバシーと民主主義」とは、人々の個人情報を握った指導層ではなく、人々が政治を決定することを促すこと。

 参考例として「カナダ自由人権協会の接触者追跡アプリに対する声明」がある。声明は、「・意味のある同意を伴っているか ・目的が限定され、正当性があるか ・必要性が証拠とともに認められるか ・有効性はあるのか ・プライバシー侵害の度合いがより少ない他の方法がなく、達成しようとする目的に対して失うものの大きさが見合っているか」について問いただしている。

 これらの観点からの個人情報保護法制が必要だ。一つの柱は、データ収集、移動、保管、修正、消去について透明性のあるルールを。目的外使用した企業への罰則を伴うEUの一般データ保護規則(GDPR)の水準に到達し、さらに、侵害性の高い監視技術やデータ収集自体を禁止(顔認証、非公開情報)し、あらゆるデータ・システムにプライバシー評価を導入することが重要だ。

 さらに個人情報保護の監督システムが必要だ。つまり、現在の日本の個人情報保護委員会は圧倒的に企業よりであり、人権範囲が狭い個人情報でしかない。独立した第三者機関に勧告以上の指導権も必要だ。プライバシーをデジタル時代の自由、平等、民主主義を確保する権利としてとらえ直し、要求する。すでにEUで勝訴が続いている。

 現在のスマフォアプリなどを通したコロナ対策は、人々の「行動変容」ばかりが対策として叫ばれる異様な世界だ。強権政治のパンデミックが同時進行している。ショック・ドクトリンとしてのデジタル庁によって自由、平等、民主主義の破壊を許してはならない。

報告 9.11 アジ連 公開講座 「入門:気候危機に立ち向かうエコロジー社会主義」

配信:寺本講座9月11日、アジア連帯講座は、「入門:気候危機に立ち向かうエコロジー社会主義」をテーマに公開講座を行った。

寺本さんは、8月に発刊された「エコロジー社会主義  気候破局へのラディカルな挑戦」著者:ミシェル・レヴィー/柘植書房新社)の翻訳を行った。ミシェル・レヴィーのアプローチをバネにクライメート・ジャスティス(気候正義)運動、「システム・チェンジ」を目標としたエコ社会主義(社会主義とエコロジーを結合させた新たな社会の展望)の取り組みを提起している。

講座は、①気候変動から気候危機・気候破局へ ②温暖化否定論者は何を言っているのか? ③気候危機と地球温暖化 ④パンデミックが映し出す気候危機の本質 ⑤システムを変えよう!気候を変えるのではなく!を柱に提起した。集約として、エコロジー社会主義を実践的に具体化し、共有化していく作業を共に担っていくことを確認した。

寺本講演


 COP21(2015パリ)、COP23(2017ボン)の対抗アクションに参加してみて、「システムを変えろ・気候を変えるな」というスローガンが、とりわけヨーロッパの気候変動に対する闘いの中で定着していることを目の当たりにした。このスローガンは、2009年のコペンハーゲンでのCOP以来、大きな基軸として掲げられてきたものである。それではシステムを変えるというとき、変えた先にあるものは何か、未来の社会のイメージがないと先に進めないのではないかと考えた。その中でミシェル・レヴィーの「エコ・ソーシャリズム」という本を翻訳してみようと思い、このたび『エコロジー社会主義 気候破局へのラディカルな挑戦』として、柘植書房新社より出版されることになった。

 目次を見てほしい。序章の「二一世紀の大洪水」は、昨年、ミシェル・レヴィーがフランス語版の改訂版に書き下ろしたもので、昨年の国連の気候行動サミットでのグレタ・トゥーンベリの演説なども網羅している。それ以外は、2000年~2010年代にかけて彼が書いたものだ。第5章の「マルクス・エンゲルス・エコロジー」は、斉藤幸平さんの論文も言及がある。レヴィーは、彼の立場とは違うという形で書いている。7、8章は、レヴィーはもともとブラジルの出身なのでラテン・アメリカの先住民の運動に大きな関心と力点を置いている。

 現在、世界は、① 気候危機 ② コロナ・パンデミック危機 ③ 政治・経済・社会的危機が同時に進行している。

 例えば、アメリカが発火点となったブラック・ライブズ・マターは、その背景に深く制度の中に組み込まれた人種差別の問題がある。黒人のマルクス主義者の中では、人種資本主義という概念が広く使われている。人種差別とは、資本主義の中に制度的に深く組み込まれているという議論がされている。

 三つの危機の根源は、現在の「システム」にある。では、そのオルタナティブは何か?について問題提起していきたい。

1.気候変動から気候危機・気候破局へ

 世界中で「異常気象」が「日常化」している。例えば、モスクワの2020年1月の平均気温は約0度(観測史上最高)で平年より9.3度高く、これまでの最高記録を1.5度上回った。1月の積雪量は7センチ(平年32センチ)だった。

 南極半島のアルゼンチン基地では史上最高温度18.3℃を記録し、過去50年で約3℃上昇した。南極半島西岸にある氷河は過去50年で87%失われた。産業革命以降、すでに約1度の気温上昇があるが、南極圏・北極圏の気温上昇が激しい。

 シベリアのサハ共和国ベルホヤンスクで、6月30日に38℃を記録している。永久凍土が溶けていくと、その中に閉じ込められた大量のメタン、二酸化炭素が一挙に放出される。ますます地球温暖化に拍車がかかる。

 さらに永久凍土の中に、例えば、マンモスの死骸とか、動物の死骸とかが閉じ込められている。それが溶けることによって、その中で生き残っているウイルスが出てくる。シベリアで2016年、永久凍土の中にあった動物の死骸から出てきた炭疽菌で死亡者が出た。未知の、一万年前のウイルスがさらに出てくるかもしれない。

 こうした異常気象では、もはや「異常」であることが当たり前になり、新たな「普通」など見つけるべくもなくなっていて、過去のデータに基づく気候予測は成立しなくなっている。日本でも地球温暖化の影響は現実のものとなっている。「100年に1度」の異常気象が日常化している。今年夏の「猛暑」では、8月の平均気温は平年比で、東日本で2.1℃、西日本で1.7℃高く、過去最高だ。岡山県高梁市は、24日連続で35℃以上を記録している。浜松市は、41.1℃の最高気温だった。だから人々の間では、気候温暖化という知見は共有化されているのではないか。

 集中的・局地的豪雨、巨大台風は、日本近海の海水温上昇による水蒸気量増加が原因で、台風が日本近くで発生し、日本を直撃するようになっている。2018年9月4日の台風で関西国際空港は水没した。

 オーストラリア森林大火災は、ニューサウスウェールズ州で240日以上森林火災が続き、540万haが焼失(例年の18倍)した。結果として、2月6日から豪雨によって鎮火した。極端から極端にふれるのが異常気象の特徴だと言える。

 森林火災が起こる「主犯」は地球温暖化にある。2019年のオーストラリアの平均気温は観測史上最高で、平年より1.52℃上回った。年平均降雨量は平年より4割減っていた。つまり、地球温暖化により乾燥地域が拡大している。

 現在のカリフォルニアの火事は、81万㏊にまで広がっている。東京都の3.7倍だ。その原因には、ドライライトニング現象がある。雨が降っていないのに、雷が鳴る。晴れているところに、いきなり雷が落ちてくるわけだ。カリフォルニアだけで1200箇所にドライライトニングによる雷が落ち、火災が一気に広がった。ロサンゼルスでは、9月6日、49.4℃を記録している。

 オーストラリアの場合は、昨年から年末の間に「インド洋ダイボールモード現象」の影響があると言われている。インド洋の西側海面の温度上昇によってアフリカ東部は豪雨となり、東側海面の温度低下でインドネシア、オーストラリアで少雨、乾燥となった。ただ、地球温暖化で温度上昇や低下の度合いが大きくなっている。このダイボールモード現象によって、オーストラリアでは森林火災、アフリカではサバクトビバッタが大量発生した。アフリカ東部の豪雨によって繁殖に適した環境になった。

いまや気候変動ではなく、気候危機・気候破局の段階に入っている。日本政府の「環境白書」2020年度版でも気候危機とはじめて表現された。このような気候危機・気候破局は、ある段階を超えると、気候システムが不可逆的に暴走し、地球温暖化に歯止めがかからなくなると多くの科学者が指摘している。その限界点には私たちが考えているよりもずっと早く到達するかもしれない。ミシェル・レヴィーも『エコロジー社会主義』でその点を強調している。

2.温暖化否定論者は何を言っているのか?

 ボルソナロ・ブラジル大統領は、パリ協定からの離脱を示唆し、先住民を追い出して、アマゾン開発を促進している。三人の息子は「パリ協定は国際的な陰謀」「温暖化はウソ」「気候変動は左派のアジェンダ」と主張している。

 トランプ米大統領は、「地球温暖化という概念は、もともとアメリカ製造業の
競争力をそぐために中国によって中国のために作り出されたものだ」(2012年)と言っていた。

 ただ注意しなければならないのは、ボルソナロやトランプの温暖化否定論とコロナ・パンデミックでの立場が共通しているとこだ。温暖化否定は、こういう人達だけではなく、世界的に日本でも、かつて一部のエコロジスト、反原発を掲げた人達の中でそういう論議が行われていた。「地球温暖化は原発推進のためのデマ、推進するための陰謀だ」という人がいた。

 ミシェル・レヴィーは、エコロジー社会主義』の序章で「アメリカ航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙研究所前所長のジェイムズ・ハンセン」に触れている。この人は気候変動の専門家で警鐘を鳴らしている人だが、熱心な原発推進論者でもある。気候変動、地球温暖化を防ぐためには、原発を推進しなければいけないと主張している。こういう人がいることが、温暖化デマ説につながっているのかもしれない。

3.気候危機と地球温暖化

 なぜ温暖化が起こるのか。地球のエネルギー収支は一致している。入ってくるエネルギーと出ていくエネルギーはイコールになっている。イコールでなかったら地球は、際限なく暑くなってしまう。温室効果ガスは、赤外線を吸収し再び放出する性質を持つ。地球の外に向かう赤外線の多くが、温室効果ガスに吸収され(熱として大気に蓄積)、放出されて地球の表面に戻り、地表付近の大気を暖めることによって地球温暖化となる。エネルギーが地球の表面にとどまることによって温暖化が促進される。

 世界気象機関は、現在の状況を「氷河時代」だとしている。南極、グリーンランド、ヒマラヤなどに氷河がある。氷河時代は氷期と間氷期が繰り返される。258万年前に始まった氷河時代のCO2の濃度は、180~280PPMで推移している。

 しかし、現在のCO2の濃度は、過去数十万年にわたる自然変動の域を超えている。だから温室効果ガスによって温暖化が進んでいることが科学的に立証されている。2015年から2016年のCO2濃度の増加は、3.3PPMでこれまでの最高だ。明らかに人為的な温室効果ガスの排出が原因だ。

 温室効果ガスはどこから排出されているのか。温室効果ガスの76%が二酸化炭素(CO2)で、65%が化石燃料に由来している(CO2換算で)。

 国連によればCO2排出量の国別順位(2016年)では、一位が中国、二位
がアメリカ、三位インド、四位ロシア、五位日本となっている。しかし、一人当たりの排出量はアメリカが突出して多い。アフリカ諸国は、総排出量でも、一人当たり排出量でも、非常に低い数字となっている。

 ドイツのCOP23対抗アクションのフォーラムに参加して、工業的農業から排出される温室効果ガスが多いことを知り、大変驚いた。食肉・乳製品製造のトップ20社が排出する温室効果ガスの量は、ドイツが排出する量を上回っている。2016年のデータでは、温室効果ガスの全排出量の14%が食肉・乳製品製造によって占められている。その中には、加工・製造・輸送などで発生するものも含まれている。今後も今のような食生活を続けるならば、いくら他でCO2を削減しても、大きな排出が残ってしまう。

4.パンデミックが映し出す気候危機の本質

 新型コロナウイルス流行でCO2排出が激減したと言われている。国際エネルギー機関の予測では、今年の世界のCO2排出量は前年比8%(約26億トン)減少(リーマン・ショック後の09年の約6倍の削減)とされている。航空輸送の中断、工場生産ストップ、発電量の減少などにより、化石燃料の使用が減少した。逆に言うと、飛行機を飛ばさなくても、クルーズ船を動かさなくても生きていけるということだ。不必要な生産がどれだけ多かったかを現わすものだ。

ボルソナロとトランプの共通した対応

 パンデミックに対してボルソナロはいまだに「われわれは生き続けなければならない。雇用を守らねばならない。普段通りに戻らなければならない」「(感染が)危険なのは60代以上。なぜ学校を閉めなければならないのか」「軽い風邪」(3月24日)、「他のウイルスの方がはるかにたくさんの死者をもたらしたのに、今回のような騒動は起きなかった」「何人かの知事や市長が行っていることは犯罪だ。ブラジルを壊している」(3月25日)などと述べている。

 トランプは当初は「フェイクニュース」「民主党によるデマ」だと言っていた。さらに「コロナウイルスは消滅しつつある。ある日、ミラクルのように消えていく」(2月28日)、「私はワクチンについても、検査と同様に感じている。新型コロナは、ワクチンがなくても消滅する。そして、一定の期間が過ぎたら、もう見ることは無いと願っている」(5月8日)などと言っていた。

 彼らは地球温暖化を否定し、パンデミックに対しても共通した態度をとった。深刻なエコロジー危機であるにもかかわらず、全く関心がなく、危機感がない。生態系を壊しても経済、金儲けを優先する態度だ。つまり、現在のコロナ危機・気候危機・新自由主義的グローバリゼーション危機の社会的危機は、相互に絡み合う有機的関係を持って進んでいることを示している。

コロナウイルスとは

 コロナウイルスは、本来の宿主であるオオコウモリや齧歯(げっし)類から「人畜共通感染症」として漏出した。エボラ出血熱、エイズ、SARS、MERS、そして新型コロナウイルスなど、1960年以降に出現した新たな病気の3/4は動物由来感染症だ。いかに動物環境に対して人間が介入し、環境を破壊したことの現れだ。

 なぜ漏出したのか。森林伐採、工業的農業の拡大、集約農業・監禁的動物飼育、鉱山開発・インフラ開発による自然破壊、野生種の利用(ペット・食用など)などのまさに生態系破壊によって、野生生物から人間への病気の漏出をもたらした。

 一方で、新自由主義的グローバリゼーションの中で爆発的な旅行の拡大、多国
間貿易、農村部破壊による都市への人口集中が、感染の世界的拡大(パンデミック)の絶好の条件となった。

 パンデミックによる被害や影響は、地域・人種・階級・ジェンダー・社会的状況などによって著しく偏在している。それは気候危機の影響と同様である。例えば、ブラジルで最初にコロナウィルスを持ち込んだのは、ヨーロッパなどに旅行に行っていた金持ちの人達だった。さらに彼らの家で働いていた人が感染し、スラムへと広がっていった。金持ちは、医療システムが崩壊していても、高いカネを払って私立病院で治療ができるので回復していった。または、田舎の別荘に移って感染しなかった。だが、社会的に脆弱な立場にある人々に感染が集中している。

 アメリカでは、黒人や中南米からの移住者、エッセンシャルワーク(病院・介護施設、物流・倉庫、公共交通、食肉加工など)の労働者が大きな被害を受けた。ヨーロッパでも老人介護施設での死亡者が多数だった。パンデミックの被害者は、ある特定の人達に集中的に影響を与えた。

 気候危機の場合はどうか。温室効果ガス排出にそれほど責任を持たない途上国の社会的に脆弱な人々に集中的に及んでいる。例えば、島嶼国・低地帯の水没・海水の浸透、砂漠化による干ばつ・食料不足・水不足、移民・難民の激増、先住民の居住地域の破壊などが拡大している。

 つまり、パンデミックや気候破局などのエコロジー危機の被害者と新自由主義的グローバリゼーションの被害者は重なっていることだ。

5.システムを変えよう!気候を変えるのではなく!

 パリ協定で決まった各国の温室効果ガス削減目標が全部達成されても、2.7℃~3.7℃の気温上昇を招く。日本は、この削減目標すら達成できそうにない国の一つだ。G20の中では他にオーストラリア、ブラジル、カナダ、韓国、南アフリカ、アメリカ合衆国もそうだ。

 日本政府は、脱石炭・脱原発に極めて消極的だ。最近になってようやく、旧式石炭火力発電所の休廃止を促す方針を表明したが、脱石炭ではなく、高効率の石炭火力発電所への転換をはかることがねらいだ。

昨年のCOP25は会議としては失敗だったが、若者たちを中心に気候アクションが盛り上がった。気候アクションで若者たちが訴えたメッセージは、「① 1.5℃目標に沿った温室効果ガス排出削減目標の更新・強化を打ち出すこと ② 2030年より早期段階での脱石炭の宣言 ③ 自然エネルギー100%目標の策定 ④ 気候変動の影響に脆弱な国・地域に住む人々(一次産業従事者・女性・先住民等)の人権を守ること」である。

 2019年には、Friday for Future などが呼びかけた気候ストやアクションが世界的に広がった(昨年3/15 140万人、9/20 400万人、9/27 200万人、11/29 200万人)。日本でも、若者を中心に気候マーチが取り組まれた。

 グレタ・トゥーンベリさんらは、今年7月16日にEU首脳・各国首脳への公開書簡を出した。

 「われわれがより少ない排出への信頼できる道筋の上にいる、さらに気候災厄を回避するために求められる行動は現在のシステム内で求めることができる-さらに言うならば、われわれが危機を危機として扱うことなしに、危機を解決することができる-と長期にわたって言い張れば言い張るほど、貴重な時間がますます失われてしまうだろう」。

 つまり、今のシステム内では気候破局を回避することは難しいということだ。具体的な要求としては以下のことを掲げている。

*ただちに、全面的に、化石燃料の探査・採掘に対する投資の中止、化石燃料への補助金の終了、化石燃料からの投資を完全撤退。

*消費指数や国際航空・海運を含む(温室効果ガス)排出全体を数値目標に含め
ること。

*拘束力のある毎年のカーボン・バジェットを確立すること。

*民主主義を保護・防衛すること。

*労働者ともっとも脆弱な人々を守る環境政策を立案し、あらゆる種類の不平等-経済・人種・ジェンダー-を減らすこと。

*気候緊急事態・エコロジー緊急事態を緊急事態として扱うこと。

 これはエコロジー社会主義と現在の運動をつなぐ過渡的要求とも言える。

 このように気候危機と社会的経済的政治的危機の問題を結びつけてとらえ、システムとつながっていることが意識しはじめられている。

6.エコロジー社会主義 気候破局へのラディカルな挑戦

 地球温暖化を議論する際に、気温上昇をカウントする起点は産業革命だ。つまり、資本主義生産システムが成立した時期から起算している。このことは、エコロジー危機の要因の一つである地球温暖化は、資本主義生産システムとともに進行してきたことの表現になっている。

 ところが気候変動に理解をしていると言われる資本家は、人間の存在とその活動(人口の爆発、際限ない消費の欲望、エコロジーに配慮しない企業の存在など)が地球温暖化の原因だと言う。エコロジストの一部でも同じような考えをしている人たちがいる。レヴィーの本の中でも出てくる。

 人間の存在が問題だと考えると、解決策は「人間の倫理的問題」、あるいはグリーン資本主義ということになってしまう。「車に乗らないようにしよう」「エアコンを使わないようにしよう」ということなるのか。また、グリーン資本主義は、できるだけCO2を出さない資本主義、技術革新によってCO2を貯蔵・管理する資本主義を目指すということだ。

 私たちは、こういう立場に立たない。資本主義生産システムそのものが、エコロジー危機の根源だ。さらに新自由主義グローバリゼーションがそれを加速させているという立場だ。

 そのうえでとるべきオルタナティブは何か? 資本主義生産システムそのもののオルタナティブとしてのエコロジー社会主義だ。だが社会主義は時代遅れだという意見がある。レヴィーは、それは違うと言っている。社会主義を復権するためには、エコロジー的な視点を取り入れることが重要だと言っている。

 ミシェル・レヴィーは、『なぜエコ社会主義なのか? 赤と緑の未来のために』(2018)で次のように言っている。なお、この論文は、「エコロジー社会主義」の要約的なものとなっている。

 「現代の資本主義文明は危機に瀕している。資本の無制限な蓄積、あらゆるものの商品化、労働と自然の無慈悲な搾取、そしてそれに伴う野蛮な競争は、持続可能な未来の基盤を損ない、それによって人類の生存そのものを危険にさらしている。われわれが直面している深くシステム的な脅威は、深くシステム的な変化、すなわち「大転換」を要求している。」

 「エコロジーの基本的な考え方とマルクス主義の経済学批判を統合することでエコ社会主義は、持続不可能な現状に対する根本的なオルタナティブを提供する。それは、市場の成長と量的拡大(マルクスが示すように、それは破壊的進歩である)に基づく資本主義的な「進歩」の定義を拒否して、社会的ニーズ、個人の福利、エコロジー的均衡のような非貨幣的基準に基づいて確立された政策を提唱する。エコ社会主義は、資本主義システムに挑戦しない主流の「市場型エコロジー」と、自然の限界を無視した「生産力主義的社会主義」の両方を批判する。」

 つまり、個人の福利、とりわけ労働時間の短縮が必要だと強調している。自由時間を増やすことだ。

 その中で「エコ社会主義の根幹」として「民主的でエコロジー的な計画作成」が重要であると提起している。つまり、生産手段を資本家から奪い取って、共有化するだけでは不十分だ。それはソ連型社会主義が陥った誤りである。ソ連型社会主義に欠けていたのは、「民主的でエコロジー的な計画作成」だと言っている。

 具体的には、「どのような生産分野を優遇するのか、どのように教育、医療、文化に資源を投資するのか、技術革新をどのような方向に向けていくのか、を民主主義的に決定していくこと。重要なのは、地方、広域、国家、大陸、国際的なあらゆるレベルでの民主的管理だ」。

 また、「資本主義の「破壊的進歩」からエコ社会主義への大転換は、・・・社会、文化、考え方の永続的な革命的変革の過程でもある。この転換を実現することは、新しい生産様式と平等主義的で民主的な社会につながるだけでなく、お金の支配を超えて、広告によって人為的に生み出された消費習慣を超えて、無駄で環境に有害な商品の無制限の生産を超えて、オルタナティブな生活様式、新しいエコ社会主義的文明にもつながる。」と主張している。

 生産方式の所有から変革だけではなく、その過程全体を通して人間の考え方、
生き方を変えていかなければならないということである。エコロジー社会主義は、そういうものを含むものでなければならないということだ。

 例えば、ラテンアメリカの先住民が「よく生きる」という概念を使っている。エクアドル、ボリビアでは憲法の中でも明記されている。自然と共生し、よく生きるという考え方がある。レヴィーは、このことを評価している。「所有(having)」(何をどれくらい持つか)よりも「実存(being)」(どういう生き方をするか)を優先するということだ。

 最後にレヴィーは言う。「エコ社会主義はユートピア(「どこにもない何か」の意味)であるが、現実の社会を根本的に変革するにはユートピアを夢想すること抜きにはありえないのではないか」。

 ヴァルター・ベンヤミンの「マルクスは、革命は世界史の機関車だと言った。しかしおそらく、事態はそれとは大きく異なっている。革命は、列車旅行をしている人類が非常ブレーキをかける行動なのかもしれない」を引用して、「革命とは、列車が奈落の底に落ちる前に人類が手を伸ばす非常ブレーキである」と提起している。

 一方で、エコロジー危機に対する具体的闘い、つまり石炭火力をなくすこと、原発をなくすこと、あるいは地域で地産地消の取り組みを進めていくことなど、具体的な課題がたくさんある。そういう課題に積極的に参加し、一つ一つ実現していくことも大事だ。

 私たちは、ユートピアとしてエコロジー社会主義と現在のエコロジー的危機の課題を、どのようにつなぐのか。どういう要求を掲げて、つないでいくのか。要求のもとにどれだけ多数の支持を集めていくのか。これらが私たちの具体的に問われている課題だ。ただし時間がそれほど残されているわけではない。

終わり

青年戦線第196号(2020.9.14)ができました。

配信●青年戦線196表紙1・表紙4青年戦線第196号(2020.9.14)ができました。

■購読申し込み先

400円

編集発行

日本共産青年同盟「青年戦線」編集委員会
東京都渋谷区初台1-50-4-103 新時代社気付
電話 03-3372-9401
FAX 03-3372-9402

■目次

●日本共産青年同盟(JCY)首都圏会議アピール

●特集—FIビューロー声明
新型コロナウィルスのパンデミックに抗して

★やつらの利益を守るのではなく われわれの生命を守ろう!(20.3.17)

★いますぐエコ社会主義への移行を! 人間の共通の尊厳を守るとき(20.4.16)

★歴史的大転換宿す世界(20.6.8)

●石井紀子さんと共に 6.28三里塚・東峰現地行動

●8.15反「靖国」デモに150人

●香港の人々に自由と権利を

香港デモにおける非暴力派と直接行動派
              衛港之戰2019

●アジア連帯講座:公開講座

イギリスは今 講師:浅見和彦さん

●読書案内/マスコミ・セクハラ白書

読書案内/知らないうちにみられている これ一冊でわかる監視社会


【アジア連帯講座10.16公開講座】米大統領選 左翼の諸動向を探る—アメリカ ブラック・ライブズ・マター

アジア連帯講座:10.16公開講座
米大統領選 左翼の諸動向を探る—アメリカ ブラック・ライブズ・マター

講師:喜多幡佳秀さん(アタック関西グループ)

日時:10月16日(金)/午後6時30分

会場:東京・全水道会館4階小会議室(http://www.mizujoho.com/) (JR水道橋駅下車)

資料代:500円
主催:アジア連帯講座 東京都渋谷区初台1-50-4-103 
新時代社気付 TEL:03-
3372-9401 FAX:03-3372-9402
ブログ「虹とモンスーン」 http://monsoon.doorblog.jp/

file-20200615-65952-pm65vu 世界的なコロナ・パンデミックと連動して、米国においてもコロナウイルス感染が拡大し、深刻な事態に陥っています(8月11日の死者数は16万6027人)。

 トランプ政権は、当初、コロナ感染による犠牲は限定的であると過小評価し、ただでさえ医療制度が脆弱であるにもかかわらず、感染拡大を実質的に放置してしまいました。感染の危険が高い必須労働(エッセンシャルワーク)は、マスク・保護服の不足、不十分な換気設備状態下で多くの労働者(大半は黒人と中南米などからの移住者)が犠牲になっています。つまり、トランプのコロナ対策は場当たり的なため、ロックダウンによる経済活動の停止から後退へと流れ、大失業(4月、2000万人超)と貧困拡大、社会不安を拡大させたのでした。

 四月中旬、「アメリカ愛国者集会」(ミシガン州の州都ランシング)、「自由のためのミシガン連合」などがロックダウン解除を求める集会、武装デモを行い、米国各州で波及していきました。トランプは、大統領選を優勢にしていくために各州の民主党知事をターゲットにしてロックダウン解除を求める集会・武装デモへの支持、規制緩和を表明していくのでした。

 5月25日、ミネアポリスで警察官によるジョージ・フロイドさんの殺害事件が発生します。この事件を契機に、「ブラック・ライブズ・マター」(黒人の命を守る運動)が反トランプ・反警察・反レイシズムを柱に全国的に広がっていきました。その現れとしてミネアポリス市議会の反警察・予算打ち切り審議、シアトルの「キャピトル・ヒル自治区」宣言の攻防(6・8/1カ月間、警察署を閉鎖させ、市民の自治によって運営)、白人優位主義者や奴隷主の肖像や記念碑撤去、建物や通りの名前を変更する運動へと発展しました。

 トランプは、全国的な「ブラック・ライブズ・マター」、反トランプ・反警察・反レイシズムに対して反国家的な行動として連邦治安要員の派遣も含めた暴力弾圧を押し進めています。

 このようなかで11月大統領選挙に向けて共和・民主両党のキャンペーンが繰り広げられています。トランプは米国第一主義、反中国・反移民を掲げ共和党、極右・保守勢力を巻き込んでいます。民主党は、党内右派・中道派共闘によってバイデン元副大統領が大統領候補としてコロナ禍のなかでオンラインキャンペーンを展開しています。政策は、対中国など強硬路線、製造業支援と雇用増、IT企業などや富裕層への増税、気候変動パリ協定復帰などです。

 11月大統領選挙に関する各種世論調査では民主党のバイデン候補の優位が報じられています。トランプは、劣勢ばん回に向けてコロナウイルス対策による郵便投票に対して「大統領選で郵便投票が広範に導入されれば、歴史上、最も不正確で詐欺的な選挙になるだろう」「選挙で不正が行われれば辞めない」と言い出しています。

 このような米国情勢をいかに分析し、次の局面を見いだすのか。

 この間、喜多幡さんは、アタック関西の取り組みなどを通して、米国の労働者階級と左派の方向性を問題提起しています。その柱は、MeToo、ブラック・ライブズ・マターなどの新たな運動、民主党内サンダース議員支持勢力と左派州議員などと連携しトランプの再選阻止の陣地をひろげていくことであり、この闘いは同時に資本主義の危機に対する対案を掲げる政治勢力の登場を戦略的に準備していくとこであると強調しています。

 講座では最新の米左派情報の紹介なども含めて共に分析、評価を含めていきたいと思います。ぜひご参加ください。

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報告:8.22 考えよう!防災訓練の問題性・危険性

配信:防災 8月22日、東京都総合防災訓練に反対する実行委員会は、滝野川西区民センターで11月22日の「北区・東京都防災総合訓練」強行に反対していく取り組みの一環として「考えよう!防災訓練の問題性・危険性」をテーマに集会を行った。

 実行委員会は、11月22日の北区中央公園野球場などで行われる救出救助訓練と称する治安訓練に反対し、その柱を以下のように確認している。

 ①防災訓練は、「武力攻撃災害」の観点から「国民保護訓練」として位置づける。発動根拠として「緊急事態」を権力者が都合良く判断し、「大規模災害」だけではなく「戦争・内乱」「大規模テロ」「騒擾」(大規模デモ、ストライキなど)にわたって対処していくことにある。つまり、緊急事態条項追加改憲の先取りであり、緊急事態対処訓練である。

 ②防災訓練には自衛隊が参加し、その任務として宣撫工作、リクルート活動の場として展開する。そもそも「災害派遣」も「治安維持活動」の一種として位置づけており、テロリスト掃討などの戦闘、デモ隊を弾圧する「治安維持」が本質任務としてある。

 大規模災害時に緊急事態を理由として軍事組織に秩序維持の活動を担わせることは、関東大震災時の戒厳令下における警察・軍隊・自警団が一体となった朝鮮人虐殺によってその危険性が示されている。再生を許してはならない。

 ③「新型コロナ災害」を契機に警察による威嚇などの「自粛」強制に呼応し
「自粛警察」が横行し、ヘイトグループの活動も活発化している。加害の歴史を否認し、米軍・自衛隊との連携を前提とした緊急事態条項追加改憲を先取りした国民保護に通じる防災訓練に住民や児童・生徒を動員することは人権の否定につながる。

 そのうえで防災訓練は、「新型コロナ災害」を踏まえ、来年開催予定の「東京オリンピック・パラリンピック2020」戒厳体制を見据え、緊急事態対処訓練として行おうとしている。実行委は、このような動向・性格全体と対峙し、支配者たちの野望を打ち砕いていくための反撃として取り組んでいく。ともにスクラムを広げていこう。

 実行委から開催あいさつが行われ、「差別・排外主義の動きが加速され、右翼らの関東大震災時の朝鮮人大虐殺は、デマだというキャンペーンを強めてきた。小池都知事も関東大震災時に虐殺された朝鮮人の追悼式への挨拶状を出すのをやめ、規制を強めている。都知事選での小池の圧勝、日本第一党の躍進、維新の暗躍など、徐々に右翼の浸透が広がっている。この流れの中で防災訓練の危険性、私たちの取り組みを探っていきたい」と発言した。

 愼蒼宇(シンチャンウ)さんは、「関東大震災時の朝鮮人虐殺 官民一体のヘイトの歴史的源流をたどる」というテーマで講演した。 「石原都知事(2000年)の『三国人』発言、『新型コロナ』も含めて緊急事態の中の差別主義の表出、暴力の連鎖が広がっている。自衛隊の出動は差別主義の表出、暴力の連鎖とは関係ないと見られているが、歴史的にみれば関東大震災時、日本軍隊は戒厳令下で率先して差別・排外主義の先頭に立った。事後処理の中で責任を自警団に押し付けた。官民一体による朝鮮人虐殺には歴史的背景がある。震災時、官民が一時的に興奮して虐殺を行ったのではなく、そこに至るまでの道のりがある」。

 「戦争というと『15年戦争』の枠組みでしか連続的にとらえてこなかった。日
本近代史の戦争の不在を問いただしていかなければならない。朝鮮総督府・軍・警察は、常に朝鮮人を騒擾予備軍として予防的支配を実施していた。民族運動の弾圧をした。植民地支配とは、戦時と平時が常に隣り合わせだった。日本の植民地支配の責任についての議論は低調だ。植民地犯罪と向き合っていくこと、戦後七五年たった現在も問われている。植民地犯罪の根幹にたくさんの軍事暴力があり、その中に関東大震災時の朝鮮人虐殺がある」。

 「朝鮮半島は、現在も南北に分断されたまま朝鮮戦争も終結していない。南北
分断を背景に日本は、アメリカの冷戦政策に乗る形で植民地責任の問題を根本的に解決しないまま、被害者と歴史認識の克服をおきざりにしてきた。現在の対朝鮮人ヘイトが100年前の官民の朝鮮人に対するものとほぼ同様の蔑視と偏見、憎悪が時代を越えて表出している。植民地主義は、いまだに官民にへばりついている。日本の罪と加害責任を明確にし、近現代の日朝関係に向き合っていくしかない。
だが、はてしなく遠く感じている」。

 問題提起が三人から行われた。

 片岡万里子さん(医療労働研究会)は、「新型コロナ災害下の命の選別とトリアージ」をテーマに「天皇制国家における医療の本質は、戦後も続く優性保護法体制のもとで、国家にとって有用か否かで選別し、排除することであり続けてきた。『コロナ』以前から医療は破綻状態であり、現場での日常的な選別・切り捨てで顕在化しないできた。すべての人に差別なく必要な検査・医療を無料化すべきだ。『臨時』ではなく、大幅増床、医療労働者の大幅増員が必要だ」と述べた。

 伏見忠さん(都教委包囲ネット)は、「生徒動員・一斉休校・そして今」を取り上げ、「学校は防災教育と称して動員に応じてしまう。実態は、防災ショーに取り込まれているのが実態だ。生徒管理を強化して宿泊防災訓練というプログラムまである。コロナ下でこの訓練もなくなった。北区の防災訓練に対して都立高校の動員は、今年にかぎってない。ただ来年以降、どうなるかわからない。この間、高校生を地域に動員していく傾向は強まっている。つまり、災害時に高校生を使うことにある。自衛隊も宿泊訓練の時、介入してきてリクルート活動をやっている。ただ防災訓練に異議ありと言う教員が少なくなっている。警戒は続けていかなければならない」と報告した。

 池田五律さん(有事立法・治安弾圧を許すな!北部集会実行委員会)は、「自衛隊の緊急事態と防災訓練」をテーマから①緊急事態対処と軍隊 ②戦後から1980年までの緊急事態をめぐる動き&災害派遣の法的根拠 ③ビッグレスキューへの道 ④東京都総合防災訓練と自衛隊統合防災訓練(2007) ⑤2019年の動向 ⑥新型コロナ災害下の動き―について報告した。

 最後に主催者から関東大震災朝鮮人虐殺追悼式をめぐる動き、東京都防災訓練の動向が報告され、参加を呼びかられた。

(Y)
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